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2011.01.06

映画『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』

高エネルギーの同窓会(2)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m そう言えば、女性たちは相手に認識してもらうために、旧姓で名乗り合っていました。眼鏡を掛けていた中学時代とは顔も体型も変わってしまっている私も、旧姓で名乗ることで、相手に認識してもらいました。名簿が作成されて配布されたわけではなかったので、きっと同窓会を解散したあとも、女性たちはみんな旧姓のままで、同級生たちの記憶の中に残って行くのでしょうね。

 本作を鑑賞したのは、十月二十八日のことである。年末年始は多忙のため、映画館に足を運べていないというのに、こうして着々と映画のレビューを書いている。ということは、去年のうちに鑑賞したものの、まだレビューを書き切れていない作品を、私の中で少しずつ消化できているということである。これは大変良い傾向と言っていいだろう。

 本作は、冷戦時代にソ連を崩壊に導いたと言われているスパイの物語である。スパイの物語と言うと、少し前に鑑賞した映画『ソルト』を思い出す。更に、本作はフランス映画なのだが、本作同様、フランス映画でソ連が舞台となっている映画『オーケストラ!』を思い出す。それでは本作は、それら二つの作品を足して二で割ったような作品なのかというと、そうではない。スパイ映画といえども映画『ソルト』のような激しい戦いのシーンがあるわけではなく、また、フランス映画といえども映画『オーケストラ!』のようなユーモアたっぷりの展開でもない。どちらかと言うと、シリアスな人間ドラマだ。

 タイトルにもなっているフェアウェルというのは、本作の主人公でスパイであるグリゴリエフ大佐のコードネームである。彼はKGBの幹部であるにもかかわらず、これまでスパイ行為とはまったく無縁だったフランス人技師ピエールを介して、ソ連の知り得た機密情報を次々に西側に流して行く。すなわちグリゴリエフ大佐は、自らの手で祖国を危機にさらそうとしているのだ。とは言え、グリゴリエフ大佐がスパイ行為を働いたのは、決して祖国に対する愛国心がなかったためでもなく、またお金のためでもなかった。グリゴリエフ大佐はむしろ、祖国を危機に追い込むことで、祖国を変えようとしたのである。それは、愛する息子に、当時のソ連の延長線上にある暗い未来ではなく、もっと輝かしい未来をプレゼントしたかったためでもある。

 スパイ行為に手を貸すことになったピエールは、重大なスパイ行為に関わっているということで、自分自身の取っている行動に対し、深刻に思い悩むものの、そんな状況を重ねながら、グリゴリエフ大佐とピエールの間には奇妙な友情が育まれて行く。

 グリゴリエフ大佐はピエールを通して西側の文化に触れる。例えば、グリゴリエフ大佐の息子さんが好んで聞いている音楽は西側のものだったので、ピエールにそのアーチストのミュージックテープを買ってもらったりする。

 また、グリゴリエフ大佐はピエールからもらった詩集をとても大事にしている。狼の父親が家族を守るために自ら犠牲になるという内容のその詩は、本作の中でも活きている。もちろん、グリゴリエフ大佐がその詩に、自分の状況を重ね合わせて行くのは言うまでもない。

 たくさんの台詞があるわけではないが、本作の中で、グリゴリエフ大佐の存在感は大きい。彼には台詞など必要なく、表情だけでもすっかり絵になっているのだ。しかし、そんな彼も妻子ある身でありながら、女性と浮気をしていたり、彼の妻もまた、過去にグリゴリエフ大佐の同僚と浮気をしていたことがあったりと、どろどろした男女関係の一面ものぞかせてくれる。更に、そんな彼には実に皮肉な結末まで用意されているのだ。

 私は良く知らなかったのだが、グリゴリエフ大佐を演じているエミール・クストリッツァは、映画監督として名の知れた人なのだそうだ。そう言われてみれば、私も彼のお顔を拝見するのは初めてではないような気がした。過去に何らかの作品で拝見したか、それとも映画監督としてのご活躍ぶりをどこかで拝見したのかもしれない。それにしても、本作のグリゴリエフ大佐という多くを語らないスパイの役が見事にぴったりはまっている。言葉ではなく、表情だけで存在感を感じさせてくれる貴重な役柄を演じ切ることができるのは、じっくりと着実に歳を重ねて来た人たちだけの特権であろう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 人生経験の少ない赤ん坊が、多くを語らずに自分がお腹を空かせていることを主張するのは難しいでしょうね。(笑)歳を重ねるということは、表情の中にいろいろな感情を表現する装飾を施して行くことなのかもしれませんね。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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