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2009.12.26

相乗り(後編)

相乗り(前編)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m たくさんの方たちから応援クリックを賜り、心より御礼申し上げます。見知らぬ者同士が会話を始めるときには、互いに相手を知ろうとする気持ちで開かれていますね。互いに、開かれたところに向けて話し掛ける、すなわち、受け皿があるところに向けて語り掛けるので、コミュニケーションが円滑に進むようです。しかし、知り合ってから時間が経ってしまうと、この受け皿が閉じられてしまうことがありますよね。見知らぬ人とのコミュニケーションがはずむと、受け皿を閉じてしまうことがコミュニケーションを円滑に進められない原因だとわかりますね。

 言うまでもなく、外は一面の雪景色だった。旭川に雪が降り始めたのは、私たちが旭川を訪れるほんの二、三日前のことだったらしい。南国育ちの私たちに冬の旭川らしさを見せるために、慌てて雪化粧をしてくれたのだろうか。

 タクシーは、雪道を軽快に走った。私たちの住んでいる地域では、雪が降るとタイヤにチェーンを巻くが、北海道の人たちは、雪が降ってもわざわざタイヤにチェーンを巻いたりはしない。靴同様、タイヤにも最初からすべり止めが施されているのだろう。旭川空港までの道のりを何度も何度も往復している運転手さんは言う。
「ときどき、道路脇に車が刺さってるんだよねー」
刺さっているとはつまり、雪でスリップした車が道路を外れて、それ以上、動けなくなってしまったことを指している。運転手さんは、あたかもそれが日常茶飯事であるかのような口調だったので、北海道では例えすべり止め加工されたタイヤを使用していたとしても、車が雪道をスリップするのは決して珍しくはないのだろう。

 タクシーが旭川駅を出発してから二十分ほど経った頃だろうか。運転手さんは、あと十分で空港に着くとおっしゃった。この先は、高速道路を走るのだと言う。私は、実際に高速道路があるのかと思ったのだが、実は空港の手前まで続くまっすぐな道を、運転手さんが高速道路と呼んでいるだけだということがわかった。同乗した女性もご自分で車を運転されるらしく、その高速道路のことを良くご存知だった。

 いよいよタクシーは、その高速道路に入った。確かに、どこまでも続いて行くかのようなまっすぐな道が伸びている。私は自動車の運転免許を持っているわけではないが、雪がなければ、きっとスピードを出したくもなるだろう。実際、雪がない時期に、この道を高速で走り抜ける人たちが多いので、高速道路と呼ばれているらしい。運転手さんは、気合を入れて、慎重にスピードを上げた。

 雪で覆われたまっすぐな高速道路を、タクシーが高速で走り抜けて行った。私は、雪が降っていなくても、高速で走る車に乗るのはあまり好きではない。しかし、このときばかりは、タクシーの運転手さんに対する絶大な信頼感があった。

 高速道路を走っているとき、気になっていたことをもう一つ、切り出してみた。映画『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』を鑑賞したとき、旭川市に女性市長さんが選任されたようなので、現在の市長さんも女性なのかどうか、尋ねてみたのだ。ところが、現在の旭川市長さんは四十一歳の若い男性の市長さんだと言う。その市長さんが一期目だとおっしゃるので、映画『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』に忠実であるならば、おそらく前市長が女性でなければならない。しかし、過去に女性が旭川市の市長さんに選任された形跡もなさそうだった。ということは、映画『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』は、映画用にある程度の脚色が施されていたのかもしれない。

 確かに、実際に旭山動物園を訪れてみると、映画『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』の描写と現実では異なる部分もあった。例えば、私たちが次なる宿泊先の無料送迎バスを待つことになった東門の手前にある長い階段を降りることで、あたかも旭山動物園の出口に向かっているかのように描写されていたが、実際は階段を降りるのではなく、昇ることで出口に向かうようになっている。退職の日に園長が旭山動物園を去って行くシーンでその階段を降りているのだが、階段を降りるということは、東門から旭山動物園の中に入ることになってしまうのだ。そうした描写と同様に、女性の旭川市長の誕生も映画の脚色だったようである。

 話をしているうちに、タクシーは旭川空港に到着した。旭川駅前を出発してから、およそ三十分程度で空港に到着したことになる。路線バスを利用していれば、四十五分は掛かったはずである。楽しい会話も付いて、十五分もの節約になった。

 私たちは最初の約束通り、一人五百七十円をタクシーの運転手さんに支払った。同乗した女性は、これからもタクシーを利用される機会があるので、タクシーの運転手さんから名刺をもらっていた。どうやら、私たちの分をもらってくださっていたようで、女性は、あとからその名刺の一枚を私に手渡してくださった。見ると、運転手さんの携帯番号が書かれていた。

 女性が利用することになっている中部国際空港行きの飛行機の離陸まで、もうあまり時間がないと思ったので、女性とは互いに名乗り合うこともなく、そこで分かれた。しかし、中部国際空港行きの飛行機が遅れていたようで、その後、空港内の売店で女性と再会したところ、
「これ、富良野の牛乳プリンです。とってもおいしいので、よろしければ飛行機に乗る前にお二人で召し上がってください」
と言われ、お土産をいただいてしまった。何と、タクシーで相乗りしただけの私たちに、わざわざ北海道のお土産をくださったのだ。私は、予想外の展開に驚いたが、せっかくのご厚意を無駄にしてはいけないと思い、ありがたく頂戴した。中を開けてみると、ふらの牛乳プリンのほかに、六花亭のお菓子まで入っていた。再びお会いできるかどうかもわからないのに、ここまでの気遣いをしてくださるとは、本当にありがたいことである。

ふらの牛乳プリン

六花店のお菓子

 寒波の影響なのか、私たちが利用する大阪・伊丹空港行きの飛行機もまた遅れていた。そのため、私たちは旭川空港で長い時間を過ごした。女性にいただいたふらの牛乳プリンを冷たいうちにいただいたところ、とてもおいしかった。筋腫があるため、乳製品は極力控えたいところだったが、そんな決意のために失うものが多過ぎてもいけないのだ。

 旅行を楽しむ人にとって、最も思い出に残るのは、地元の人たちとの直接的な触れ合いであるように思う。旅行者は、そこにずっと住んでいる人たちと触れ合うことにより、その地域の仲間に一瞬でも加わったような気分を味わうことができるのだ。おそらく、あちらこちらへの旅を重ねて来られた女性もまた、そのことを身をもって体験されて来たのではないだろうか。二泊三日の旅行で、最後にとても貴重なプレゼントをくれたタクシーの運転手さんと、同乗した女性にお礼を言いたい。かけがえのない、素敵な時間をどうもありがとう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今回のように、タクシーの運転手さんが複数の乗客に相乗りを勧めるのは違法のようですね。しかし、もしも私たちがそのルールを重視して相乗りを拒否すれば、このような素晴らしい体験はできなかったのです。あまり羽目を外し過ぎるのも考えものですが、自分の責任の及ぶ範囲でちょっとした冒険をしてみることで、新しい発見があることな間違いないようですね。気付きとは、常に何かを越えて行くことで訪れているような気がします。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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