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2008.02.10

出張床屋

再び、うどんの国への記事にの記事に応援クリックしてくださった皆さん、どうもありがとうございます。m(__)m 「さぬきうどんツアー」なるものがあちらこちらで企画されているようですが、きっとマニアックなうどん屋さんを回るのでしょうね。本場のうどんの国では、マニアックなうどん屋さんこそ面白く、こだわりがあり、うどんの味もおいしいかと思います。さて、今回は、出張床屋のお話です。

 ガンモが、
「まるで落ち武者みたいだから、親父の髪の毛を切ってやってくれ」
と私に言った。確かに義父の髪の毛は、実に良く伸びていた。糖尿病を患い、普段、出掛けることもなく、家の中で過ごしているため、いつの間にか髪の毛も伸ばし放題になってしまったようだ。ご存知のように、ガンモの髪の毛は、入浴時に私がカットしている。ガンモは私の腕を見込んで、そのような話を持ち掛けて来たのだろう。床屋としては光栄である。私は、
「ええっ? いいけど、サービス満点にするの?」
とガンモに尋ねた。すると、ガンモはすかさず、
「いやいや、サービス満点にしなくてもいいから、服を着たままで切ってくれ」
と言った。私は、
「うん、わかった」
と答えた。

 そうと決まれば話は早い。私たちは、駅前のスーパーに出掛けて、散髪セットを買って来た。夕食を終えた頃、ガンモが義父に話を切り出した。カットする場所はいつものようにお風呂ではなく、台所だ。台所の椅子を一つ引いて、義父に座ってもらう。そこに、さきほどスーパーで買って来た、カットした髪の毛を受け取る針金入りのケープのようなものを義父の頭の上からそっとかぶせる。準備が整うと、ぬるいお湯の入った霧吹きで義父の頭をシュッシュと拭きつけた。

 ありがたいことに、義父は、動かずにじっとしてくれていた。私は義父の髪の毛をすくい、いつものようにカットし始めた。義父の髪の毛は、全体的にそれほど多くはないのだが、髪質がとても柔らかかった。義父が動かずにじっとしていてくれたおかげで、あっという間にカットが終わった。本物の床屋に行き慣れている義父は、そのまま髭剃りもしてもらえると思っていたらしい。そのことに気が付いたガンモが、
「ひげはあとでお風呂の中で自分で剃ってね」
と言った。義父は、
「わかった」
と言ってうなずいた。

 カットしたあとは、ガンモと共同で、掃除機を使って、義父の首の周りに落ちた毛を吸い取った。義父は、とてもさっぱりした様子だった。ひとまず、カットした髪の毛を集めて掃除機で吸い取ると、今度はガンモがその椅子にどっかりと腰を下ろした。そして、
「俺も切ってくれ」
と言う。私は、
「今日は床屋業が忙しいなあ。出張床屋でお客さんを二人もカットするなんてね」

 私はいつもの手順でガンモの髪の毛をカットした。何度も場数を踏んで来たので、実に手馴れたものである。服を着たままガンモの髪の毛をカットするのは少々おかしな気分だったが、お風呂の椅子に座っているガンモよりも、台所の椅子に座っているガンモのほうが、圧倒的にカットし易かった。お風呂の椅子は低過ぎて、中腰にならなければカットできなかったからだ。作業をするときは、対象物と自分の視線を合わせておくのが一番いいことに気が付いた。髪の毛をカットしたガンモは、一気に若返っていた。

 しばらくすると、義弟がやって来た。義弟は、義父を一目見るなり、
「散髪行って来たんか?」
と義父に尋ねた。そこで私がすかさず、
「私が切りました」
と告白した。すると、
「ありがとうございます。良かったやん。もう、髪の毛が少なくなっとるのに、何千円も散髪代を取りよるし、もうけたやん」
と言って喜んでいた。私は、
「今、○○さん(ガンモのこと)の髪の毛も、今、切ったところなので、○○くん(義弟のこと)の髪の毛も切りましょうか?」
と申し出た。すると、義弟は遠慮がちに苦笑いしながら、
「先月切ったばっかりやきん、まだええわ(先月切ったばかりだから、まだいいです)」
と言った。その遠慮がちな様子が、何ともおかしかったのだが、私自身も、自分から申し出たものの、
「じゃあ、俺もお願いします」
と言って椅子にどっかり腰を下ろされてしまったらどうしようかと、内心、冷や冷やものだったのだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今回のような出張床屋もいいですね。昔、老人ホームを回って、ご老人たちの髪の毛をカットしてあげている美容師さんの物語を漫画で読んだことがあります。老人ホームでは、介護師さんがご老人たちの髪の毛を切ってあげているのでしょうか。それとも、ここに書いたような出張床屋が実現されているのでしょうか。他の人たちがカットされている光景を目にしながら順番待ちをするのも、何だか楽しそうですよね。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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