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2009.11.21

映画『空気人形』

誇り高き鳥羽水族館(2)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 動物に芸をさせるというのは、きっと賛否両論あるでしょうね。私も、それについては考えます。以前、人間の娯楽のために馬を走らせる競馬が好きではないと書きましたが、動物に芸をさせることもまた、人間に娯楽を与えることが目的なんですよね。人間に囲われることで、動物は自由を失ってしまいますが、その代償として、安定した餌を得ることができます。果たして、動物と人間は、どのように共存すべきなのでしょうか。いろいろ考えてしまいます。

 本作を鑑賞したのは、今から一ヶ月以上も前の十月九日のことである。またしても、見応えのある作品に出会ってしまったという感想を抱いている。鑑賞し終わったあとも、長い間、映画の余韻を引きずり続けていた。もしかすると、今年一番、心を揺り動かされた作品かもしれない。ちなみに本作は、かつて胸をかきむしられるような気持ちにさせられた映画『誰も知らない』の是枝裕和監督の作品である。

 本作が劇場公開されることは、いつも足を運んでいる映画館に提示されていたポスターやチラシなどを介して、ずいぶん前から知っていた。実は、映画『ハッピーフライト』をガンモと一緒に劇場で鑑賞したとき、ガンモはグランドスタッフの一人を演じていた女優さんのことが気になったらしい。そして、本作のポスターやチラシを見たとき、私はてっきり映画『ハッピーフライト』でグランドスタッフの一人を演じていた女優さんが主演する作品なのだと思い込んだ。

 ところが、ガンモにそのことを伝えるために本作のチラシを持ち帰ると、チラシに写っているのはそのときの女優さんではないとガンモは言う。しかも私は、そのチラシを良く見ていなかったので、空気人形が一体何を意味するのかということを、本作の劇場公開後、早々と鑑賞された方のレビューを拝見して初めて知ったのだった。

 空気人形とは、男性の性欲処理のために作られたリアルドールである。空気で膨らませて使うタイプのものらしい。そう言えば、少し前に、等身大のリアルドールと一緒に暮らす男性を描いた映画『ラースと、その彼女』という作品を鑑賞した。女性とうまく交流できない男性が、自宅でリアルドールを椅子に座らせ、一緒に食事をしたりする作品だった。本作でも、古びたアパートに住む男性がリアルドールを椅子に座らせ語り掛けていたので、映画『ラースと、その彼女』と同じような展開になるのだろうか、もしそうなら、同じような作品は観たくないなどと思っていた。

 しかし、そんな私の思いは瞬く間に吹き飛んだ。何故なら、空気人形の主人が仕事に出掛けたあと、空気人形がむっくりと起き上がり、活動をし始めたからだ。その意外性に驚き、私はすぐに作品の世界に引き込まれた。

 空気人形はメイド服を身に纏(まと)い、主人のいない間に街を歩き回り、街の人々と交流を持ちながら、世の中の仕組みを理解しようと試みる。そして、主人が帰宅する前には家に戻り、何食わぬ顔でベッドに横たわっていたりする。やがて、大胆にもレンタルDVDショップでアルバイトを始めたりもするものだから、主人の帰宅時間よりも前に空気人形が確実に帰宅することができるのかどうか、冷や冷やもする。何という面白さだろう。

 ただ、主人が空気人形とセックスをするシーンはあまりにもリアルで、女性である私としては大変ショックを受けた。主人は空気人形をとても大事に扱ってはいるのだが、明らかに、これまで私の体験して来たセックスとは違うのだ。もちろん、相手が人形なので、互いの気持ちが通い合っていないこともあるのだが、行為そのものが男性主体で一方的なのだ。つまり、空気人形は常に、主人の行為を一方的に受けるだけである。空気人形が自分から主人に働きかけるわけでもなければ、空気人形が主人に対して情熱を傾けるわけでもない。それでも主人は満足しているのだ。

 空気人形とのセックスシーンを通して私が感じたことは、どうやら空気人形自身も感じている。何故なら、空気人形がむっくりと起き上がったときから、彼女は心を持ったからだ。自分が常に受身であり続けるということ、セックスの対象が自分が想いを寄せている男性ではないことに気付いてしまうのだ。空気人形がそのことに気付いたのは、レンタルDVDショップで働いている同僚の男性に恋をしたからなのだが・・・・・・。

 やがて空気人形は、自分が何かの代用品であることを強く意識するようになる。主人にしても、レンタルDVDショップで知り合った男性にしても、本当に好きな女性は他にいるはずなのに、その人との関係を継続させることができなくなってしまったために、代用品として自分が求められているのではないかと感じるようになるのだ。空気人形が悩みを抱ええるなんて、実に奥深いではないか。

 空気人形を演じているのは、映画『グエムル -漢江の怪物-』で怪物に捕らわれた妹役を演じていたペ・ドゥナである。女性の私から見ても、彼女の裸体はとても美しい。あれほど美しい裸体ならば、人生そのものが大きく変わってしまうだろう。映画『グエムル -漢江の怪物-』を鑑賞したときは、まだ中学生くらいの女性だと思っていたが、あれから三年ほどしか経っていないというのに、これほど成長されたとは驚きである。彼女の低い声で発声される日本語や、世の中の様子を窺うような歩き方もまたいい。

 それにしても、一体、どうしたらこのような興味深い作品を生み出すことができるのだろう。私は、本作の作り手の感性にいたく刺激されてしまった次第である。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 鑑賞したあと映画館を出るときに、自分が空気人形のような歩き方をしていることに気付きました。歩き方にも影響を与えてくれましたが、人として生きて行くのに、今後も何らかの影響を与えてくれる作品だと思います。九月の終わりに公開された作品ではありますが、まだまだ劇場公開中の地域もあるようですね。もしもまだご覧になっていない方がいらっしゃいましたら、私が自信を持ってお勧め致します。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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» 映画『空気人形』(お薦め度★★) [erabu]
監督・脚本・編集、是枝裕和。原作、業田良家『ゴーダ哲学堂 空気人形』。2009年 [続きを読む]

受信: 2009.11.22 19:02

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