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2007.05.31

屋根裏部屋

 ロンドンに、想いを馳せている。だからもう少し、ロンドン行きのことを書かせて欲しい。

 ガンモがロンドンで滞在するホテルを決めたのは、ガンモの仕事が休みの水曜日のことだった。土曜日に海外ホテルの予約代行サイトに問い合わせておいたホテルの空室状況が、その日にわかったらしい。しかし、予約代行サイトからの回答は、早くも"No Vacancy"だったそうだ。別のホテルなら空きがあると言われ、少々割高になってしまうが、提示されたホテルに変更し、予約が確定したらしい。

 仕事を終えてガンモに電話を掛けたとき、ガンモからロンドンのホテルの予約が確定したことを聞いた。私は、予定よりも旅行代金がどんどん高くなっていることに腹を立て、
「もう、お仕置きするから」
と言った。どんなお仕置きかと言うと、サービス満点の床屋さんをせずに、ガンモの髪の毛を切らないでおくお仕置きだ。ガンモの髪は以前にカットしてからかなり伸びていたのだが、私は仕事の忙しさにかこつけて、
「そんな高いホテルを予約したから、しばらく髪の毛なんか切ってあげない」
と言ってすねた。そうは言うものの、ガンモが予約したホテルのことがちょっぴり気になり、
「どんなホテルなの?」
と尋ねてみた。するとガンモは、
「ホテル自体はヨーロッパの古いアパートを改造した建物で、部屋は屋根裏部屋みたいなとこだから」
と言った。ガンモは既にホテルのホームページを見て、ホテルの画像を確認していたのだ。
「屋根裏部屋?」
屋根裏部屋と聞いた途端、私の怒りは収まり、急にわくわくし始めた。ホテルの部屋が屋根裏みたいだなんて素敵じゃないだろうか。単純な私はそう思ったのである。
「屋根裏部屋、いいねえ。でも、屋根裏部屋に泊まりたいってフロントの人に頼むのに、何て言えばいいのかな?」
と私が言うと、
「チェックインするときに、ハイジの家みたいな部屋にしてくれって頼めばいいじゃん」
とガンモが言った。
「ハイジの家ねえ、わはははは」
ハイジの家と聞いて、私は干草のある部屋をイメージした。とにかく、屋根裏部屋に泊まれることを想像して、私はすっかり楽しい気分になっていたのである。

 帰りの電車の中でノートパソコンを開いて、ロンドンの屋根裏部屋のホテルを検索してみた。ガンモから口頭でホテルの名前を聞いていたのだが、覚え切れなかったので、ホテルの最寄駅の名前と屋根裏部屋というキーワードで検索した。すると、出て来る出て来る。何、何? あまりいいことが書かれていないではないか。「こんな屋根裏部屋みたいな部屋に○○ポンドも取るなんて!」というような怒りの表現ばかり目立っている。おいおい、大丈夫なのかい? 私は一気に不安になってしまった。

 電話を切る前に、
「念のため、ホテルのURLをメールで送っておいてね」
とガンモに頼んでいたのだが、そのメールが帰宅途中に届いた。私は、急いでそのサイトにアクセスしてみた。私の遅い遅いモバイル環境に、私たちが宿泊するホテルがゆっくりと表示される。そのサイトに掲載されている部屋を見て、あっと驚いた。屋根裏部屋と聞いていたが、ハイジが住んでいるような干草が用意されている部屋ではなかった。白い壁に、傾斜のある窓から光が取り込まれている、とてもおしゃれな部屋だ。おお、これはいい! フロントで「ハイジが住んでいるような部屋を借りたい」などと申し出ても、きっと通じないだろう。

 私はすっかり機嫌を直し、頭の中は屋根裏部屋のことでいっぱいになっていた。きっと私は、この屋根裏部屋の窓から通りを見下ろすことになるのだろう。本当に楽しみだ。

 去年、ハワイに出掛けたときは、ほとんど下調べもできずに旅立ってしまったので、今年は出掛ける前から少しずつロンドンのことを予習している。十七年前に訪れたときは、ヨーロッパ五カ国を回る忙しいツアーだったので、ロンドンは駆け足で通り過ぎてしまった。ほとんど記憶もない。今回はガンモと二人の個人旅行だ。私は、ロンドン行きのために手帳を一冊用意して、行きたいところ、買いたいものなどをどんどん書き込んでいる。旅先で困らないように、英語の学習も少しずつではあるが、進めている。

 楽しみなのは、私の好きなプログレッシブロックのグループに、イギリス出身のバンドが多いことだ。例えば、イエス、キング・クリムゾン、キャメル、ピンク・フロイド、ルネッサンス、ジェネシス、マリリオンなどである。私は、普段から持ち歩いているデジタルオーディオプレイヤーに、イギリス出身の彼らの音楽をたくさんセットしては繰り返し聴いている。イギリスには、ビートルズを始め、世界的に有名なバンドが多い。私は一時的にビートルズを熱心に聴いていたこともあったが、今はプログレッシブロックに落ち着いている。イギリスは、バンドが育つ国なのだろうか。

 ガンモはガンモで、イギリスのガイドブックを熱心に読んでいる。私も負けずにロンドンの調査を進めながら、せっせとノートを埋めて行こう。こうして少しずつ、ロンドン行きの準備を始めている私たちである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ハイジと言えば、以前、掲示板に書き込みをしてくださっていた方が、何かについて自分にはわからないと書いたあと、
「おじいさんもモミの木も教えてくれません」
と書いて来たことがありました。そのコメントを読んだとき、私はものすごくおかしくて、大爆笑しました。おそらく、『アルプスの少女ハイジ』のアニメの歌詞から来ていると思うのですが、このように、ひとひねりしたユーモアはいいですね。私も、何かについてわからないことがあるとき、
「おじいさんもモミの木も教えてくれないので、私にはわかりません」
と言ってみようかしら。と思いながらも、なかなかさりげなく使えないので、こうしてここに書いています。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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