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2008.08.03

温度差十六度

トントン拍子の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 何はともあれ、こうして私たちの夏休みが始まりました。これからしばらくの間、パリから「ガンまる日記」をお届けしますね。

 某ラウンジを出て、いよいよ搭乗開始という段階になって、ガンモが、
「航空券がない!」
と言い出した。さきほど、某ラウンジを使用するにあたり、パスポートと航空券を提示したのだが、そのあと、某ラウンジに航空券を置き忘れてしまったのだろうか。ガンモは血相を変えて某ラウンジまで戻り、航空券の忘れ物がないか確認した。ところが、私が冷静にガンモの持ち物をチェックしてみると、ガンモの航空券はちゃんと見付かったのだ。私はすぐにガンモに電話を掛けて、ガンモを呼び戻した。搭乗直前になってこのようなハプニングが発生するとは思いもよらなかったが、気を引き締めるきっかけを与えてくれたと解釈することにしよう。

 私たちが搭乗した飛行機は「パネルクイズ アタック25」でおなじみのAIR FRANCEである。飛行機は夏休みをフランスで過ごす人たちやフランスに帰るフランス人たちで満席だった。私たちの席は、狭い狭いエコノミー席である。三人掛けの席に、ガンモが最も奥の窓際で、私が真ん中、私の右隣に六十歳くらいの日本人女性が座っていた。

 国際便を利用するときに楽しみなのは、それぞれの座席の前に取り付けられている個人ビデオの鑑賞である。劇場公開中に見逃してしまった映画や、時には日本では未公開の映画も上映されていることもあり、疲れを感じていても映画を鑑賞したい私にとっては、更に寝不足を促す必須アイテムとなっている。今回も、それぞれの席に個人ビデオが備え付けられていたのだが、どういうわけか、ガンモの席の個人ビデオも私の席の個人ビデオも調子が悪く、一部の機能しか使えなかった。特に、ガンモの席に取り付けられていた個人ビデオに至っては、表示すらされないこともあり、ゲームをして楽しみたいと思っていたガンモは、ひどくがっかりしていた。それでも、これは私たちにわざわざ睡眠時間を与えてくれるために壊れていたのだと思い、私たちは寝不足を解消すべく、できる限り眠った。おかげで、狭いながらも、十二時間足らずのフライト中に四時間程度は眠ることができたと思う。

 それにしても、十二時間というのは長い。十二時間も経てば、コンタクトレンズもしょぼしょぼして来るし、トイレに立つにも、隣に人が座っていると思うと遠慮する。一番奥に座っていたガンモが、トイレに行きたいと私に耳打ちして来たのだが、隣の女性が眠っていたので、しばらく我慢することになってしまった。しかし、とうとう意を決して話し掛けたおかげでその女性とのコミュニケーションが始まり、いつでもトイレに立ち易い状況となった。その女性は、娘さんたちと一緒に個人旅行に来られたそうだ。

 途中、飛行機がかなり揺れて怖い思いもした。シートベルト着用のサインがなかなか消えないので、トイレに立つのも更に憚(はばか)られたのだが、生理的欲求には適わない。そこで、シートベルト着用のサインを無視して立ち上がり、トイレ待ちをしていると、乗務員の黒人男性に英語で話しかけられた。その内容によると、
「今はシートベルト着用のサインが付いているので、席に戻ってください」
というものであった。私はそれに従い、いったん席に戻ったのだが、隣の女性に再び立っていただくのも申し訳ないと思い直し、もう一度、恐る恐るトイレの前に戻った。すると、さきほどの乗務員の黒人男性に見付かってしまい、
「はあー」
と溜息をつかれてしまったのだ。実は、私がトイレの前に戻る前にも、別の日本人女性がシートベルト着用のサインを無視してトイレに立ち、その乗務員の黒人男性に注意を受けていた。しかし、その日本人女性は、彼の言うことを無視してそのままトイレを利用した。おそらく彼の溜息は、そうした背景もあってのことだと思う。今回は、注意ではなく、溜息だけで済んだので、私も彼女と同じように図々しくトイレ待ちを続けて、めでたく用を足した。

 こうして飛行機は、揺れを続けながらも何とかシャルル・ド・ゴール空港に着陸した。着陸前にアナウンスが流れて驚いたのだが、パリは夕方で気温は何と十八度なのだそうだ。日中の最高気温が三十四度くらいの日本から、いきなり十八度のパリに着いてしまった。気温差十六度である。半袖でも大丈夫だろうかと心配になっていたが、実際に降り立ってみると、それほど寒さは感じなかった。

 空港に降り立った感じは、去年、イギリスのヒースロー空港に降り立ったときの感じとまったく異なっていた。ヒースロー空港では、入国審査のために二時間も待つことになってしまった。待ち時間が長く、かなりのストレスを感じてしまったのだが、フランスの入国審査は、待ち行列もなく、何と、入国審査が行われる場所には私たち以外の旅行者は誰も居なかった。入国審査の前にトイレに行ったため、同じ便で到着した方たちよりもかなり遅れて入国審査を受けることになったのだ。フランスの入国審査は至って簡単なもので、何も質問されず、パスポートに入国の記しを示すスタンプも押してはくれなかった。ガイドブックにもそのようなことが書かれていたので、「スタンプを押してください」と言おうとしているうちにパスしてしまい、とうとう言い出せなかった。

