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2008.07.19

乳房腫瘤-疑い(後編)

乳房腫瘤-疑い(前編)の記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 早めの更新をほのめかしていたのに、更新が遅くなり、申し訳ありません。むむむ、毎日、毎日、本当に時間がなく、悲鳴をあげてはいますが、こうして少しずつ少しずつ、前に進んでいます。それにしても暑い日が続いていますね。熱中症で倒れる方も出て来ているようです。皆さんも、しっかりと水分補給されて、決して無理をなさらないよう、くれぐれもお気を付けください。

 I医師の診察は、火曜日の十五時半からの予約だった。いつもならば、軽い足取りで歩いている病院まで続く商店街も、火曜日が定休日であることも手伝ってか、まるで私の心の中を象徴するかのように、ひっそりとしていた。病院に着いた私は、受付を済ませ、待合室に腰を下ろした。間もなく私の名前が呼ばれ、婦人科の待合室に案内された。以前、通っていた病院と違って、こちらは完全予約制なので、ほとんど待つことがない。それはそれで大変ありがたいのだが、今回の私は、まるで死刑宣告でも受ける前のような気分だったので、大きな病院のイライラするほどの待ち時間がうらやましくも思えた。何故なら、結果を知るのが怖く、先延ばしにしたかったからだ。

 私の他にもう一人、婦人科の診察待ちの人がいた。その方と私と、どちらが先に呼ばれるのだろうと思っていると、もう一人の方が私よりも先に呼ばれたので、私はほっとした。私はその間に、持参した汗ふきシートで胸のあたりの汗をこっそり拭き取った。乳がんの診察には触診がつきものだが、外は真夏日で、たくさん汗をかいてしまっていたからだ。もう一人の方の診察はすぐに終わり、診察室から出て来られた。いよいよ私の番である。そして、とうとう私の名前が呼ばれた。

 診察室に入ると、I医師が、
「どうしましたか?」
と尋ねてくださった。いつもは土曜日に診察を受けているのに、火曜日に診察の予約を入れたため、私に何か異変が起こったのではないかと心配してくださったのか、それとも、私の様子がいつもと違っていたから尋ねてくださったのか、良くわからなかった。私は、カバンの中からゴソゴソと健康診断の結果通知書を取り出して、I医師に見せた。
「五月の健康診断で乳がん検診を受けたのですが、精密検査が必要と言われました」
I医師は、私の差し出した「乳房検診結果通知書」をご覧になり、
「『健康診断の結果をお持ちのうえ』って書いてあるけど、健康診断の結果って何?」
とおっしゃった。私は、
「多分、この結果通知書そのもののことだと思いますけど」
と答えた。実際、私の手元にはそれしか届いていなかったからだ。

 I医師に、健康診断での様子を尋ねられたので、医師による触診とエコーの検査を受けたことを話した。医師による触診では問題ないと言われたので、おそらくエコーで引っかかったのだろうと付け加えた。I医師は、
「では、マンモグラフィーの検査を受けてみますか」
とおっしゃった。乳がんについて調べ始めたときに、マンモグラフィーの検査についても知識を得たのだが、機械で乳房を挟み込むため、生理が近いとひどく痛むことを知った。私の乳房は、あと一週間ほどで生理が来る状態だったので、かなり張っていた。
「確か、生理が近いと痛むんですよね」
とI医師に尋ねると、I医師は、
「そうやね。できたら、生理の前よりも、生理が始まってから三日くらい経ってからのほうがいいんやけどね」
とおっしゃった。しかし私は、その頃にまた出直すのも面倒だったので、
「生理の一週間前ですが、単に痛いだけなら我慢しますので、今日、受けさせていただきます」
と答えた。

 すぐにマンモグラフィー撮影の準備が始められ、私は更衣室のロッカーに荷物を預け、上半身裸の上に、焼肉屋さんで着けるような紙エプロンをまとった。焼肉屋さんの紙エプロンと違っていたのは、胸が開く形で羽織れるような形になっていたことだ。更衣室にも汗拭きシートが置いてあったので、私はそれを何枚か拝借して、胸部の汗を拭き取った。

 更衣室から出ると、女性技師がマンモグラフィーの撮影室に案内してくださった。と言っても、更衣室のすぐ隣の部屋である。女性技師は、これから四枚の写真を撮影することをあらかじめ私に伝えてくださった。斜めからの角度の写真と、上下からの角度の写真を、左右の胸で一枚ずつ撮影するという。片方ずつの乳房を機械で挟み込み、乳房をほとんどぺしゃんこにした状態で撮影するのである。間もなく機械が動き出し、私の乳房はぺしゃんこにされ、四枚の写真を撮影してもらった。確かに痛かったが、我慢できる程度の痛みだった。

