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2006.04.24

たくたく

 何かの拍子に突然、過ぎ去ってしまった過去の記憶が呼び覚まされることがある。同性のソウルメイトについて思いを巡らせていたとき、ふと思い出したのが、社員として働いていた頃の同僚のことだった。

 彼女のニックネームは「たくたく」と言う。名字に「宅」が付いていたことから、みんなに「たくたく」と呼ばれていた。一方、私は旧姓が越智(おち)だったため、会社では「おちおち」と呼ばれていた。

 その会社は、私が唯一、会社員として働いた職場でもある。そこを退職してからはずっと、会社員にはならず、派遣社員やフリーで働き続けている。その会社では、大学を卒業してから四年間だけお世話になった。楽しい同期に恵まれて、はちゃめちゃな会社生活を送ったものだ。たくたくも、楽しい同期の一人だった。新人の頃、与えられた課題が終わらずに、同期の女性と二人でラブホテルに泊まったことも、今となっては懐かしい想い出である。

 そんな職場でしばらく一緒に働いていたたくたくは、実は私と同じ大学の同じ学部、学科出身だった。私は一浪、たくたくは現役でその大学に入ったので、実年齢は一歳違うのだが、私の通っていた大学にはクラス制度があり、たくたくとはクラスまで一緒だった。学生時代は、同じクラスといえどもほとんど会話をすることはなかったのだが、同じ職場で働くようになってから、同じ大学出身の同期ということもあって、良く話をするようになった。

 不思議なことに、たくたくとは配属先も同じだったのだ。そのため、同じプロジェクトで仕事をしていたこともある。たくたくと二人で夜中まで残業し、笑いながら駅までの道のりを一緒に歩いて帰ったこともしばしばあった。若かったあの頃は、仕事に対する責任もなく、残業がひどく続いた日々でも笑っていられたのだ。いや、もしかすると、忙しくても楽しく仕事ができたのは、たくたくが居てくれたおかげかもしれない。

 会社の先輩たちは、たくたくと私のことを良く間違えた。私がたくたくに間違えられることはなかったのだが、たくたくは何度も何度も私と間違えられたと言う。ある先輩などは、たくたくに、自分の撮影した写真を取り出して、おもむろに説明をし始めたと言う。たくたくは、何が起こっているのかわからずにきょとんとしていたらしいが、実はその先輩と私は、以前、カメラや写真の話題で盛り上がったことがあったのだ。その先輩は、たくたくを私だと勘違いして、たくたくに一生懸命、自分の撮影した写真の説明を始めてしまったらしいのだ。たくたくは良く、
「またおちおちに間違えられたよ」
と笑いながら、間違えられた話を私に報告してくれたものだった。

 私がその会社を退職してからも、同期の人たちとはときどき飲み会を開いていた。その席には、必ずと言っていいほどたくたくが参加していた。やがてたくたくも結婚し、時をほぼ同じくして、ガンモと私も結婚した。ガンモと結婚してからも、たくたくを交えて、前の職場の人たちと飲み会を開いたことがある。実に不思議なことなのだが、ガンモはたくたくと並ぶと、とてもお似合いだった。ガンモもたくたくのことがとても気に入ったらしい。私は、そんな二人を一枚の写真に収めた。二人の並んでいる姿は、とても微笑ましかった。

 私がホームページを立ち上げたことを報告したとき、たくたくはこう言った。
「ホームページは、おちおちにとって、本当にぴったりな作業だよ。こんなぴったりな作業、他にないよ」
たくたくがこう言ってくれたのは、文章を書くことを好きな私が、会社で新聞部なるものを立ち上げたからだ。たくたくは、私の立ち上げた新聞部にも力を貸してくれた。だから、私が会社を辞めるときは、たくたくに新聞部の部長を委ねたのだ。

 しかし、結婚してしばらくすると、たくたくとは次第に疎遠になってしまった。お互いにマメに連絡を取り合うようなタイプではなかったからだろう。それに、二人とも同じ職業でずっと忙しい毎日を送っていた。私は年賀状を書いたり書かなかったりだったが、たくたくは毎年のように年賀状をくれている。そんなたくたくにも子供が生まれ、退職し、今は専業主婦になっている。

 考えてみると、ホームページを立ち上げてからと言うもの、私はネットでの交流に夢中になり、リアルの友達を大切にしていなかったように思える。私はたくたくに、出産のお祝いも贈っていないのだ。

 今回、たくたくのことを記事にしてみて、このような不思議な出会いはとても貴重なものだったのではないかと思い始めている。私は、同性のソウルメイトに出会っていたのに、大切にできていなかったのではないだろうか。今からでも、きっと間に合うはず。しばらく交流が途絶えていたたくたくと、連絡を取ってみようと思う。

※きのうの記事に共感し、応援クリックしてくださった皆さん、本当にありがとうございます。久々にわーわー泣けたことで、少し自分を取り戻せたような気がしています。皆さん、本当にありがとう!

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