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2010.12.28

映画『乱暴と待機』

TOEIC惨敗(前編)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 女子トイレの個室が二つしかなかったことにはとにかく驚きましたが、考えてみると、普段の学生生活には支障がないのでしょうか。私が受験した教室は大講義室のようでしたので、百人以上の生徒さんが講義を受けられるだけの広さがありました。しかも、教室はそこだけではなく、隣にもあったのです。女子トイレの個室の数を基準にすると、これだけ大きな講義室は必要ないはずですし、逆にこれだけ大きな講義室を基準にすると、トイレに個室が二つしかないことが疑問に思えてしまうのです。では、神戸大学農学部には女子学生の数が少なく、男子学生の数が圧倒的に多いのかという疑問も生まれましたが、それについては次回の記事で書かせていただきますね。

 こちらは、十月十五日に鑑賞した作品である。鑑賞する前から、劇場で何度も何度も本作の予告編を観ていた。予告編を観た限りでは、それほど面白そうな作品だとは思えなかったのに、実際に鑑賞してみると、実に面白い。特に、浅野忠信さんが演じている英則という怪しい男のキャラクターが最高にいい。

 英則と同居しているのは、美波ちゃん演じる奈々瀬である。英則も一癖あるキャラクターだが、奈々瀬もまた一癖も二癖もあるキャラクターである。いつも上下スエット姿で過ごしている奈々瀬には、他人の神経を逆なでするような従順さがある。二人は同居しているのだが、二人の間に愛情関係があるというわけではない。実際には兄妹ではないのに、兄妹として一緒に暮らしているのである。というのも、英則が奈々瀬のことをひどく憎んでいて、復讐のチャンスを窺うために奈々瀬を軟禁しているからなのだ。軟禁と言っても、兄妹のように二段ベッドのある部屋で生活を共にしていて、奈々瀬はその生活から逃げようとはしていない。奇妙なことに英則は、奈々瀬の行動を天井裏からこっそり観察し、復讐のチャンスを狙っているのである。

 間もなく、英則たちの住んでいる市営住宅に、山田孝之くん演じる番上(ばんじょう)と小池栄子ちゃん演じる妻で妊娠中のあずさが引っ越して来る。実は、あずさは、英則や奈々瀬と古くからの知り合いだった。しかも、単なる知り合いではなく、あずさは過去に奈々瀬から受けたひどい仕打ちを今でも根に持っていて、奈々瀬のことをひどく恨んでいた。そんな状況の中、あずさの夫である番上が奈々瀬のことを気に入り、さかんにアプローチするようになる。しかも、奈々瀬を憎んで天井裏から観察し、復讐のチャンスを窺っているはずの英則の心の中にも、奈々瀬に対する愛情のようなものが芽生え始めているように見えた。

 このようなやや複雑な人間関係が繰り広げられる中で、あずさの怒りがただものではないことがわかる。何しろあずさは、英則と奈々瀬が住んでいる家にサンダルを投げつけるだけでなく、大胆にも自転車を投げ入れたりするのだ。当然、割れたガラスが居間に激しく飛び散る。それでも怒りを露にしない奈々瀬に、見ている私もだんだん腹が立って来る。何故、奈々瀬は何でもかんでも抵抗せずに受け入れてしまうのだろう。奈々瀬には感情というものがないのだろうか。番上にアプローチされたことに対しても、自分の知り合いの夫なのだから、はっきりと断ればいいものを、流れに身を任せたままである。奈々瀬には、自我というものがないのだろうか。ここまで何もかも受身だと、奈々瀬に何かを仕掛けて来る相手は一人相撲を取っているように思えてしまうのではないだろうか。奈々瀬を見ていてイライラするのは、相手に一人相撲を取らせてしまっていることに鈍感だからだと思った。

 そんな奈々瀬を天井裏からこっそり覗く英則もまた、一体何を考えているのか。「俺はお前に復讐するぞ」と奈々瀬に言うのが口癖になっている英則だが、彼には奈々瀬に対するどんな恨みがあるのか。それは、物語の最後のほうで明らかになるのだが、そんな恨みもあっさり消え去るような一言をあずさが放つ。いやはや、面白い。英則をはじめとする個性豊かな登場人物を、役者さんたちが見事に演じ切っている。そして、映画の中で表現されている感情が愛情なのか憎しみなのか、だんだん区別がつかなくなる。何故なら、英則の憎しみはやがて愛へと変わり、あずさの番上への愛はやがて憎しみに変わるからだ。両者が距離を縮めれば憎しみはなくなり、両者の距離が離れれば愛も憎しみに変わってしまうということだろうか。

 本作の素晴らしいところは、登場人物のやりとりのテンポの良さだろう。台本で言うところのト書きに当たる部分の描写が特にいいのだ。会話のやりとりではなく、それぞれの間(ま)の取り方がいい。私が思わず声を出して笑ってしまったのが、英則の、
「救急車を呼べ!」
という台詞である。彼が天井裏に隠れている様子を窺っていることが他の人たちにわかってしまい、ひどくバツの悪い状況に陥っているところへ、あずさに危機が訪れる。そのタイミングで自らの立場を省みずに英則が、
「救急車を呼べ!」
と言ったのである。

 予告編には漫画が含まれていたので、本作の原作は漫画なのだろうかと思っていたが、どうやらもとは舞台劇らしい。なるほど、舞台劇ならば、間の取り方には充分気を遣うはずである。難しい間が台本として表現され、その台本を見事にこなした四人の役者さんたちと脚本家に大きな拍手を贈りたい。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 実際に、奈々瀬のような人物が私の周りにいたら、絶対にイライラするでしょうね。(苦笑)美波ちゃんは、良くもまあ、あんなにイライラするキャラクターを演じ切ったものだと思います。小池栄子ちゃんも、テンションの高いキャラクターを好演していました。一方、山田孝之くんは、最近の役柄ではありがちな役柄だったと思います。そして何と言っても浅野忠信さんですね。今年は彼の出演する作品をいろいろ拝見しましたが、どれを取ってもはまり役ばかりだったように思います。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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