真冬の孵化
今日は鳩の話を書こう。父ちゃんが新しいお嫁さんをもらい、この真冬に卵を産んで温めているという話を少し前にここに書いた。ビッグの妹であるスモールが巣立ってからは、父ちゃんとビッグの対立が一層激しくなった。私は、ビッグが新しいお嫁さんに求愛しているものだとばかり思い込んでいたのだが、どうやら父ちゃんとビッグで権力争いをしているらしい。ガンモの証言によれば、父ちゃんとビッグがしばしば突付きあっていると言うのだ。その突付き合いはとても激しく、ビッグは自分の親である父ちゃんに対し、容赦のない態度を取っているそうだ。
更にビッグは、父ちゃんの新しいお嫁さんのことも追いかけ回して突付いていると言う。ガンモ曰く、
「ビッグから見れば、父ちゃんの新しいお嫁さんは、単なる新参者だから」
なるほど。優先的に餌にありつくために、ビッグは新しいお嫁さんに対して、自分のほうが強いと威嚇していたのである。
あるとき、ビッグがベランダで新しいお嫁さんを追い掛け回して突付き始めたので、新しいお嫁さんがあちこち逃げ回っていたそうだ。しかし、そこで新しいお嫁さんは頭を使った。巣の中で卵を温めていた父ちゃんのところに駆け込み、ビッグにいじめられていることを訴えたと言う。新しいお嫁さんの訴えを聞きつけた父ちゃんが巣から出て来てからは、父ちゃんとビッグの戦いになったとか。その様子をじっと見守っていたガンモは、新しいお嫁さんはなかなか賢いと感心していた。
ビッグが強いように見えていても、実際にここの縄張りを仕切っているのは父ちゃんである。ガンモは、父ちゃんに見つからないように、寝室の窓からそっと他の鳩に餌を与えることがある。父ちゃんとビッグが一緒にいるときに餌を与えると、必ず餌の取り合いで突付き合いになるからだ。しかし、父ちゃんに隠れて餌を与えていることが父ちゃんにばれると、父ちゃんはものすごいスピードで餌のところにやって来るそうだ。
ところで、先日、新しいお嫁さんによって真冬に産み落とされた卵だが、先日、ガンモが台所の奥にあるベランダの様子をうかがっていると、卵の殻が転がっているのが見えたそうだ。どうやら、この真冬に卵が孵ったらしい。しかし、卵の殻が一つしか見当たらなかったので、もう一つの卵は孵らなかったのかと残念に思っていたところ、別の場所に転がっているのを後日発見して安心したそうだ。
ガンモは巣の中を覗き込んだらしいが、雛の姿は確認できたものの、ぴくりとも動かなかったと言う。どうも、寒さのために活発には動けないらしい。そう言えば、雛のピーピーという鳴き声も聞こえて来ない。やはり、彼らにとって、真冬の孵化は、相当厳しいものだったのではないだろうか。私も巣の中を覗き込んでみたが、生まれたばかりの黄色い雛が二羽、ひしめき合っているのが見えた。確かに雛の首は据わっているものの、実に静かな様子である。雛の姿を確認した私は、新しいお嫁さんに、
「でかした!」
と言った。新しいお嫁さんが産んだ卵が孵化したので、これからは、以前の母ちゃんを旧母ちゃんと呼んぶことにして、新しいお嫁さんを母ちゃんと呼ぶことにしよう。
ガンモは、
「まだ羽の柄(がら)はわからないけど、もしも白い鳩が生まれて来るようなら、父ちゃんは騙されてるから」
と言った。ガンモは、新しいお嫁さんが若くて上品なので、父ちゃんが騙されているのではないかと気にかけているようである。新しいお嫁さんは、父ちゃんとほとんど同じ柄(がら)なのだ。だから、父ちゃんの子供なら、父ちゃんと同じような柄の雛が生まれるに決まっているのだ。
出会ってすぐに結婚して、巣作りを始めた父ちゃんと新しいお嫁さん。そして、真冬であるにもかかわらず、卵を産み、その卵が孵化した。私なら、しばらく新婚さんで居たいと思うだろう。鳩は何のために番(つがい)になるのだろう。子孫繁栄に貢献していることは確かだが、やがて子供たちが一人立ちできるように、早いうちからとことん突き放してしまう。そして、子供を育てていないときは、夫婦でいつも一緒にいる仲良しの鳥である。もしかすると、人間が鳩から学ぶべきところも多いのかもしれない。
鳩は、一羽一羽、性格も違っていて実に面白い。頭を使って、父ちゃんに助けを求めた新しいお嫁さん。攻撃的なビッグ。餌を食べるときに、いつも一歩引いていたスモール。ビッグは強くても、まだ巣立ちをしていないのだから、本当の意味で強いとは言えないだろう。ビッグよ、男なら、立派に巣立ってみせなさい。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 鳩たちとの付き合いも次第に長くなって来ました。最近、忙しさのあまり、自宅で過ごす時間が少ない私は、鳩たちをかまってやることができていないのですが、平日に休みのガンモがいろいろと観察して、私に報告してくれています。母ちゃんから生まれた雛たちが元気に巣立ってくれることを望みます。彼らがもっと活動的になったら、また記事を書くことにしましょう。
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