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2015.06.18

本『痴人の愛/谷崎潤一郎』

ホットヨガ(四四六回目)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 窓を開けていても暑い夜もありましたが、今夜はとても涼しく、むしろ窓など開けていられないほど寒くなって来ました。日中、どんなに暑くても、夜になると涼しい気候ならば、自宅で冷房を使わなくても過ごせそうな気がします。でも、こんな日々もあと半月くらいなのでしょうかね。

 何を隠そう、私の好きな文学のジャンルは純文学である。今回ご紹介させていただくのは、職場文庫からの貸し出し図書ではなく、自宅文庫から選んだ一冊である。どこかの古本屋さんで購入して以来、ずっと自宅の本棚に並べていたものだが、お恥ずかしいことに、これまで一度も読んだことがなかった。しかし、何か本を読み始めると、読み終えたときに寂しさを感じてしまい、次に読むべき本を直ちに探し始めるようになる。そして、本『天使と悪魔/ダン・ブラウン』を読み終えたあと、すぐに読み始めたのが本作だったというわけだ。

 大正時代に書かれたであろう本作だが、今、読んでみてもそれほど古めかしい感じはしない。もちろん、物価や流行は大きく異なっていて、例えばダンスが流行していたりする。また、、カフェのことがカフェーと表記されていたりもする。ちょうど、西洋から入って来た「洋服」や「ダンス」などが日本人の生活の中に徐々に取り込まれ始めた時代が物語の背景となっている。

 本作ほど知名度の高い作品ならば、簡単なあらすじくらいは知っていても良さそうなものだが、私は本作を読んだことがなかったので、ほとんど何も知らなかった。実際に読んでみると、『痴人の愛』というよりは、『痴人への愛』のほうがふさわしいタイトルなのではないかと思った。谷崎潤一郎は何故、『痴人への愛』というタイトルにしなかったのだろうか。「痴人」とは、主人公の男性のことだったのだろうか。

 物語は、主人公である河合譲治という二十六歳の青年が、行き着けのカフェーで、十五歳のナオミという娘と出会うところから始まる。この時代の人たちは、西洋のものに対する憧れが強かったようで、譲治はハーフのような顔立ちのナオミに強く惹かれ、ナオミの保護者に許可をもらい、ナオミと一緒に暮らし始めるのだった。若い男女が同居すると、いろいろなことを想像してしまいがちだが、読者が嫌悪感を抱くようないやらしい描写は皆無と言ってもいいほど含まれていない。

 ただ、物語の始まりと終わりで、ナオミがまったくの別人のように変化してしまっているのが本作の最たる特徴である。しかし、最初から最後まで、ナオミの譲治に対する感情が読み取れないのが恐ろしいところでもある。譲治がナオミを好きなのはとても良くわかる。では、ナオミはどうなのだろうと、最後まで疑問が残ってしまう。特に、愛と欲望を分けて考えるようになると、余計に混乱する。果たして、ナオミをあんなふうに目覚めさせてしまったのは譲治なのだろうか。

 本を読むこともまた映画鑑賞のようだと感じるのは、映画にも、作品の中での時間の進み方がやたらと速く、鑑賞してしばらく経つと、内容をすっかり忘れてしまう作品があるからだ。本もまた同じで、作家が登場人物の描写を粗末に行ってしまえば、読者は本を読むはたから、どんどん本に書かれている内容を忘れて行く。しかし、本作のようにきめ細かな描写がなされていると、本作の内容は、読者の心の中にずっと残り続けて行くだろうと思う。

 素晴らしいと思ったのは、譲治がある限界を越えて行くところだ。譲治がその限界を越えることができずに、そこで物語がおしまいになってしまっていたとしたら、本作が私の心に強く残るようなことはなかっただろう。しかし、譲治は境界を越えて大いなる脱皮を果たした。だから、譲治が乗り越えて行った貴重な経験が、読者である私の中に鮮明に残ったのである。ゆえに、なかなか読み応えのある本であることは間違いない。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 後書きにもありましたが、谷崎潤一郎には、ナオミのモデルがちゃんといたようですね。何とも複雑な人間関係だったようであります。谷崎潤一郎は、幅広い小説を書いたようですが、私は大衆文学よりも、この手の作品のほうが好きです。

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