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2013.02.09

「面会人の名前は言えません」

急性から慢性への記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 三連休ですね。私たちはまたまた泊まりで出掛けて来ています。今日は旅先で遭遇した、ある出来事について綴ってみたいと思います。

 私たちがとある温泉旅館に宿泊するために、とある駅で降り立ったときのことである。駅から温泉旅館までは、自動車で十数分掛かるというので、私たちは旅館の送迎バスに迎えに来てくださるようにお願いしていた。ガンモがその温泉旅館を予約したときに、迎えに来て欲しい時間を伝えておいたのだ。

 駅前には、それぞれ異なる温泉旅館の送迎バスが三台停まっていた。私たちが送迎をお願いした時間にはまだ早かったが、私たちはそれらの送迎バスの中に、私たちが宿泊することになっている温泉旅館の送迎バスが停まっていないか、注意深くチェックした。しかし、どの送迎バスも、私たちが宿泊することになっている温泉旅館のものではなかった。

 それらの温泉旅館の送迎バスには、次々に予約客が乗り込んでいた。どうやらそれぞれの送迎バスの運転手さんは、送迎バスに乗り込む予約客の名前をチェックしているようである。例えば、大阪駅前には、歩いて行くには少し遠い高級ホテルの送迎バスが何台か発着しているが、どの送迎バスも、予約客の名前をチェックしたりはしない。おそらく、都会のホテルであるために、宿泊以外の目的で送迎バスを利用される方たちも多いからだろう。しかし、地方の温泉旅館は違うようである。

 ある温泉旅館の送迎バスの運転手さんは、送迎バスの外に立ち、利用客のリストと照らし合わせながら、利用客を送迎バスに誘導していた。Bluetoothのヘッドフォンマイクを耳に挿していることから、旅館のフロント係と電話が繋がっているのだろう。

 そこへ、上品そうな一人の女性がやって来て、送迎バスの運転手さんに何か尋ねていた。そう言えば、先ほどからその女性は、駅の周辺をうろうろしていた。どうやらその女性は、その旅館に宿泊している利用客と面会するためにその送迎バスを利用したいらしい。すると、運転手さんは、面会したい宿泊客の名前を尋ねた。その宿泊客が実際にその温泉旅館に泊まっているかどうか、フロントに確認するつもりだったのだろう。

 しかし、どうしたことかその女性は、面会したい宿泊客の名前を答えなかった。そのため、運転手さんは、
「訪問されるお客様のお名前を教えていただけないのでしたら、この送迎バスにお乗せすることはできません」
と言って断っていた。女性はその運転手さんに、その温泉旅館まで車でどれくらい掛かるかを尋ねたようだ。それに対し、運転手さんは、
「車で十七分くらい掛かりますね」
と答えていた。

 温泉旅館の送迎バスに乗せてもらえないことを知った女性は、私たちのすぐ近くを忙しげに歩いて行った。タクシー乗り場に向かっているのかと思って見ていたのだが、タクシー乗り場を通り過ぎて行った。何かに迷っているのかもしれない、とも思った。彼女の手には、面会したい宿泊客に渡したいお土産のようなものが提げられていた。

 そんな彼女の行動を見ていたガンモが急にひらめいたように言った。
「○○○○のワンフーなんじゃないの?」
私は、瞬時のうちにガンモの発したその言葉の意味を理解した。○○○○というのは、とあるアーチストの名前である。実は先ほどこの駅に着いたときに、そのアーチストのライブが翌日に開催されることを知らせるポスターを見掛けたばかりだったのだ。なるほど、それで彼女は、そのアーチストが宿泊するであろう温泉旅館をピックアップして、手土産を持ってそのアーチストに会いに行こうとしているのだろう。

 私がピンと来たのは、以前、そのアーチストの追っかけの女性が凄いという話を聞いたことがあったからだ。というのも、そのアーチストと私の好きなアーチストは趣味の世界で接点を持っていて、私も参加したことのあるイベントにゲスト出演されたことがあるのだ。そのときに、そのアーチストがゲスト出演されるということは、イベント開催の直前まで主催者側から伏せられていた。というのも、かつて同じようなイベントが開催されたときに、東京からぞろぞろと、その趣味のイベントには明らかに場違いな、そのアーチストのファンの女性が一緒に着いて来て、会場の雰囲気が台なしになってしまったからだそうだ。それは趣味の世界のイベントだったので、そのアーチストが普段、行っている芸術活動とはまったく関係のないイベントだったのである。普段の芸術活動と関係があるならまだしも、マニア度の高い趣味の世界のイベントに、その世界とはまったく関係のなさそうな女性たちがぞろぞろと東京から着いて来るというのは、その場の雰囲気を壊してしまうというものだ。

 そんな話を聞いていたので、そのアーチストのコンサートが行われるという情報を聞きつけたときに、すぐにその女性の行動と繋がったのである。私も普段から、特定のアーチストに対し、特別な想いを傾けている女性たちを見て来ているので、ついつい長年の勘が働いてしまったのだ。それにしても、そんな動物的な勘を、いつの間にかガンモも養っていたことに驚いた。

 とは言え、私には、その女性の抱えているであろう切ない気持ちが痛いほど良くわかる。運転手さんに対し、アーチストの名前を出さなかったのも、そのアーチストに対する気遣いであることは間違いない。そして、何らかのきっかけをつかむために、そのアーチストに上品なお土産も持参したのだろう。きっとそのお土産袋の中には、彼女がしたためた直筆の手紙が入っているはずである。

 ただ、そうした行為はどこか自己愛的でもあるということに、その女性もいつかは気付くことになるかもしれない。また、男女は対等な関係を築いてこそ素晴らしいものであることにも気付いて行くことになるのではないだろうか。ひょっとすると彼女は、そのアーチストのことを入口にして、等身大の別の男性と出会うことが約束されているのかもしれない。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 彼女は、私と同い年くらいの年齢の女性でした。彼女の心理は、私にも良くわかります。ほとんどの方は、好きなアーチストに対し、Read Onlyの立場(見ているだけで満足できる)を取ろうとすると思うのですが、時にはWriteしたい(直接的に関わりたい)衝動に駆られる対象がいるのですよ。いや、すべての女性がそうだとは限りません。ごく一部の人だけだと思いますが、その一部の人の気持ちが私にも理解できるのです。

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