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2010.07.09

青森~北海道、飛行機と寝台列車の旅(5)

映画『マイ・ブラザー』の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 本作に登場するサムの家族は、夫婦関係も親子関係も両立させている理想的な家族だと思います。日本の場合は、女性が子供を産んで母親になると、夫よりも子供のほうに強く愛情が傾きがちだと思います。その結果、夫は妻からの愛情不足を感じてしまい、ちょっぴりすねてしまったりしますよね。(苦笑)欧米の人たちは、スキンシップを中心とした愛情を、夫婦関係でも親子関係でも素直に表現できているので、映画を観ていても、とても気持ちがいいですね。日本人は、人を愛する気持ちを自分の内側に向かわせるタイプの人が多く、欧米人は、自分の外側に向かわせるタイプの人が多いのかもしれません。それでは、週末になりましたので、青森~北海道、飛行機と寝台列車の旅(4)の続きを書かせていただきます。

 「あおもりまちなか温泉」をあとにした私たちは、青森駅のほうへと足を向けながら、ガンモがインターネットで見付けたというほたて料理を食べさせてくれるお店を目指した。ところが、青森駅前にあるというそのお店の前まで来てみると、何やらお店の様子がおかしいではないか。ガンモがインターネットで調べた情報によれば、そのお店の営業時間は二十一時半までと書かれていたのだが、まだ二十一過ぎだというのに早くも閉まっていたのだ。

 せっかくのお店が閉まっていたため、私たちは諦めモードで青森駅周辺を彷徨っていた。すると、飲み屋街と思しきエリアの一角に、ほたて料理のちょうちんを掲げているお店を見付けた。珍しくガンモが積極的に動き、そのお店を偵察に行くと、中からお店の女性が出て来て、何分の列車に乗るのかとガンモに尋ねたようだ。

 ガンモが、
「二十二時四十二分です」
と答えると、その女性は、その列車が札幌に向かう寝台車付きの急行列車であることがすぐにわかったらしい。もうその時点で、私たちはそのお店でほたて定食をご馳走になると心に決めていた。おそらくそこが飲み屋さんも兼ねていたからだろう。お店の女性は、私たちに食事をするかどうか尋ねてくださったので、私たちは思い切ってほたて定食を注文した。

 どうやらその女性は、お店を切り盛りしている女将らしかった。女将は手際良くテーブルに備え付けのコンロに火を点けると、その上に新鮮で大きなほたてを四つ、でんでんでんでんと並べた。つまり、一人に付き二つの大きなほたてが割り当てられるということだ。そのほたてには、あらかじめこしょうなどの調味料が付けられていた。

 ほたての他には、白いご飯やお味噌汁、煮物、お漬物などが次々に運ばれて来た。女将が私たちに、
「ほたてはさっと火を通して食べてください」
とおっしゃったので、私たちは言われた通りにした。

 私たちは、大きなほたてと格闘しながら、名物のほたて料理をおいしくいただいた。大きなほたてはとても贅沢に感じられた。おいしいほたて料理をいただいている間、私は女将といろいろな話をした。女将には、私たちが「あおもりまちなか温泉」から歩いて来たことがすぐにわかったらしい。きっとこれまでにも、私たちがこれから乗車する予定となっている札幌行きの夜行の急行列車に乗車する前に、お風呂に入ってその日の汗を洗い流す人たちをたくさん見送って来られたのだろう。そして、女将もまた、およそ一日おきに「あおもりまちなか温泉」に足を運んでいらっしゃるそうだ。ただ、女将の場合は、朝六時過ぎなど、朝の早い時間に利用されているらしい。

 女将曰く、「あおもりまちなか温泉」は、お年寄りの利用客も多いらしく、時間がたっぷりあるために、お風呂を長く利用したお年寄りがしばしばのぼせて救急車で運ばれるケースも珍しくないらしい。

 女湯の脱衣場に救急隊員が入って来るときは、利用客みんなが大慌てで衣服を身に着けるのだそうだ。一部、女将の青森弁が正確に聞き取れないところもあったのだが、女将自身が笑っているところは笑うべきシーンなのだと理解し、女将に合わせて笑った。

