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2009.09.19

すずらんの湯(15)

すずらんの湯(14)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m これまで、すずらんの湯の入口の四季折々の写真を撮影して来ましたが、この日は、撮影している間も利用客の足が途絶えることがありませんでした。すずらんの湯の入泉料は、休日は少々高めの九百円となっています。それにも関わらず、多くの人たちが訪れているのですから、人々に愛されている数少ない日帰り温泉であると言えます。私の職場近くにあった日帰りラジウム温泉は、すずらんの湯と同じくらいの入泉料でしたが、利用客が少なかったのか、閉館してしまいました。日帰り温泉が多くの利用客で賑わうかどうかは、ある意味、掛けなのかもしれませんが、すずらんの湯は、露天風呂にしても、できる限り自然を活かした設計になっているところが人気の秘密なのかもしれません。

 酵素浴を利用するにあたり、ガンモにはあらかじめ、酵素浴に関する簡単な説明をしておいた。
「酵素浴はね、先にお風呂に入って身体を温めたあと、脱衣場で館内着に着替えて、別の場所に移動してから利用することなるから。酵素浴は個室で行われるんだけど、個室に案内されたら、係の人がいったん部屋を出て行くので、一人になったら館内着を脱いですっぽんぽんになって、酵素の入った米糠の中に横たわるから。米糠は、木の箱の中に入ってるから」
ここまで説明するとガンモは、
「ちょっと待って。その木の箱って棺おけじゃないの?」
などと言った。私は、
「違う、違う。棺おけじゃないよ。そして、係の人がまた戻って来るまでに、気になるところ、見られて恥ずかしいところに自分で米糠をかぶせておくから」
と付け加えた。ガンモはそこで笑いを取ろうと思ったらしく、
「わかった。じゃあ、前シッポのあたりを思い切り盛り上げとくから」
と言った。私は笑いながら、
「いやいや、必要以上に盛り上げなくていいよ」
と答えた。ガンモは更に、
「酵素浴って、二人で一緒に一つの木の箱の中に入れないの?」
と聞いて来た。そう、かつて私たちは、寝台列車に乗って旅をしていたとき、一つの寝台に身を寄せ合って眠ったことが何度かある。それと同じ感覚で、酵素浴も二人で一緒に体験できないかとガンモは思ったらしい。私は、ガンモと一緒に一つの木の箱の中に入っていることを想像してみたが、おそらくそのような提案しても係の人を困らせてしまうだろうし、私たちが一つの木の箱の中に一緒に入ったとしたら、酵素浴どころではなくなる気もしていた。私は、
「いや、二人一緒には無理だよ、きっと」
と答えた。

酵素浴の利用券

 私たちは、酵素浴の受付である健(スコヤカ)カウンターに移動し、名前を告げて受付を済ませた。ガンモには、
「酵素浴は喉が渇くので、先にお水をたくさん飲んでおいたほうがいいから。私は個室に水を持って行くけど、ガンモはどうする?」
と尋ねた。私は、もはや勝手知ったる何とかで、健(スコヤカ)カウンター横にある水の入った樽の中からコップに水を注ぎ、ひとまず口に含んだ。そして、再びコップの中を水で満たして、備え付けのお盆の上の上に載せて個室に持参する準備を整えた。ガンモは、コップに注いだ水を口に含んだものの、部屋にはコップを持って行かないと言った。

 間もなく、私たちの名前が呼ばれ、私たちはそれぞれ隣同士の個室に案内された。既に私が何度も利用しているので、係の方は私たちがリピーターだと思ったらしい。私はそれでいいのだが、ガンモにとっては初めての酵素浴となるので、酵素浴に関するガンモへの説明がちゃんと足りていたかどうか、少し不安になっていた。酵素浴は最大十五分間利用できるのだが、そのときの自分の体調によって、利用時間を調整することができる。私はこれまで、ひとまず十分で様子を見て、十分後に係の人が現れたとき、
「あと五分お願いします」
と、分割式で合計十五分の酵素浴を受けていた。ガンモにもそのことを説明しておいたのだが、もともとガンモは熱いのが苦手なので、
「いや、俺は最初は五分でいいよ」
などと言っていた。酵素の温度はだいたいいつも六十度前後なのだ。

