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2012.02.23

映画『一枚のハガキ』

ボタンを掛け違えたままの一日の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 息子さんの大学受験のために十時間も自家用車を運転するという友人から再びメールが届き、実家のお父さまも一緒に行くことになったと書かれていました。彼女のお父さまはご高齢の上、病気も抱えていらっしゃるというのに、自分が一緒に行くことになれば、娘の運転を替わってあげることができるだろうという想いで、同行してくださるそうです。私は安易に電車で行くことを友人に勧めてしまいましたが、こんなにも愛情溢れた自動車旅行は、きっと彼女たちにとって特別なものになるに違いありません。

 日本における最高年齢の現役映画監督でいらっしゃる新藤兼人さんの監督作品である本作を鑑賞したのは、映画『おじいさんと草原の小学校』を鑑賞したのと同じ八月二十日のことである。本作には、今年の四月に百歳のお誕生日を迎えられる新藤兼人監督ご自身の戦争体験が盛り込まれているのだそうだ。

 太平洋戦争末期、百人の男たちが招集され、そのうち生き残ったのはたった六人だけだった。百人の男たちの生死を切り分けたのは、何と、「くじ引き」だった。

 豊川悦司さん演じる松山啓太は、六平直政さん演じる戦友の森川定造から一枚のハガキを託される。そのハガキは、定造の妻である友子から送られて来たものだった。フィリピン行きが決まった定造は、もしも自分がこのまま帰って来なかったら、このハガキを読んだことを妻の友子に伝えて欲しいと言うのだ。定造が自分で返事を書けばいいのに、当時は検閲が厳しくて手紙もなかなか書けなかったようだ。いろいろな人たちが、自分の持つ本来の感情を抑え込みながら生きていた時代である。

 やがて戦争が終わり、落ち着いた頃、定造から預かったハガキのことを思い出した啓太は、定造の妻である友子を訪ねて行く。そこから先は、大掛かりな仕掛けなど必要のない、人間同士の会話と回想シーンで構成されている。

 大竹しのぶさん演じる友子は、夫である定造の亡きあと、定造の弟と夫婦の契りを結ぶものの、不幸なことに定造の弟までもが戦死してしまう。今どきの時代では、考えられないような展開だが、当時は子供を生んで育てることが今以上に大切だったのではないだろうか。

 そんな友子は、その都度、その都度、自分に与えられた状況を受け入れて行く女性であるかのように思えた。しかし、大杉漣さん演じる吉五郎のことは受け入れていなかった。吉五郎は妻帯者でありながらも、友子に想いを寄せていたのだ。友子は、吉五郎が妻帯者であることを知っていたので、吉五郎のことを受け入れても、妾にしかなれないとわかっていたのかもしれない。

 ハガキを持って訪ねて来た啓太に対し、警戒心をむき出しにする吉五郎の取る行動は、ほとんどコメディと言ってしまってもいいかもしれない。あたかも友子を取り合うかのように、啓太と吉五郎が大喧嘩をするシーンはなかなか面白い。

 のどかな田舎で、啓太と友子の間で、次第に中身の濃い会話が繰り広げられて行く。このような会話に耳を傾けていると、何故、お金に困っているはずの友子が吉五郎に傾かなかったのか、わかるような気がする。

 多くの会話で成り立っている本作は、稀薄になってしまった現代のコミュニケーションを振り返るのに、とてもいい作品だと思う。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 当時は、誰かに恋い焦がれて結婚するという世の中ではなかったのですね。女性は、用意された結婚にうなずく形で嫁いで行ったようです。夫が亡くなれば、夫の弟と結婚することも、珍しくはなかったようですね。そんな時代を生きて来た二人が短時間で絆を結んだのは、お互いの境遇が似ていたからかもしれませんね。

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