映画館での失態
ガンモは朝早く起きて支度を整え、鳥取まで出張に出掛けて行った。出張は二泊だけの予定なので、私は映画を鑑賞しながらガンモの帰りを待っている。ガンモの出張がきっかけというだけでなく、今月は特に映画鑑賞に火がついて、映画館でいつもよりもたくさんの映画を観ている。ちなみに、レビューを書いていない映画もたくさんあるのだが、今月鑑賞した映画は以下の通りである。
・ジャンパー
・アメリカン・ギャングスター
・明日への遺言
・ライラの冒険 黄金の羅針盤
・ダージリン急行
・プライスレス 素敵な恋の見つけ方
・人のセックスを笑うな
・Sweet Rain 死神の精度
・アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
・ミスター・ロンリー
・レンブラントの夜警
・非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎
・マイ・ブルーベリー・ナイツ
これだけ映画館に足を運んでいると、映画館でちょっとした失態もする。今日はそんな話を書いてみたいと思う。
私は、ひざ掛けを貸し出してくれる映画館が好きだ。有難いことに、私が良く足を運んでいる映画館のうち、ほとんどの映画館がひざ掛けを貸し出してくれる。しかし、ひざ掛けの貸し出しは非常に有難いことには違いないのだが、暖かくなるとついついうとうとしてしまうこともある。特に、事実が淡々と伝えられるだけのドキュメンタリー映画を鑑賞するときに暖かいひざ掛けをお供にすると、心地良い眠気に誘われる。
あるドキュメンタリー映画を観ていたとき、まぶたが下りて来たので、「こら、まぶたよ。ちゃんと開いておくれよ!」とまぶたを叱咤しながら鑑賞を続けていたのだが、とうとう眠気に負けてしまい、終了まであともう少しというところで寝入ってしまった。
気が付くと、映画館のスタッフの方が私の目の前に立っていて、私に何か語りかけていた。そこはミニシアター系の映画館で、その回の上映では、私の他にもう一人の観客しかいなかった。これから入れ替えを行おうにも、私がなかなか席を立とうとしないので、スタッフの方がしびれを切らして私のところにやって来たのである。私ははっと起き上がって出て行こうとした。
そのとき、スタッフの方が、私が手に持っているひざ掛けを引き取ってくださろうとしたのだが、更に恥ずかしいことに、私はそのスクリーンで次に上映される作品のチケットも購入していたのだ。ついさっきまで気持ち良く眠っていた私は、スタッフの方に、
「ひざ掛け、こちらでお預かりします」
とわざわざ気遣っていただいたというのに、
「いえ、次の回の上映も鑑賞しますので」
などと偉そうなことを言って、入れ替え制に従って、いったんスクリーンを出たのである。恥ずかしいと言ったらない。しかし、次の回の上映はドキュメンタリー映画ではなかったので、映画の世界にグイグイ引き込まれた。上映が終わったあと、私は自分が眠らなかったことをスタッフに主張するかのように、胸を張ってスクリーンをあとにしたのだった。
ところが、別の日に同じ映画館でまたしても失態をやらかしてしまった。布ケースに入れた携帯電話を首からぶら下げて映画を鑑賞していたのだが、鑑賞し終わってトイレに立ったときに、携帯電話の布ケースが空っぽであることに気が付いてしまった。布ケースに付いていたマジックテープが緩くなり、おそらく上映中に携帯電話が布ケースから滑り落ちてしまったのだ。私は青ざめた。それこそ、トイレで用を足しているというのに、パンツもろくに引き上げないまま、慌ててトイレから出て来てしまった。ズボンの中で下着やら腹巻やらがぐちゃぐちゃになって気持ちが悪かったが、そんなことはおかまいなしだ。
さきほどまで私が映画を鑑賞していたスクリーンは、入れ替えのため、既に次の回の上映待ちの方たちが入場されていたのだが、スタッフの方に事情を話して、携帯電話を探させてもらった。しかし、私の携帯電話は見当たらなかった。スクリーンには緩い傾斜があるため、私の胸元から滑り落ちた携帯電話が、更に前の席まで滑って行ったのではないかと思い、座席の下のほうを覗き込みながら、携帯電話の所在を念入りに確認してみたのだが、やはり見当たらなかった。
私が慌てていると、親切なスタッフが声を掛けてくださり、次の回の上映待ちをしている方たちにご協力をお願いしてくださった。しかし、それでも私の携帯電話は見付からなかった。上映中、確かに胸元にぶら下がっていたので、間違いなくこのスクリーンの中にあるはずなのだ。私がおろおろしていると、観客の一人が、
「携帯電話に掛けてみたらええんちゃう?」
と提案してくださった。スタッフの方がその提案を受け入れてくださり、事務所に入って、私の携帯電話に電話を掛けてくださった。しかし、スタッフの方の話では、呼び出し音は鳴るものの、しばらくすると留守番電話に切り替わってしまったそうだ。上映中は携帯電話をマナーモードに設定していたため、よほど耳を澄まさない限り、聞こえないのである。
ああ、困った。それが十四時過ぎの出来事だったのだが、実は十八時半過ぎにも、同じ映画館で別の映画を鑑賞することにしていたので、それまでに私の携帯電話が見付かれば、保管しておいてくださいとスタッフの方にお願いした。
携帯電話を紛失してしまったとしても、保険代わりにDoCoMoのクレジットカードに加入しているため、紛失時の保障は利くはずだが、使い始めてから携帯電話に登録した個人情報が漏れてしまうことへの懸念と、購入してからまだ一ヶ月ほどしか経っていないのに、早くも携帯電話を失くしてしまったことに対して情けない気持ちでいっぱいだった。購入するとき、DoCoMoの店員さんに、保険に加入しておくことを強く推奨されたのは、こうした事態からら守るためだったのかと回想していた。何故なら、私が購入した携帯電話の店頭価格は五万円を超えていたからだ。同じ携帯電話を自腹でもう一度買い直すとなると、冷や汗ものである。
半ば諦め掛けながら、私は自分のリュックを背負うべく、手に取った。すると、リュックに何かが引っ掛かっているのに気が付いた。それは紛れもなく私の携帯電話だった。こんなところにあったとは!
私は急いでスタッフの方に、携帯電話が見付かったことを伝えた。スタッフの方も安心してくださった。こうして、いろいろな人たちを巻き込みながら、私はいったん映画館を離れ、夕方になると、再び何食わぬ顔で別の映画を鑑賞したのだった。もちろん、携帯電話を紛失したときに対応してくださったスタッフの方がそこに居れば、お詫びを言うつもりだったが、夕方にはそのスタッフがいらっしゃらなかったのである。
居眠りと言い、携帯電話を紛失してお騒がせしてしまったことと言い、恥ずかしい形で映画館のスタッフに私の存在を印象付けてしまった。私はこれを機会に、もっと気を引き締めて携帯電話を取り扱おうと心に決めたのだった。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ひざ掛けの貸し出しは、女性にとってはとても有難いですよね。しかし、暖かくなると気持ち良くなり、ついついうとうとしてしまうこともしばしばです。鑑賞には、ある程度の緊張感も必要なのかもしれません。こうした失態が、大事には至らない加減で起こるというところに意味があるのでしょうね。皆さんも、上映中の居眠りと携帯電話の紛失には十分ご注意くださいませ。(笑)
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