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2008.06.11

映画『譜めくりの女』

生まれながらのおじゅっさんの記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 私たちはガンモの実家に一泊したあと、月曜日にフェリーではなく陸路を走って帰宅しました。この時期、いつも利用しているフェリーはメンテナンスを行っているため、便数が少なくなっているのです。平日だったからか、高速道路もずいぶん空いていて、四時間足らずで自宅に辿り着きました。陸路を走れば、ちょうどフェリーに乗っているくらいの時間で移動できてしまうわけですが、同じ移動するにしても、フェリーの中でノートパソコンを広げてのんびり過ごすのと、高速道路をびゅんびゅん走りながら緊張が解けないでいるのとでは、気持ちが全然違いますね。人間、高速で移動するのは向いていないということでしょうか。(笑)さて今回は、I医師の診察のあとで鑑賞した一つ目の映画のレビューを書かせていただくことにします。

 「譜めくりの女」という奇妙なタイトルの付いたこのフランス映画を、私は予告編を観たときから気に掛けていた。何故なら、「譜めくりの女」を演じている若い女性が感情を読み取れないほど無機質な表情をしていたからだ。

 実際に鑑賞してみてわかったことだが、「譜めくり」とは、演奏会のときに両手の塞がっているピアニストのために楽譜のページめくりをする人のことを言う。この映画の中ではピアニストのための譜めくりだったが、決してピアニストの演奏だけを手助けする人のことではない。当然のことながら、譜めくりをする人は楽譜を正確に読めなければならない。この映画に登場する人気ピアニスト、アリアーヌの譜めくりを担当している若い女性メラニーは、何年か前に行われたピアノの実技試験中に、審査員をつとめていたアリアーヌの無神経な態度が原因でミスを犯し、ピアニストへの夢が絶たれてしまったのである。そんなメラニーが、アリアーヌの息子の子守役としてアリアーヌの家に住み込むようになる。そして、アリアーヌの譜めくりまで担当するようになり、ついにはアリアーヌにとってかけがえのない存在になるという話だ。そう、この映画は、最初からどこか復讐めいた雰囲気が漂っていて、鑑賞する私たちに絶えず緊張感を与える展開となっている。

 著名なピアニストを演じているのは、映画『地上5センチの恋心』で人気作家に恋をするデパート店員を演じていたカトリーヌ・フロだ。映画『地上5センチの恋心』では、コミカルで感情豊かなキャラクターを演じていたが、今回の役は人気ピアニストということで、隙がなく、威厳を保ったキャラクターを演じている。

 一方、ピアニストの夢を絶たれた若い女性メラニーを演じているのは、デボラ・フランソワという若手女優だ。映画を鑑賞した人たちは、彼女の無機質な演技に惹き付けられるだろう。彼女の行為を見守っていると、自分の感情を押し殺している状態というのは、ポジティヴな感情だけでなく、自分の中に眠るネガティヴな感情をも押し殺している状態であることがわかる。

 最初のうち、メラニーはアリアーヌの信頼を得るために、何ごともそつなくこなして行く。しかし、ひとたびアリアーヌの信頼が得られるや、メラニーの行為は次第にエスカレートして行き、ついにはアリアーヌを心理的に崖の上から突き落とすような行為を始めるのだ。そのため、私たちはいつの間にか、メラニーが次にアリアーヌに対して何をしでかすか、目が離せなくなっている。そうした意味で、この映画はとても繊細な心理ドラマであると言ってもいい。

 メラニーは、最後まで淡々と、とても静かに復讐を実行して行く。一人の若い女性が、幸せな家庭を崩壊させて行くのだ。そのあまりにも静かな展開に、私たち観客は鑑賞し終わったあとも、恐ろしい余韻を引きずることになる。感情を振り乱したにぎやかな映画よりも恐ろしい結末がそこに広がっているのである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 本当に恐ろしいことというのは、恐ろしいことを冷静に実行できる状態にあることなのかもしれません。もしもこの映画を途中から鑑賞した人がいたならば、メラニーがアリアーヌに対して好意を抱いていると錯覚してしまうと思ってしまうほど、メラニーの取った行動は完璧でした。この映画を鑑賞し終わると、感情を振り乱して騒ぐ人をもはや怖いとは思わなくなるかもしれません。何故なら、感情を振り乱して騒いでいる人は、自分自身の感情を最大限に表現することでやがて落ち着き、ネガティヴな感情をも解放することができると思うからです。しかし、メラニーのように感情を解放しない人は、長い間、ネガティヴな感情を温存し続けることになるのだと思います。メラニーのことなどすっかり忘れてしまっていたアリアーヌにとっても、何故このようなことが起こってしまったのか、きっと理解できないことでしょう。ネガティヴな感情を解放せずに持続させ、復讐を淡々と実行することができるということは、とても恐ろしいことだと実感しました。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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