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2011.12.16

映画『マイ・バック・ページ』

にぎやかな筆談の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m たくさんの方たちから応援クリックを賜り、心より御礼申し上げます。忘年会のシーズンですね。参加人数が多くなると話が深くならないので、私は、若い頃からたくさんの人たちが集まる飲み会などに参加することについては消極的でした。昔、「動物占い」が流行ったときに、私は「サル」だったのですが、「サル」の説明に、「どんちゃん騒ぎが大好き!」というようなことが書かれていて、「こうも当たらない占いは珍しい」と思っていました。(苦笑)

 本作を鑑賞したのは、映画『手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく』映画『プリンセス トヨトミ』を鑑賞したのと同じ五月二十八日のことである。何故、同じ日に三本も鑑賞したのかというと、TOHOシネマズの1ヶ月フリーパスの有効期限がこの日までだったため、ちょうどこの日に公開された作品を鑑賞しておきたいと思ったからだ。

 本作でメガフォンを取っているのは、三年前に閉館してしまった私の最もお気に入りの映画館で行われたトークショーでお目に掛かった山下敦弘監督である。山下敦弘監督の作品は、何本か鑑賞しているが、私には本作が一番強く心に響いた。

 もしかすると、現代を生きる若者たちにとっては、本作の置かれている状況を理解することは難しいかもしれない。というのも、本作は、反戦運動や全共闘運動が盛んだった一九六九年から一九七二年までを時代背景として描かれているからだ。

 この時代に、私は既に生まれてはいるものの、まだ幼稚園か小学校の低学年だったので、当時、世の中で何が起こっていたかについてはほとんど知らない。それでも、その時代を熱く生きた人たちが残したものの一つとして、その頃流行っていたいくつものフォークソングに耳を傾けて来た。

 当時と比べると、今は明らかに無気力、無関心の時代だと思う。当時のフォークソングからも感じられるように、当時の人たちはとても熱かった。だから、納得の行かないことがあれば、学生たちは力を合わせて立ち上がったのだ。

 本作で描かれているのは、ある記者と学生活動家との奇妙な関わりである。週刊誌編集部で働く記者の沢田を妻夫木聡くんが演じ、左翼思想の学生活動家である梅山を松山ケンイチくんが演じている。

 ある日、沢田は、梅山と名乗る男から、もうすぐ武装決起するという情報を得る。梅山の言葉に半信半疑の沢田だったが、不思議と彼に惹かれ、それほど親密ではないものの、やがて酒を酌み交わす仲となる。

 私から見ると、記者である沢田は、梅山の中に、自分では到底実現できない願望をこっそり託していたのではないかと思う。当時、新米記者だった沢田と、まだ学生だった梅山は、それほど年齢差はなかったはずである。自分とほとんど年齢の変わらない学生たちが、大学に集まり、熱い行動を起こしている姿を見守りながら、沢田は、自分の中にある熱いものを理性で抑えていたように思えるのだ。そして、そんな沢田の中に、自分と同じような熱いものがあると見破ったからこそ、梅山は自らの計画を沢田に語ったのではないだろうか。

 沢田たちが生き抜いて来た時代は、いろいろなものが「足りていない」である。だから、何にしても、「求めよう」とする気持ちが強く、行動一つを取っても、とにかく熱い。それに対し、現代は飽食の時代とも言われているように、いろいろなものが「過剰になってしまっている」時代である。だから、もはや人々の中では、何かを必死に求めようとする気持ちが薄れ、ものごとに対しても熱くはなれない。

 私は、ラストで沢田が泣くシーンがとても印象に残っている。何でもないときに、何故、あんなに泣くのかと不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれないが、あの時代を生き抜いて来た沢田の中には、既にいろいろな感情が芽生えていたものと思われる。もしかすると、それらの感情は、沢田がその後の時代を生き抜いて行くためには封印しなければならない感情だったのかもしれない。だから、ふとしたきっかけであの時代のことを思い出したときに、とうとう封印が解けて、どうしようもなく涙が出て来てしまったのではないだろうか。特に、沢田が取材のために、その時代を必死で生きている人たちの中に紛れ込んで生活していたときのことを思い返すと、たまらない感情がこみ上げて来るのではにだろうか。取材で訪れている自分には帰るべき別の場所があるというのに、そこで必死に生きている人たちは、代わりのない精一杯の人生を生きている。だから、「また帰って来いよ」の一言が余計に胸に響いて来るのだろう。本作は、ラストの沢田の涙に、何もかも集約された作品なのだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 本作は、川本三郎という人がジャーナリスト時代に実際に体験したノンフィクションなのだそうです。だから、ドラマとして完結しているわけではなく、川本三郎氏自身を投影させているであろう沢田と活動家の梅本との関係も、どことなく曖昧です。武装決起すると宣言した梅本は、のちに実際に暴動を起こすのですが、そのときに死者が出てしまうのですね。沢田は、武装決起すると、予め梅本から聞いていたので、本作には、梅本の計画を食い止めることができなかった原作者の川本三郎氏自身の後悔が含まれているのかもしれません。

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» ■映画『マイ・バック・ページ』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
妻夫木聡と松山ケンイチの競演が話題の山下敦弘監督の映画『マイ・バック・ページ』。 1969年から始まる映画というので、“LOVE & PEACE”で牧歌的でハッピーな青春物語かと思いきや、学生運動家とそれを取材するジャーナリストを描いたビターな物語でした。 あるシーンで、... [続きを読む]

受信: 2011.12.22 17:03

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