 これまで私は、十五分の酵素浴を受けて問題がなかったので、今回は思い切って、
「十五分通しでお願いします」
と言ってみた。そのほうが、酵素浴に集中できるのではないかと思ったのだ。係の人が私の身体に米糠をまんべんなく掛け終わって個室から出て行くと、いつものように静寂が広がった。隣の個室にいるガンモは、問題なく木の箱の中に横たわっているのだろうか。私はたまらず静寂を打ち破り、隣の個室にいるであろうガンモに向かって、
「ガーン?(ガンモの愛称)」
と呼び掛けた。すると、何やらかぼそい声で反応があった。
「大丈夫なの?」
と尋ねると、ガンモは何か答えてくれたようだが、声がくぐもっていて、良く聞き取れなかった。何とかガンモも木の箱の中に大人しく横たわっているのだろうと思い、私は自分の酵素浴に集中した。

米糠の入った酵素浴の木の箱。決して、棺おけではない

 しばらくすると、受付でセットされたタイマーの音が鳴り、係の人が廊下を走って来られた。どうやらガンモの部屋に入って行ったらしい。ガンモはやはり、五分の利用時間で挫折してしまったのだろうか。そんなことを思っていると、間もなく、隣の部屋からシャワーを使う音が聞こえて来た。ガンモは酵素浴の熱さに耐えかねて、十五分間たっぷり酵素浴を利用することなく、最初の何分かで終了してしまったらしい。

 私は、隣の個室のシャワーの音に惑わされないように、酵素浴に集中しようとした。しかし、やはり、隣の個室のガンモのことが気になって、もはや酵素浴に集中することができなかった。そうこうしているうちに私も終了時間を迎え、個室に現れた係の人に酵素浴の終了を告げられた。私はよろよろと起き上がり、米糠を手で払ってシャワーを浴びた。たっぷり汗をかいて喉が渇いていたので、個室に持ち込んだ水を一気に飲み干した。

 米糠を洗い流したあと、再び館内着を身にまとい、休憩所を訪れると、先に上がったガンモがくつろいでいた。ガンモに、
「五分で断念したの?」
と尋ねると、
「いや、十分だよ。酵素浴、あちい」
と言った。五分間ではなかったものの、やはりガンモには十五分間の利用には耐えられなかったようである。しかも、ガンモは、
「何か、心臓に負担が掛かったのか、心臓がギューっとなったから怖かった」
と言った。以前も書いたが、私たちは鹿児島の指宿温泉や大分の別府にある竹瓦温泉で砂むし風呂を体験したことがある。そのときは確かに、水分を含んだ砂の重みで心臓に負担が掛かる感覚があったのだが、酵素浴で使われている米糠は、水分を含んだ砂よりもずっと軽く、心臓には負担が掛からないはずだった。しかしガンモは心臓が圧迫されるような感覚を味わって怖くなり、最初の十分間だけでやめておいたのだそうだ。

 その後、私たちは脱衣場に戻り、着替えを済ませてから再びロビーに集合した。そしてすずらんの湯をあとにしたわけだが、お風呂に入って酵素浴も受けてすっかりお腹が空いていたので、途中で夕食をとってから帰宅することにしたのである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m どうやら酵素浴は、ガンモの体質には合わなかったようです。むしろ、酵素浴を受けて、心臓がギューっと反応したことのほうが心配であります。人によって、敏感な部分とそうでない部分があるのですね。そう言えば、以前、私が湯治に出掛けていた三朝温泉の株湯を訪れたときも、ガンモは熱い、熱いと言って先に出てしまいましたし・・・・・・。(苦笑)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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