 その後、紙エプロン姿のまま、カーテンで覆われた待機場所でしばらく待った。そこには、悪性腫瘍がマンモグラフィーにどのように映し出されるかを解説したポスターが掲示されていた。それを見た私は、「どうか私の画像には何も映っていませんように」と心の中で祈っていた。

 間もなく名前が呼ばれたので、カーテンの外に出て行くと、今度は診察台の上に横になってくださいと言われた。I医師は私に、
「マンモグラフィーには何も映ってませんね」
と、あっさりとおっしゃった。私はそこでほっと安堵の息を漏らした。
「でも、エコーで・・・・・・」
と言うと、
「マンモグラフィーにもいろんなものが映りますが、エコーにはもっといろんなものが映ります」
とおっしゃった。I医師は、診察台の上に横になっている私に対し、
「ちょっと失礼しますね」
と言って、私の乳房を触診された。既にマンモグラフィーの画像に何も映っていないことがわかっていたので、健康診断のおじいちゃん先生のように念入りではなかったが、明らかに医師の指で私の乳房のしこりを探っていた。ガンモの触診とはまったく違う手つきである。

 その後、I医師が看護婦さんに、
「エコーで何か映ってたみたいだから、エコーを取って」
と指示されたので、私はそのままの姿勢で胸部のエコーを取ってもらえることになった。まず、ゼリーが塗られると、ローラーのようなものがバストの上をずるずると這った。健康診断のときは、この感触がひどく気持ちが悪かったのだが、I医師の病院でのエコーは、まったく気持ち悪くなかった。胸部エコーを取り終えると、私は更衣室に戻り、着替えを済ませた。

 着替えを済ませると、私は再び診察室に呼ばれた。そこには、普段は電源が落とされている大きな二台のモニタに、マンモグラフィーにより撮影された私の乳房の内部の写真が映し出されていた。確かにI医師の言う通り、カーテンで囲まれた待機場所に掲げられていたような悪性腫瘍の影はみじんも見当たらなかった。マンモグラフィーの撮影結果を読み取ることのできる資格をお持ちのI医師は、モニタに映し出された写真を見ながら、説明を始めた。
「マンモグラフィーは、斜め方向と上下方法で撮影していますが、何か問題がある場合は、斜め方向で撮影したときに、たいてい何らかの影が映し出されるようになっています。ここにある画像を見てもわかるように、斜めの画像にも、上下の画像にも、怪しいものは何も映っていません。そして、こちらがエコーの結果ですが、確かに何かが映ってはいるけれども、こういうものは、見る人が見れば問題ない画像だとわかるものなので、精密検査が必要と言って、何でもかんでも医師の判断に任せるべきものではないんです」
とおっしゃった。つまり、健康診断の処理が機械的に行われているに過ぎないということだ。もともと、エコーには多くのものが映るが、その中には、エコーに映し出されても差し支えないものも多く含まれているらしい。それを、まったくふるいにかけることなく、何でもかんでも医師の判断が必要という判定が下されるので、I医師は健康診断の制度に対して、ささやかな怒りを覚えたようだった。そして私には、
「この状況なら、少なくともあと一年は乳がんの検査を受けなくても大丈夫でしょう」
と言ってくださった。私は、今日、病院に来るまでどんなに気が重かったかをI医師に語った。ようやく肩の荷が降りたので、
「ありがとうございました」
とI医師にお礼を述べた。

 「で、こっちの話はこれでいいとして、筋腫の件は、どうしますか?」
ああ、これまでのやりとりはプロローグで、いよいよ本題に入ろうというのか。私は、前回、I医師の診察を受けてからこれまでの間に、私の中に芽生えたことをI医師に語り始めた。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m お騒がせしましたが、乳がんではありませんでした。いろいろ調べてみると、健康診断で私のような決断が下された人の多くは、乳がんではないそうです。それは、健康診断でこのような機械的な振り分けが行われていることも原因の一つのようです。ですから、恐れていた私が言うのも変ですが、「精密検査が必要」という判断を下された人も、すっきりするために、恐れずに、必ず「乳腺科」を訪れてくださいね。ある情報によれば、実際に乳がんだと判断されるのは千人に一人だとも言われています。しかし、私の周りには少なくとも三人の乳がんの手術経験者がいます。ということは、私は三千人もの知り合いがいることになりますよね。ちょっと、感覚的にわからないのですが、私には、千人に一人という確率ではないように思えます。何はともあれ、これでまた一つ、課題をクリアしましたが、このあと、I医師とは筋腫の話に入るのです。それについては、また後日書かせていただくことにします。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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