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2010.12.02

映画『瞳の奥の秘密』

ホットヨガ(二一二回目)(前編)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 私たちは、誰かの口から語られる言葉が真実であるかどうかを、瞬時のうちに見極めていますよね。真実の言葉を語る姿は、単に見聞きした情報を右から左へと伝えようとしている姿とはまったく異なっています。前者は自分の中から言葉を生み出しているので、そこに語り手の感情が込められていますが、後者はそうではありません。ひょっとすると、カリスマ性というのは、自信を持って真実を伝えようとする姿から感じ取れるものなのかもしれません。

 またまた秀作に出会った。九月二十五日に鑑賞した本作である。スペインとアルゼンチンの合作映画である本作は、普段、あまり聞きなれない言葉で語られている。おそらくスペイン語なのだろう。

 本作は、実に様々な感情が入り混じった作品である。まずは、愛する妻を強姦され、殺された夫の悲しみ、そして犯人への憎しみ。その事件を担当することになった刑事裁判所の男性と女性上司が織り成す、表面的にはなかなか現れることのないお互いへの確かな愛情。更には、刑事裁判所で働く男と同僚との厚い友情。これほど様々な感情が詳細に表現された作品は珍しい。

 本作のユニークなところは、刑事裁判所を退職した男性ベンハミンにより、二十五年前に起こった強姦殺人事件が小説化されているところだ。その事件は、ベンハミンにとっては決して忘れ去ることのできない特別な事件なのである。おそらく、事件を小説化することによって、客観的に過去を振り返りたい気持ちもあるのだろう。興味深いことに、ベンハミンはその過程において、これまで明確に表現することのなかった女性上司であるイレーネへの想いを小説の中に間接的に盛り込むことになる。当時、その強姦殺人事件の謎に一緒に取り組んでいたベンハミンとイレーネは、お互いに相手のことを男女として大切に想い合いながらも、相手の立場を尊重するあまり、恋愛関係に至ることはなかった。「大人」である二人は、お互いへの想いを心の奥のほうに押し込んだまま、二十五年の歳月が流れてしまったのである。

 ベンハミンは、退職した刑事裁判所を訪ね、出来上がった小説をイレーネに読んでもらう。そのことにより、ベンハミンとイレーネの中に長いこと眠っていた感情が次第に表面化して来る。そうした繊細で心理的な描写にも強く心惹かれる作品でなのある。

 それだけではない。ベンハミンと同僚の男性との間に通う友情も素晴らしい。二十五年前の強姦殺人事件に関わったことが関連しているのかどうかはわからないが、ベンハミンの部屋で衝撃的な死を迎えることになってしまったベンハミンの同僚が、死の間際にベンハミンのことを想ってある行動を取ったかもしれないと想像すると、それだけで胸が熱くなってしまうのだ。

 愛する妻を強姦され、殺された夫モラレスの悲しみと、犯人への憎しみはとてつもなく根が深い。なかなか真犯人が逮捕されないため、モラレスは事件から一年経っても、根気強く駅に通い、真犯人を探し続けている。

 「何年経っても、人間はそうそう変わるものではない」というのが本作で表現されている根本的かつ共通のテーマと言えるだろう。そうした根本的かつ共通のテーマが、鑑賞する人たちの期待を置き去りにすることなく、満足の行く形で表現されている。

 本作は、本国のアルゼンチンで二〇〇九年に公開されるや、歴史的な大ヒットを記録したのだそうだ。確かにその通りの素晴らしい作品である。日本でも評価の高い作品ではあるのだが、これまたミニシアター系映画館で上映されている作品であるがために、上映されている映画館が少ないのが玉に瑕である。あまりにもそういう状況が続くと、だんだん日本の映画事情に腹が立って来る。多くの人たちに受け入れられやすいとは言え、世の中に出回っている映画が大雑把な作品ばかりでは、それらを鑑賞する人々の感情まで大雑把に形成されてしまうのではないだろうか。せっかく映画鑑賞に貴重な時間を費やすならば、本作のように、繊細な感情を育ててくれる作品に出会いたいものである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 私はある意味、こういう作品が歴史的な大ヒットを記録するアルゼンチンがうらやましいと思いました。二〇一〇年も残りわずかですが、今年は映画の当たり年だったように思います。本作を含め、様々な秀作に出会うことができました。考えてみると、映画館に足を運んで映画を鑑賞するという行為は、テレビにスイッチを入れて見る行為よりも、より能動的な行為ですよね。テレビを見ない分、テレビを介して多くの人たちが知り得る情報は知りませんが、この能動的な行為のおかげで、今年もたくさんの良い作品に出会うことができました。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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