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2007.12.03

カニバイキング(前編)

 日曜日は、「私の職場近くのホテルに宿泊して、カニを満喫しよう!」というプランを決行した。ガンモが購読している旅行会社のメルマガで、私の職場近くのホテルでカニバイキングの宿泊プランが紹介されていたのだ。私たちはしばらく迷ったものの、ガンモの仕事の都合と休みの都合がぴったり重なったので、思い切ってそのプランに乗ってみることにしたのである。

 日曜日だったが、ガンモは私の職場の沿線にある顧客のところで仕事が入っていたため、朝から仕事に出掛けて行った。日曜日に出勤するため、ガンモは翌月曜日に振替休日を取っていた。だから、ホテルに宿泊した翌月曜日は、のんびり過ごせるというわけだ。私はというと、職場に近いホテルに宿泊するため、翌月曜日は、フレックス制度を利用せずに、朝八時半に出勤できることを夢見ていた。翌月曜日はたまたまノーフレックスデーに当たっていたので、社員の人たちは一斉に朝八時半に出勤して来るはずだった。いつもはフレックス制度を大いに活用して重役出勤している私が朝八時半に出勤するとなると、社員の人たちも珍しがってくれるのではないかと思うと、ハリセンボンのように期待で胸が膨らんだ。

 ガンモの仕事が終わる頃、私たちは私の職場の最寄駅周辺で待ち合わせをした。いつも私が通っている駅周辺にガンモがいると思うと、思わずにやけてしまう私だった。我が家から一時間半掛かる場所であるとは言え、ガンモの担当しているいくつかの顧客もこの駅周辺にあるので、ガンモはその駅に降りるのが決して初めてというわけではなかった。それなのに、私はちょっぴり先輩ぶって、ガンモに駅周辺を案内した。

 しばらくショッピングを楽しんだあと、私たちはホテルにチェックインすることにした。いつもは通勤の途中に外から眺めているだけのホテルの中に入るのだ。しかも、部屋を一つ、一晩だけ借りる。このホテルは、私の職場で深夜残業などの事情で帰宅できなかった人たちのために、何部屋かリザーブされているらしい。私の職場にも、実際に利用した人がいる。しかし、私は愛する夫と二人で泊まるのだ。しかも、カニバイキングのプランである。

 私たちは、ホテルの外観の割には地味なフロントでチェックインの手続きを済ませた。私たちのために用意された部屋は十六階のツインルームである。部屋に入ってみると、普段、私たちが旅行に出掛けるときに利用しているホテルよりもずっとおしゃれな雰囲気だった。私たちは、荷物を置いてすぐに、一階にあるカニバイキングの会場となっているレストランへと急いだ。

 レストランの入口で食事券を渡して部屋番号を伝えると、お店の人が私たちをテーブルに案内してくれた。あとはバイキングなので、自由に料理を取って食べていいことになっている。私たちは早速料理を取りに行った。

 さすが、ホテルのバイキングというだけあって、料理の質も高く、温かいものが並べられていた。私たちは、並べられている料理の周りをぐるっと一周した。私は、お腹が空いていたので、カニのことはすっかり忘れてしまっていたのだが、すべての料理を見て回ったガンモがぼそっと言った。
「カニはどこにある?」
「あっ? カニ? そう言えば、ないね」
そうだった。私たちはカニバイキングを食べに来たのだ。それなのに、目の前の温かい料理に目がくらんで、カニのことをすっかり忘れていた。ガンモに言われてようやくカニを食べに来たことを思い出したのだった。

 しかし、確かにガンモの言う通り、カニが山盛りされているようなスペースはどこにもない。もしかすると、私たちがショッピングを楽しんでいるうちに、山盛りのカニがなくなってしまったのだろうか? そう思いながら、注意深く観察してみると、あった、あった。まずはカニ飯。それから、カニすき。そして、カニのフライ。カニのせいろ蒸し。しかし、それだけだった。しかも、カニすきとカニのせいろ蒸しは、ホテルの人に装っていただくことになっている。そうなると、例えバイキングといえども、何度も何度も取りに行くわけにも行くまい。

 カニバイキングと聞いて、私たちは、カニ料理ばかりがバイキングのコースに並べられているのだと思い込んでいた。しかし、カニバイキングというのは、「バイキングの中にカニ料理もある」という程度のものだったのだ。ガンモは、
「あの旅行会社にやられた!」
と言った。そう、あの旅行社とは、夏休みのロンドン行きを検討していたときに、直行便の格安ツアーをうたっていた旅行会社だ。問い合わせをしてみると、「直行便は一ヶ月前にならないと予約が確定しないので、ひとまず乗り継ぎ便で押さえておいて、直行便の予約が始まって、予約が取れた時点で直行便に切り替えるという方法」を提示して来た。しかも、直行便が取れなかったときは、そのまま乗り継ぎ便を利用することになり、その際は、予め提示されている旅行代金よりも割高になるというものだった。何故、乗り継ぎ便に対して、直行便よりも高い金額を支払わなければならないのかと、私たちが怒りを覚えた旅行会社だったのだ。

 ガンモは、
「もう、腹が立った。○○旅行会社禁止!」
と言いながら、やけ食いを始めてしまった。それからのガンモは、とにかくハイペースで食べ続けていた。
「食べ過ぎは良くないよ」
と私が言っても、ガンモは、
「もう、腹が立った。腹が立った」
と言いながら、たらふくカニを食べられなかった怒りをバイキングにぶつけていた。そして、ホテルのバイキングらしいたくさんのケーキやフルーツも十分に満喫して、私たちは部屋に戻った。

 実は、部屋に戻ってから、大変なことが起こったのだ。長くなってしまうので、この続きは後日お届けすることにしよう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ホテルの案内には、「カニ三昧」と書かれていました。冷静になって考えてみると、「カニ三昧」と「カニ食べ放題」は違うのですね。おそらく、「三昧」 < 「放題」なのでしょう。「カニバイキング」という表現は、決して間違いではないと思います。はい、「カニバイキング」という表現から、「カニ食べ放題」を想像してしまった私たちが悪いのです。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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