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2012.04.29

映画『裏切りのサーカス』

リュープリンという選択(12)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 高速バスの事故で、七人もの犠牲者が出てしまいましたね。ここのところ、様々な形での自動車事故がクローズアップされていますが、この事故もまた、とても悲惨なものとなってしまいました。事故を起こした高速バスはディズニーランドに向かう途中だったようですが、楽しいはずのゴールデンウィークが一変して、惨事に変わってしまいました。亡くなられた方たちのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

 今回は、ゴールデンウィークが始まる直前の四月二十七日に鑑賞したばかりの作品をご紹介させていただこうと思う。本作のことは、劇場に貼り出されていたポスターを見て、公開前からとても気になっていた。主演がゲイリー・オールドマンだったこともある。一体どのような作品なのか、詳細は良くわからなかったのだが、とにかく気になる作品だったので、公開されたら絶対に鑑賞しようと思っていたのだ。

 それほど気になる作品だったというのに、本作が本格的なスパイ映画であると知ったのは、実際に鑑賞し始めてからのことだった。ちなみに、本作の原作者は、かつてMI6諜報(ちょうほう)員だったこともある作家ジョン・ル・カレだそうだ。スパイ映画というと、ジェームズ・ボンドを思い浮かべる方も少なくないだろう。私自身、ジェームズ・ボンドシリーズを鑑賞したことはほとんどないのだが、本作は、ジェームズ・ボンドシリーズで描かれているような華やかな(?)スパイの世界とはまったく異なる地味なスパイ映画であると断言してしまってもいいだろう。どちらかと言うと、水面下で進行している出来事を明るみにしようとして描かれたもので、少し前に鑑賞した映画『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』から受けた印象に近いと言える。

 ゲイリー・オールドマン演じるスマイリーは、英国諜報(ちょうほう)部「サーカス」を引退したにもかかわらず、新たな指令を下される。それは、二十年にも渡って「サーカス」に潜伏し続けているという「もぐら(二重スパイ)」を探し出し、始末して欲しいというものだった。容疑者は、"ティンカー”、“テイラー”、“ソルジャー”、“プアマン”のコードネームで呼ばれる四人である。スマイリーは、過去の膨大な資料をもとに、ターゲットを搾り出して行く。

 正直言うと、最初のうちはわけがわからなかった。おそらく、詳しい状況説明がなされないままに会話や回想シーンだけで物語が進行して行くからだと思う。状況を呑み込むには、与えられた情報から推察して行くしかない。しかし、私が面食らったのは、登場人物の多さだ。さきほど挙げた四人の容疑者のほかに、スマイリーが右腕となっていたサーカスのリーダー、コントロールがいる。そして、もぐらを探すという新たな指令が下ったときに、スマイリーの手助けをすることになる現役諜報員のギラムもいる。更に、他の諜報員も様々な立場で登場し、次々に入って来る情報に目が回りそうになった。

 時代は東西の冷戦時代である。そのため、「東側」とか「西側」といった表現が出て来る。「東側」であるハンガリーの将軍が自分の知っている「もぐら」の名前と引き換えに自らの亡命を要求したことで、ハンガリーに諜報員が送り込まれたことから始まる。しかし、その諜報員は銃撃されてしまい、取引は失敗に終わる。そのあたりの素早い展開が、私にはわかりにくくもあった。

 本作で注目したいのは、サーカスに関わる人物を演じている人たちがみんな、過去に何らかの作品で脚光を浴びた俳優さんたちであるということだ。例えば、サーカスのリーダー、コントロールを演じているジョン・ハートは、映画『エレファント・マン』でジョン・メリック、すなわちエレファント・マンを演じていた。また、スマイリーを演じているゲイリー・オールドマンは、過去に様々な役をこなしているが、私としては、映画『シド・アンド・ナンシー』でセックス・ピストルズのベーシストであるシド・ヴィシャスを演じていたのがとても印象的である。テイラーを演じているコリン・ファースは、言うまでもなく、映画『英国王のスピーチ』で演じた吃音に苦しむ英国王が記憶に新しい。そして、スマイリーの手助けをすることになる現役諜報員のギラムは、映画『アメイジング・グレイス』で若き英国首相を演じていた。

 ただ、情報セキュリティに関してひどくナーバスな時代を生きている私からすると、諜報員が働く「サーカス」のセキュリティが一体どのくらいのものなのかが気になるところだ。情報の宝庫とも言える図書館のようなところにカバンを持ち込むことができないのは当然のことだろうが、見ていると、やはり穴がある。現役諜報員のギラムは、見事にその穴を利用して、調査に必要な日誌をまんまと盗み出す。ドキドキする展開だが、これが現代ならば、ポケットに精密な小型デジタルカメラを忍ばせておいて、該当ページをささっと撮影してしまうのではないだろうか。

 サーカスへの入退室をチェックしている人も、現代とは違って何となく人間味がある。無機質なガードマンが無表情で入退室をチェックを行っているというのが現代のイメージだが、当時はサーカスに出入する諜報員らと入退室チェックを行っている人が顔見知りで、互いにあいさつを交わしていたりもするのだ。まだまだ人間味溢れる時代だったのだろう。

 そして、ところどころに挿入されているサーカス内部でのパーティの映像は、「もぐら」がまだ表面化していなかった旧き良き時代を示唆していたのかもしれない。パーティーに参加しているサーカスの諜報員たちは、長い間、一緒に仕事をして来た気心の知れた仲間たちであるという印象を抱いた。だからこそ、実際に「もぐら」が存在するとするならば、それは仲間内の間で、想像以上に胸を痛める出来事であったはずだ。

 物語が進行して行く中で、ついに「もぐら」が誰であるのかわかるのだが、その背景には、調査を依頼されたスマイリー自身の感情にも関係する複雑な事情が絡んでいた。いやはや、難解である。

 ちなみに、本作でメガホンを取っているのは、私の大好きな映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のトーマス・アルフレッドソン監督なのである。今回は、少し難しい作品だったが、なるほど、最初からそのことがわかっていれば、鑑賞中にもっといろいろなことを吸収できたのにとも思う。

 やはり他の方たちにとっても、一回だけの鑑賞ではなかなか理解しにくい作品なのだろうか。劇場で、二回目の鑑賞は千円という割引サービスが設定されていた。私は、本作を鑑賞した映画館では、毎回千円で鑑賞できるので、特に二回目の鑑賞料金が千円というメリットには惹かれなかったのだが、こうしてレビューを書くために頭の中を整理するだけでもずいぶん理解は深まったと思うのだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m イギリス英語が耳に心地良い作品ではあるのですが、内容としてはかなり難解でありました。スマイリーを演じているゲイリー・オールドマンは、スマイリーという役名にまったくふさわしくなく、笑いません。(苦笑)感情が見えにくい役柄ではありますが、それだけに諜報員としは敏腕だったのでしょうね。

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24日のことですが、映画「裏切りのサーカス」を鑑賞しました。 英国諜報部のサーカスに潜むソ連の二重スパイを 捜し出す指令を受けた 引退したスパイ スマイリーだったが・・・ スパイ映画ですがM:Iシリーズなど よくあるスパイ映画とは違い アクションはなく 派手さも...... [続きを読む]

受信: 2012.05.06 10:21

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