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2010.12.08

映画『シングルマン』

映画『うまれる』の特別試写会からの記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 自分で辿り着いた結論に対し、私はひどく納得したのですが、なかなか伝わりにくい内容だったかもしれませんね。特別試写会に一緒に参加した派遣仲間も、この作品を観てとても感動したと言い、普段は映画を鑑賞することはほとんどないけれど、誘ってもらって本当に良かった、妹にも紹介したいと言ってくれました。神戸界隈に住んでいて、映画鑑賞が趣味の友人・知人は、私の周りにはほとんどいない上に、彼女が電車を乗り継がなければ尼崎まで移動することができない神戸市に住んでいたこともあって、普段、映画を鑑賞する習慣のない彼女を、わざわざ電車を乗り継いで出掛けて行かなければならない尼崎まで誘い出していいものかどうかと最初は躊躇していました。しかし、彼女に喜んでもらえて本当に良かったと思っています。

 今日は、十月二日に鑑賞した作品のレビューを書かせていただくことにしよう。映画館に掲示されていたポスターには、主人公の男性と艶かしい雰囲気の女性が仲良くベッドの上で寝転がっている姿が映っている。そのため、「ああ、これは男女の恋愛映画なのだなあ」と錯覚してしまいがちである。しかし、本作はそういう映画ではない。主人公の男性ジョージは、長年一緒に暮らしていた恋人の男性ジムを突然の事故で亡くし、悲しみに暮れていた。そう、二人は同性愛の形で結ばれていたことになる。ジムを亡くしたジョージの悲しみは思いのほか深く、あるときとうとう、自分の人生を終わらせようと決意する。本作は、死を決意したジョージが迎える最後の一日を詳細に描いた作品なのである。

 全体を通してとても奇妙な作品ではあるのだが、一言で言って美しい。自ら死を迎えようとしている状況が美しいなどと書くと、またまた誤解を招いてしまいそうだが、私はある時期から、映画を現実の世界からは切り離して鑑賞することができるようになった。そうなると、作り手が作品を通して表現しようとしているテーマを自由な感覚で受け入れることができるようになる。何故、自ら死を迎えようとしていることが美しいのかというと、ジョージはその日のうちに、自分が死んだあとの準備を冷静に着々と進めて行くからだ。例えば、大学で英文学を教えているジョージは、大学の研究室を整理し、これまで使っていた貸し金庫の中身もすべて引き取りに行く。そして、死んだあとに着せてもらう死装束まで用意し、目に付き易いところにきれいに並べておく。ところが、彼がいよいよ死に至ろうとすると、うまく行かなかったり、邪魔が入ったりする。そんなふうに当初の計画からは外れた状況に陥りつつある彼のもとへ、大学の男子生徒ケニーが現れるのだ。

 ケニーにしても、一緒にポスターに写っている艶かしい女友達チャーリーにしても、何となく際どい関係として描かれてはいる。ケニーは大学の先生であるジョージを先生として以上に、一人の男性として興味を持っている様子である。あたかも、ケニーがジョージの新しい恋人になるのではないかと期待させるシーンもあるのだが、そうはならない。また、チャーリーにしても、ジョージが訪問する前に念入りに化粧をしていることからも、かつて恋人関係にあったジョージに対し、ずっと未練を持っているのが見え見えである。

 それでも、ジョージの胸の奥には、愛するジムを亡くした深い悲しみが渦巻いていて、ジョージはジム以外の人との未来の可能性を探ろうとはしない。実際のところ、ジョージがケニーあるいはチャーリーを受け入れてしまったとしたら、この物語の美しさは成立しなくなってしまうのだ。ジョージがジム以外の対象を受け入れようとしないことからも、やはりジョージにとってのジムは、他に替わりの効かない特別で唯一の存在だったのだろう。

 本作は、グッチやイヴ・サンローランのデザインを手掛けたファッションデザイナーのトム・フォードが監督を務めている。だからだろうか。ジョージの着ている服や彼が用意した死装束にまでファッションのセンスがキラリと光っている。そんなトム・フォード監督の研ぎ澄まされたファッションセンスのように、本作には、他の作品では体験できないような優雅とも言える特別な時間が流れているのだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m とても不思議な作品でした。自ら死を迎えようとしているのに、とにかく美しいのです。ジョージには、「フォーマル」という表現がぴったりかもしれません。鑑賞していると、ジョージが同性愛主義者であることも、自ら死を迎えようとしていることも、ごく自然な流れとして受け入れることができます。ジョージが、ケニーやチャーリーの誘惑(と言っていいかどうかはわかりませんが)に乗らないところもまた美しいですね。こんな不思議な作品には、なかなかお目にかかれるものではありません。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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