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2008.03.23

映画『ダージリン急行』

 ホットヨガのレッスンを終えたあと向かったのは、シネマカード会員に加入しているミニシアター系の映画館である。その映画館では、シネマカード会員になると、毎週金曜日に上映される映画を一本千円で観られるのだ。今回、観ようと思った映画は、予告編を観たときから気になっていた『ダージリン急行』である。映画館に着いてみると、既に予告編が始まっていたので、私は大急ぎでスクリーンに滑り込んだ。

 予告編が終わると、本編の上映前に本編のプロローグとなる短編映画『ホテル・シュヴァリエ』が上映された。パリのホテル・シュヴァリエに宿泊している男が、男の宿泊しているホテルを自ら探し当てて押しかけて来た元恋人と一夜を共にする話だ。男は本編に登場する三兄弟の三男で、映画『マリー・アントワネット』でルイ十六世の役を演じていたジェイソン・シュワルツマンが演じている。また、元恋人役の女性を映画『マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋』でモリー役を演じていたナタリー・ポートマンが演じている。この短編映画の内容は、本編の中でも時折触れられることになる。

 さて、本編の内容は、父親を亡くしてから、お互いに連絡を取り合っていなかった三兄弟が、長男からの召集によりインド北西部を走るダージリン急行に乗り込み、兄弟の絆を取り戻すための旅をするというものだ。ダージリン急行というインドの列車内の様子も映し出されているので、鉄道ファンにとってはたまらない映像になっている。しかし、ガンモが持っている世界の鉄道の本には、ダージリン急行に相当する列車が掲載されていなかった。映画に登場する列車は、インド国鉄の車両なのだろうか。ダージリン急行が一体何物なのか、実在する列車なのか、詳細は良くわからないままなのだが、列車の中で何泊もすることから、とにかく長い距離を走るコンパーメント形式の寝台急行のようであった。

 日本の列車に慣れている私たちは、列車が発車する前から列車に乗り込んで、列車が発車するのを大人しく待つことが当たり前になっている。もしくは、発車間際に閉まり掛けた扉を押し分けて車内に滑り込むことを日常としている人もいるかもしれない。しかし、この映画では、滑り込みセーフはおろか、既に動き始めた列車に一生懸命追い付いて、やっとのことで乗り込むシーンが何度か登場する。日本で同じことをしたならば、安全のために、列車はきっと急停車してしまうことだろう。しかし、インドを走るダージリン急行は、動き始めた列車に人々が飛び乗ることをあたかも了承するような造りになっていると言っても過言ではない。何故なら、動き始めた列車に人々が飛び乗ることができるように、デッキがむき出しになっているからだ。

 動き始めた列車に無事に飛び乗ることができたのを見届けると、今度は検札の様子に注目したくなる。日本では、検札のあと、切符を自分の懐に大事そうに仕舞い込むが、ダージリン急行の中では、検札の終わった切符をコンパートメントの入口付近の切符置き場に差し込んでおくのである。また、飲み物サービスが用意されているのもいい。飲み物サービスを受けた人は、女性の給仕さんから額に第三の目を付けてもらえる。その瞬間の三兄弟の無防備な姿に思わず笑みがこぼれる。このように、列車の中でもインドの雰囲気がたっぷりと漂っているのだ。

 何かと仕切り屋の長男、もうすぐ子供が生まれようとしている次男、女性に手を付けるのが早い三男。個性溢れる三兄弟だが、個人的なわがままを言わせてもらえば、三人の中に私好みの男性が一人もいなかったのが残念だった。そのため、三兄弟の誰を心の中で応援すべきか、戸惑いながらの鑑賞となった。

 それはさておき。ダージリン急行は、とある駅で二時間近く停車するため、三兄弟は途中下車して観光を楽しむことになる。そこには、いかにもインドらしい光景が映し出されていた。本当にこのような列車があるのなら、観光には最適だろう。何故なら、重い荷物をわざわざ列車の中からひきずり降ろすことなく、列車内に残したまま身軽に観光することができるからだ。ただ、一つの駅で二時間近くも停車するとなると、通勤や通学用列車としてはあまり好まれないだろう。しかし、インドの鉄道は、予定通り列車が来ないことなど、日常茶飯事だそうである。日本では、列車がわずか数分遅れただけで乗客はピリピリしてしまうのに、インドの人たちが列車の遅れを許容しているのは、それだけのんびりとした国民性だからなのだろうか。

 ダージリン急行の中で何かと問題を起こしてしまう三兄弟は、とうとう車掌さんから大目玉を喰らい、ダージリン急行から降ろされてしまう。しかし、ダージリン急行を降りてからの旅のほうが、三兄弟の絆を深めて行くための本当の旅の始まりだったと言えるのかもしれない。ダージリン急行の中では喧嘩の絶えなかった三兄弟も、ダージリン急行の外の世界では喧嘩をしなくなる。外の世界の広さが、内の世界の結束を固めてくれたのかもしれない。

 外の世界では、これまで見たこともないようなインドの田舎の暮らしが映し出されていた。そんな田舎で行われることになった葬儀を静かに見守っていると、例え方法は違っても愛する者を失った悲しみは万国共通なのだと実感する。かつて父を亡くした三兄弟も、自分たちの体験した父の葬儀や喪失感と重ね合わせたのではないだろうか。私たちは、言葉は通じなくても感情を共有することができる。そんなことを感じさせてくれる貴重なシーンでもあった。

 まだまだ続く三兄弟の旅。旅が終わる頃には、失われていたはずの信頼関係をすっかり取り戻していた。「俺たちにはこの旅が必要なんだ」としきりに主張していた長男の思惑通りの結末となったわけだが、皮肉なことに、レールの上を走るよりも、レールから外れたところに兄弟の絆を深めるきっかけが転がっていたことになる。かつては大事そうに抱えていたはずの荷物に対してさえ、執着しなくなるということは、物質的なものよりも素晴らしいものを手に入れたことを象徴しているのだろうか。

 はちゃめちゃな展開を、一体どのように収束させるのだろうと不安にもなっていたが、最初のうちはちょっぴり軽い乗りで進行しながらも、最後にはにっこり微笑みたくなるような作品に仕上がっていた。至るところにちりばめられたユーモアも観客を飽きさせない。インドの景色も美しい。もちろん、鉄道好きならば誰でも、ダージリン急行という列車に恋焦がれてしまうことだろう。

ココログメンテナンスのため、次回の更新は深夜ではなく、翌日のお昼休み頃になります。ご了承ください。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今になって思えば、三兄弟のキャラクターは、この映画のはちゃめちゃな展開にぴったりのキャラクターだったのかもしれません。この映画はアメリカ映画ですが、三兄弟の中で最もアメリカ人らしいのは、長男だと思いました。レールを外れたところで三兄弟の絆が深まって行ったのなら、ダージリン急行を途中で降ろされたことにもそれなりに意味があったのでしょうね。それにしても、鉄道ファンとしては、寝台車のあるダージリン急行にむしょうに乗ってみたくなりました。何日も同じ列車に乗り続けるというのは、それなりに国が広くないと実現できないことですものね。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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