「念のため」という名目
※映画『アフター・ウェディング』の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m ヤコブがデンマークに滞在し続けるという状況が、ヨルゲンによって半ば強制的に成し遂げられたという感は否めなかったのですが、それもヤコブの運命だったのかもしれません。マッツ・ミケルセンがこれからどんなおじさんになって行くのか、楽しみでもありますね。(笑)
あれは確か、二日間に渡って大阪で行われた、好きなアーチストのコンサートの二日目の夜の帰り道のことだった。会場からパワーをもらってすっかり元気になっていた私は、コンサートに出掛ける前に書き上げた「ガンまる日記」の記事を、まだ推敲していないことがとても気になっていた。
自宅の最寄駅を降りて、自宅近くまで自転車を走らせたものの、ガンモは仕事で夜中まで家にいないことがわかっていた。時計は既に二十二時半頃を指していたが、私は自宅近くのスーパーにある駐輪場に自転車を止めると、おもむろにノートパソコンを取り出して、「ガンまる日記」の管理画面にアクセスし、記事を推敲し始めた。怪しいと思われるかもしれないが、私にとってノートパソコンを開くことは、携帯電話を開くのと同じくらい自然なことなのだ。
もちろん、自宅近くのスーパーは既に閉店していたが、明るいライトの下だったので、辺りはそれほど暗くはなかった。また、その日の日中は暑かったが、夜風が吹いていてとても涼しかった。
すると、どこからともなくパトカーがやって来て、私のいるスーパーの前に止まった。そして、中から制服を着た警察官が二人降りて来て、私のところまでツカツカと歩いてやって来た。「ひょっとして、生まれて初めての職務質問を受けるのだろうか?」と私の胸は高鳴った。予想通り、警察官の一人が私に声を掛けて来て、ここで何をしているのかと尋ねた。私は、自分の書いたブログで気になるところがあるので手直ししているのだと答えた。するとその警察官は、
「未成年というわけでもないので、あまりうるさくは言いませんが、このあたりは物騒なのでね」
と言った。ただ、これだけでは、警察官が私に対して何を言いたいのか、良くわからなかった。
警察官は、私が持っている荷物に目を留め、荷物が多いことを指摘し、これから出掛けて行くところなのか、それとも帰るところなのかと尋ねて来た。まさか、家出少女だと思われてしまったのだろうか。私は警察官に、これから帰宅するところだと答えた。その後、警察官は私に、
「念のため、お名前を確認できるものを拝見できますか?」
と言って来た。私は、
「怪しいですかね?」
と言いながら、ここで渋っていてはいよいよ怪しまれると思い、健康保険証を取り出して警察官に見せた。運転免許証を持っていない私は、不在時に届いた郵便物を郵便局で受け取るときも、健康保険証を提示している。警察官は私の提示した健康保険証を見て、私の住所と名前を控えたようだ。
続いて警察官は、私が乗っている自転車に目を向けた。
「これはあなたの自転車ですか?」
と言う。私はもちろん、
「はい、そうです」
と答えた。
「最近、ひったくり事件もたくさん発生しているので、自転車の前かごに物を入れるときは気をつけてください」
と警察官は言った。私はそのとき、自転車の前かごにバッグを入れていたが、バッグの取っ手を自転車のハンドルに引っ掛けることで引ったくり対策をしていると答えた。
その後、警察官の鋭い目は、私の自転車に固定の鍵がないことをキャッチしたらしい。
「念のため、自転車の防犯登録を確認させていただきますが、よろしいですか? 自転車に固定の鍵がない場合、確認させていただくことになっていますので」
と言う。私は、
「いいですよ。どうぞ」
と答えた。すると警察官は、無線を使って私の自転車の防犯登録のナンバーとともに、さきほど提示した健康保険証に記載されていた私の名前を無線の相手に伝えた。私が乗っている自転車は、十年近く愛用しているものだが、前輪に付いていた固定の錠前に付属の小さなキーを二つとも失くしてしまったので、ガンモに錠前を壊してもらったのだ。私は、
「この自転車は○○で購入したものです。固定の鍵がないのは、キーを二つとも失くしたからです」
と説明した。警察官はそれに対し、無言でうなずいていた。
しばらくすると、私の自転車の防犯登録のナンバーの確認が取れたようだった。無線で連絡を受けた警察官は、
「了解です」
と言って、無線をオフにした。警察官は、
「防犯登録の確認が取れましたが、とにかくこの辺りは物騒なので、気をつけてください」
と私に言った。どうやら収束モードのようだ。私は、「これでようやく釈放されるのだろうか?」と思った。
私は、
「じゃあ、もう帰ります」
と言って、開いていたノートパソコンを閉じて帰り支度を整えた。警察官もパトカーに戻り、更なる警備を続けたようだ。
それにしても、これら一連の出来事は、一体何だったのだろう? 私は、夜遅い時間帯に女性が一人でいることで保護されようとていたのか、それとも、荷物が多いためにその行動を怪しまれ、自転車泥棒の疑いを掛けられたのか、果たしてどちらなのだろう? 警察官の言った、「念のため」とは、どのような意味を持っていたのだろうか? 私には、警察官があたかも夜遅い時間に一人でいる女性を保護しようとしているかのように見えて、実は私の行動を疑い、防犯の取り締まりをしていたように思えてならないのだ。
私は、仕事から帰宅したガンモに、興奮気味にこのことを語った。そう言えば、以前、ガンモも私と同じようなことを体験している。ガンモの場合は、仕事で帰りが遅くなり、深夜に仕事で使っている大きな荷物を自転車の前かごに乗せて走っていると、パトロール中の警察官に呼び止められたのだ。ガンモも私と同じように、自転車に付属の錠前のキーを失くしてしまったので、固定の鍵の付いていない自転車に乗っていた。大きな荷物を持っていたことと、自転車の固定の鍵が壊れていたということで、警察官に疑いを掛けられたようだ。ガンモ曰く、夜中に大きな荷物を持っていたので、泥棒と間違われたのだろうということだった。
私は、パトロール中の警察官に対し、声を大にして言いたい。夜の遅い時間に大きな荷物を抱えて、固定の鍵のない自転車に乗っている人が必ずしも怪しい人というわけではない。それぞれの事情で大きな荷物を抱えている人もいるし、何らかの事情で、自分の自転車の固定の鍵を壊して乗っている人もいるのだ。また、あたかも携帯電話を開くかのように、ノートパソコンを開く人だっているのだ。それらの人たちを最初から怪しいと決め付け、「念のため」に職務質問するというマニュアルを、そろそろ書き換えたほうがいいのではないだろうか。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m こういうときは、「念のため」という言葉は便利なのでしょうね。でも、冷静になって考えてみると、「念のため」と言われながらも、行動を疑われていたわけです。私たちのような善良な(?)市民に声を掛けるよりも、もっと他に声を掛けるべき対象がいるでしょうに。(苦笑)しかし、これを逆手にとらえると、私たちの住んでいる地域がそれだけ平和ということなのでしょうか。そのように前向きにとらえることにします。(苦笑)
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