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2012.01.24

映画『ヒミズ』

私は何故、今の職業を選んだか?の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 更新が遅くなり、申し訳ありません。東京では雪が降ったそうですね。雪国でない地域で雪が降ると、普段から雪に慣れていないためにいろいろな事故が起こるようです。私も、関西地方で雪が降るのならば、ムートンブーツで歩くのは危険だろうと思っています。以前、冬の北海道に行く前に購入した、手持ちの靴にはめるだけの滑り止めのゴムがどこかにあったはずなのですが、どこに行ってしまったのか、見当たりません。(苦笑)地元の方に聞いたのですが、北海道で売られている靴は雪道に強い靴のようですので、雪の日でも通常の靴を履かれている方は、十分ご注意くださいね。

 今回は、一月二十日に鑑賞したばかりの本作のレビューを書かせていただくことにする。映画『冷たい熱帯魚』映画『恋の罪』の園子温監督がまたまた新作を発表した。劇場で本作の予告編が流れたとき、正直言って、「えっ? ついこの間、映画『恋の罪』を鑑賞したばかりなのに」と、心の中でうれしい悲鳴をあげた園子温監督ファンは、私だけではなかったはずだ。

 本作のキャストは、映画『冷たい熱帯魚』の俳優陣に、光石研さんと染谷将太くん、二階堂ふみちゃんが加わったような感じだ。そして今回も園子温監督は、人間の持つ深い深い闇を見せ付けてくれた。それも、単なる闇ではない。実の親からも愛されず、むしろ憎まれながら生きて来た十五歳の少年少女の話なのだ。

 冒頭で、壊れた家屋などが写し出されたとき、「えっ? これ、セットじゃないよね? まさか、東日本大震災のリアル映像?」と思い、少し引いてしまった。実際に、東日本大震災のリアルな映像が映画に使われるとは思ってもいなかったからだ。というよりも、仮にそうした映像を受け入れられる時期が来るとしても、もっと先のことではないかと思っていた。私たちが東日本大震災のリアルな映像を映画の中の一こまとして受け入れるには、まだまだ早いような気がしていたのだ。ちなみに、舞台となっているのは東北地方ではなさそうだが、染谷将太くん演じる主人公の住田の住む貸ボート屋の近くには、東日本大震災で家をなくした人たちがテントを張って暮らしている。

 両親に愛されることなく育って来た住田の心は頑(かたく)なだった。母親は住田に興味がなく、質素な生活を送りながらも、しばしば恋人との逢瀬を重ねている。父親は、ときどき貸ボート屋にやって来ては金をせびり、住田に対して、「お前なんて生まれて来なけりゃ良かったんだ。あのとき死んでいれば保険金が入ったのに」などという暴言を住田に向かって繰り返し吐く。信じられないことだが、そこには正真正銘の憎しみが込められているようにも思えた。

 父親も母親も、自分自身が幸せになろうとすることに精一杯で、子供である住田の幸せを考える余裕などなさそうに見えた。育ち盛りの住田の顔に笑いがないのは、彼が親から愛されずに育ってしまったからだろう。愛されないどころか、むしろ憎まれながら生きて来たのだから、それでも彼が笑っていられるとしたら、よほど能天気な青年と言える。

 しかし、そんな住田に注目している少女がいる。二階堂ふみちゃん演じる住田のクラスメイトの茶沢である。茶沢もまた、親に愛されずに育ったことは、彼女の自宅での描写から想像できる。茶沢の母は首吊り台を作り、我が子である茶沢を自殺させようとしているのだ。

 それでも私は、茶沢の中から溢れ出る住田への確かな好意に注目した。茶沢にとって、最初はアイドル並みの存在だったはずの住田が、いろいろな出来事を経て、ただの憧れ的な存在から本当の愛を注ぐべき存在へと変化している。いろいろなテーマが詰まった作品だとは思うのだが、私は本作を純愛映画ととらえた。

 私がどうしても涙をこらえ切れなかったシーンがある。それは、住田と茶沢が横になって寝ているときのシーンだ。二人は互いに顔を合わさないまま、とても大切なことを語り合っている。それは、住田に関わるある重大な事実を知ったあとのシーンなのだが、永遠の愛を誓おうとする茶沢に対し、住田は、茶沢が大学生になれば、アルバイト先で知り合った男と恋に落ちるだろうと予言しながら涙するのだ。このシーンは、これまでずっと頑なだった住田を見守って来た人たちにとってはたまらないシーンだ。何故なら、親に愛されなかった住田が、本当は愛を受け取るのが怖くて(受け取った愛を失ってしまうのが怖かったのかもしれない)、必死で突っ張り続けていたのに、ようやく茶沢の愛を受け入れ、未来のことを語り合うシーンだからだ。

 これまで、愛というものを肌で感じ取って来なかっただけに、やや自己愛寄りの愛情表現になってしまっているのだが、おそらくこれが住田にとっての精一杯の愛情表現だったのだろう。しかも、そこで語られていることは、大人になったら結婚して子供を生んで、というごくごく当たり前の平凡な男女の未来だ。それなのに、住田や茶沢には、みんなが当たり前のように目指せるはずの平凡な未来が約束されていなかったのだ。本作のすべてはこのシーンに集約されていると思う。またしても、園子温監督、やってくれたなあという印象だった。

 茶沢にとって、最初はアイドル的な存在だったはずの住田が、だんだん身近な存在になり、互いに感情を交わし合う関係になる。アイドルとは、確実に、相手の生き方に影響を与えない一方的に参照するだけの存在であり、本当の愛とは、確実に、相手の生き方に影響を与える関係なのだと実感した。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m またしても衝撃的な園子温監督の作品でありました。今回の作品は、じわじわと責めて来ます。(苦笑)若いのに、茶沢はしっかりした愛を持っていると感動しました。彼女自身も親に憎まれて育って来たと思うのですが、彼女の魂の奥底からの愛は、どこから生まれて来たのでしょう。う。これほどの深い愛情を持って生きて行けたらいいですね。

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