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2012.03.01

頑固もののガンモ(後編)

映画『ヒマラヤ 運命の山』の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m いやあ、ずいぶん暖かくなりましたね。私は密かに、マタギに戻るチャンスをうかがっています。(苦笑)日々の気温差がありますので、皆さんも体調を崩さないように気をつけてくださいね。それでは、頑固もののガンモ(前編)の続きを書かせていただきます。

 ガンモをカングーに残していったん家の中に入ったものの、私はかなりイライラしていた。果たしてこれが、免疫力がひどく低下してしまっている母に風邪をうつさないための最善策と言えるのだろうか。私は心の中で自問自答を繰り返していた。

 私は再び立ち上がり、ガンモのいるカングーに戻った。家の中に入るようにガンモに声を掛けてみたが、相変わらずガンモは岩のように動こうとしなかった。風邪を引き掛けているというのに、ガンモが寒いカングーに残り続けていることと、病気の母が用意してくれた手料理を食べないでいることに苛立ちを覚え、私はとうとう百円均一のお店で買ったボードを手に取り、ガンモの頭をペシッと叩いた。それでもガンモはカングーの中に居座り続けたので、私は激しい苛立ちを覚えながら、運転席のほうへと回り込み、憎しみのこもった激しい形相でガンモを睨み付けた。

 私は、とにかく焦っていたと思う。今回の帰省で、母は私たちに手料理を用意してはくれたものの、次回、帰省したときには状況が変わってしまっているかもしれない。そう思うと、ガンモは自分から大きなチャンスを失ってしまっているように思えて仕方がなかったのだ。

 それでもガンモは動かないので、私は再びしぶしぶ家の中に入った。相変わらず、ガンモが頑固な姿勢を崩さないでいることがわかると、母は、
「車ん中は寒いのに、家の中に入って、ご飯を食べてくれたほうがええんじゃけどね」
と伊予弁で言った。

 それを聞いた私は、何だか心が柔らかくなった。免疫力がひどく低下している状態で、風邪を引き掛けている人を家の中に迎え入れるのは、正直言って怖いと思う。もしも母が風邪を引き、三十八度以上の熱を出すことになれば、主治医から処方されている薬を飲んだあと、ただちに病院に搬送してもらわなければ命に関わるのだ。

 母は、私たちを迎えてくれた時点でマスクを着けていたが、その防備を崩さないまま再び外へ出て、ガンモのいるカングーへと向かった。もちろん、私も一緒について行った。

 母は、コンコンコンコンとカングーの窓を叩いた。そして、ここは寒いので家の中に入って欲しいこと、ご飯の用意ができているので食べて欲しいことなどをガンモに伝えた。するとガンモはようやく起き上がり、カングーを降りて家の中に入ってくれたのだ。私は、童話の『北風と太陽』を思い出した。私がガンモに対して必死に働き掛けていたのは、ずっと北風がして来たことだったと反省した。

 暖かい家の中に入ったガンモは、母の手料理を食べたあとゴロンと横になり、少し眠った。横になっているガンモを見付けて、父と母が湯たんぽや毛布を持って来てくれた。ガンモはそのまま二時間ほど眠った。そのため、当初、一時間だけの約束だった滞在時間はとうに過ぎてしまった。午前からの続きの電話会議は十六時からだったが、ガンモは私の実家で電話会議に参加するのだろうと思っていた。

 ガンモが横になっている間、私の両親は次から次へと私たちのいる部屋の扉を開けて、私たちに見せたいものや、持って帰らせたいものなどを運んで来た。電話では毎日話しているものの、こうして五ヶ月振りに会うのだから無理もない。

 そして十六時少し前に、ガンモはむっくりと起き上がった。
「良く寝た。風邪、治ったから」
とガンモは言った。間もなく電話会議が始まる時間だったので、私はガンモのために、ガンモのノートパソコンで使用するACアダプタをカングーまで取りに行った。その間にガンモは、ノートパソコンや携帯電話をセットアップしていたようだった。

 私は、別の部屋にいる両親に、ガンモの風邪が良くなったこと、これから電話会議が始まることなどを伝えた。いなみに、私たちが滞在している間、両親と私はずっとマスクを着用していた。

 ガンモの電話会議が終わって間もなくすると、私たちはたくさんのお土産をカングーに積み込み、両親に見送られながら、ガンモの実家へと出発した。とは言え、ガンモの両親は既に亡くなってしまっているため、もはやガンモの実家には誰も住んではいない。それでも、ガンモの実家は義弟との大切な接点となっているため、この春、小学生になる姪の入学祝いや、お正月に帰省しなかったために渡しそびれていたお年玉を持参したのだ。

 ガンモの実家を出発し、兵庫県の我が家に到着したのは二十三時頃だっただろうか。帰宅するや、私はガンモの身体を強く抱き締め、昼間の無礼を謝った。いつの間にか、私たちはわだかまりを残さずに、いつものように打ち解けあっていた。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m いろいろな状況が同時に進行しているとき、その中から一つだけを選び出すのはとても難しいですよね。あちらを立てればこちらが立たずという状況にもなりかねません。結果的にガンモは暖かい家の中に入り、母の手料理を食べて眠り、引き掛けていた風邪を退散させることができました。有り難いことに、ガンモの風邪が母にうつることもありませんでした。「結果良ければすべて良し」とは言い切れませんが、『北風と太陽』の太陽のように愛情をもって行動することが大切なのだと痛感しました。

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