 その後、寺山修司さんの話になった。私が、今回は三沢空港に着いたのに、寺山修司記念館に足を運ぶことができなくてとても残念だと言うと、かつて、女将の娘さんが寺山修司記念館を訪れようと試みたところ、公共の交通機関がなかったため、何と三沢駅から五十分も掛けて歩いてようやく辿り着いた話を聞かせてくださった。そして、女将の娘さんが目的の寺山修司記念館に着いてみると、館長さんに、
「今日はあなたが初めてのお客さんだ」
と言われたそうだ。そして、帰りは館長さんのご厚意で三沢駅まで車で送ってもらえたらしい。女将の娘さんは、寺山修司記念館はとてもいいところだったと褒めていたそうだ。

 その話を聞いた私が、寺山修司記念館に足を運べなかったことをまた残念がると、女将は、そうしてやり残しを作っておいたほうが、またそこを訪れるきっかけになるとおっしゃった。それはまさしく、私が普段から旅を続けながら思っていることと一致していた。おそらく女将は、このお店でいろいろな旅行者たちと会話を交わし、それら一つ一つを吸収されて来たのだろうと感じた。

 その後、太宰の話になった。私が以前、ストーブ列車に乗るために五所川原を訪れながらも、斜陽館には足を運ばなかったことを話すと、女将は斜陽館に展示されているという太宰の自宅の様子を話して聞かせてくださった。そこには、お父さん、お母さん、お兄さん、そして太宰というふうに、座る場所がきちんと決められた食堂の展示物があるらしい。私は、
「太宰は『人間失格』そのものなんですね」
と言った。何故なら、そうした光景を、映画『人間失格』で目にしたからだ。

 女将は、太宰はとても裕福な家庭に生まれたが、自分の人生がこのままではいけないと思っていたとおっしゃった。そして、何度も自殺未遂を図り、最終的には心中したとおっしゃった。私もそのことは知っていて、作品の中にもそうした自殺願望が表現されていると女将に言った。ガンモにとっては、寺山修司さんも太宰もそれほど身近な存在ではないので、私が女将と話をしている間、ずっと聞き役に回っていた。

 青森には、近々新幹線が乗り入れるようになるようだが、女将によれば、新幹線の駅となる新青森駅と青森駅は、JR線で七分ほど掛かるのだそうだ。しかも、新青森駅前にはホテルなどの施設が建設される予定はないらしい。そのため、新幹線の利用客はタクシーや路線バスなどを使って青森駅周辺のホテルを利用する可能性があるという。女将は、新青森駅から青森駅までのタクシー料金を現在の千六百八十円からもう少し安くして、路線バスの本数ももっともっと増やせばいいのにとおっしゃった。要するに、新幹線で新青森駅を利用した人たちにも、女将のお店のある青森駅前周辺に気軽に足を運んで欲しいというわけなのだ。そして、これから先、新幹線が北海道まで伸びるようになってしまうと、これまでのように、青森では途中下車せずに、直接北海道まで行ってしまう利用客が増えるのではないかと心配されていた。

 女将とあれこれ話をしているうちに、私たちがこれから乗車する急行はまなすの乗車時間にちょうどいい時間になって来たので、私たちは女将にお礼を言って店を出た。女将はわざわざ店の外まで出て、私たちを見送ってくださった。帰り際に女将が、
「旦那さん、しゃべらなくてずいぶん大人しいね」
と言った。私は笑ったが、ガンモは女将のお店を離れてから、
「俺は、寺山修司も太宰治もよう知らん」
と苦笑いしながら主張していた。

※少ないですが、撮影した写真のスライドショーを貼り付けておきます。なお、スライドショーが表示されない場合や、写真へのコメントをご覧になる場合は、青森~北海道、飛行機と寝台列車の旅(5)をご覧ください。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ガンモが下調べをしておいた銭湯は現役を退いていましたが、それでも「あおもりまちなか温泉」に辿り着くことができたように、ガンモが下調べをしておいたほたて料理のお店は、その日の営業を終了していましたが、話し上手な女将のいるほたて料理のお店に辿り着くことができました。ガンモも、「今回の旅は、下調べをしておいたお店には辿り着けないけど、あとからちゃんとリカバリができている」と言っていました。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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