 私たちは、何だか拍子抜けしたような感覚だった。外国人入国者に対し、念入りにチェックするイギリスとは異なり、パスポートをただ眺めるだけで何も言わないフランス。フランスはきっと、カムカムエブリバティの国なのだろう。私たちは、フランスに対して自由な国という見方が強まった。

 シャルル・ド・ゴール空港からは、鉄道のRER B線を利用してパリ市内へと向かった。実は私たちは、フランス国鉄の三日間乗り放題切符を持っているのだが、その切符を持っている人への特典として、RERの窓口で無料の乗車券を発行してもらえることになっていた。そのチケットを発行してもらうために、窓口の列に並び、何とかその無料乗車券を発行してもらうことができた。

 さて、RER B線に乗車すると、私たちが乗車した次の駅からサックスを持った男性が乗り込んで来た。リュックサックではない。楽器のサックスである。扉が閉まるとその男性は、乗客に向かって、
「ボンジュール、何とかかんとか」
と言って、いきなり列車の中でサックスを吹き始めたのだ。あまりにも突然のことに驚いたが、私にはそれが何を意味しているのかすぐにわかった。演奏後、サックスの演奏を聴いた乗客に、カンパをお願いするのだろう。予想した通り、男性は一曲だけ演奏すると、カンパを要求して来た。私たちはその要求を断った。他の乗客も同様に、誰一人、彼にカンパをする人はいなかった。フランスは、生きるために身体を張る国なのだろうか。気のせいか、彼の吹いたサックスは、どこか物悲しげな雰囲気が漂っていた。

 列車の窓から見える景色を見て、最初に感じたのは、アート的な文字の落書きが多いということだった。列車から見える、ありとあらゆる建物にはアート的な文字の落書きが施されている。それらのアート的な文字の落書きに一体どのような主張がなされているのか、フランス語に疎い私たちには良くわからなかった。

 私たちは、映画『アメリ』にも登場する北駅で降りた。その周辺のホテルに五泊するためである。ガイドブック等には、そのあたりの治安はあまりよろしくないと書かれている。降りてみると、確かに上品な感じとは言い切れなかった。また、フランス人よりも、他国からやって来た人たちが多いように思えた。北駅というのは、フランス語では、GARE DU NORDだが、パリの北側という意味ではなく、北に向かって走る列車が発着しているところなのだそうだ。街の雰囲気や駅の性格からも、私は東京の上野駅に似ていると感じた。変に気取っていないところが、かえって庶民的でいいのではないだろうか。

 私たちはホテルにチェックインしたあと、ホテル周辺を少し歩いた。飛行機の中で夕食も食べていたが、お腹が空いていたので、地元の人たちが利用するスーパーに入り、パンやお惣菜などの食料品を調達した。どこかで何かを食べるほどではなく、ちょっとしたものを挟んでサンドイッチを食べたかっただけなのだ。価格は、ロンドンの物価の高さからすると、比較的安かった。例えば、二リットル入りのジュースが一ユーロ(日本円でおよそ百七十円くらい)にも満たない。一リットル入りの牛乳も日本と同じくらいの値段だ。スーパーで購入したパンとお惣菜で作ったサンドイッチは、驚くほどおいしかった。

 ところで、現在のパリの日の入りはだいたい午後九時くらいである。つまり、夜八時を過ぎてもまだ明るいので、感覚が鈍りがちだが、私たちの身体は確実に睡眠を欲していた。
「ああ、もう駄目。眠い」
私はそう言って、ガンモよりも早く布団に入った。ガンモもやはり眠気には勝てなかったようで、私がベッドに入ると、間もなく私の隣に潜り込んで来た。こうして私たちは、長い飛行機の旅の疲れと睡眠不足を解消すべく、ゆっくりと眠りに就いたのだった。

※撮影した写真のスライドショーを貼り付けておきます。なお、スライドショーが表示されない場合や、写真へのコメントをご覧になる場合は、温度差十六度をご覧ください。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m とうとう念願のパリにやって来ました。記事及び写真の公開が少々遅くなりまして申し訳ありません。実は、ホテルのインターネットが有料(しかも割高)だったため、一日中繋ぎ放題プランを申し込むか、時間制で申し込むか悩んでいました。思い切って繋ぎ放題プランを申し込んでみたところ、どうやら価格の見直しが行われたようで、実際はホテルの案内に書かれていたよりもずっと安い価格だったのです。こんなことならさっさと申し込んでおけば良かったと、今更ながら後悔しています。(笑)ただ、毎日のように精力的に歩き回っていますので、体力的にも余裕がなく、当面は記事の更新のみとさせていただき、もしも余裕があるようでしたら、撮影した写真を随時ご紹介させていただきますね。気温は確かに低いのですが、どういうわけか、あまり寒さを感じません。半袖でも十分過ごせます。(^^) しかし、フランス語がほとんどわからず、途方に暮れています。(^^; そのせいか、まだあまりパリに溶け込めない感じですね。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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