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2008.02.23

映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』

 仕事が落ち着いて来たので、派遣会社の福利厚生サービスを利用して購入しておいた映画の前売券を有効活用すべく、映画館へと向かった。観た映画は、イギリスとスペインの対立を背景にイギリス女王エリザベス一世の孤独と苦悩を描いた作品である。この映画の前作として、同じ監督がエリザベス一世役のケイト・ブランシェットを主人公に起用した作品があるらしいが、私は前作を観ていない。

 この映画を観たとき、昨年六月に観た映画『クィーン』を思い出した。あの作品の中でも、女王であるがゆえの苦悩と葛藤が実に良く描かれていた。映画『クィーン』では現在のエリザベス女王が描かれ、今回の作品ではエリザベス一世が描かれているというのに、二人の女王像が重なってしまうのは、女王としての苦悩と葛藤が同じように伝わって来たからだろう。

 そんな女王の苦悩とは裏腹に、女王の権力を利用しようとする人たちが次々に女王に謁見を望んでやって来る。しかも、彼らは女王に対し、お世辞ばかり並べ立てて、女王に気に入られようとする。女王は、そんなお世辞にはもう慣れっこで、彼らに下心があることをちゃんと見抜いているのだった。権力を持つということは、実に悲しいものである。何故なら、下心のない本物の感情に出会うチャンスを失ってしまうからだ。また、頂点に立つということで、誰かと対等な関係を結べなくなってしまうことにも孤独を感じてしまう。

 こういう映画を観ると、女王という地位は「職業」なのだと思ってしまう。何故なら、私たちが仕事を通して体験しているように、本音とは別のところで決断を下さなければならないことが多々あるからだ。女王としての威厳を保ちながら、また、規則に縛られながら、心の中では泣いている。自分と対等な人物がいない立場は、何と孤独なのだろう。常に誰かの上に立たなければならない人には、自分の弱い部分を見せることのできる人物が誰もいないからだ。そんな中にあって、女王の権力を利用するというよりも、できる限り素の状態で女王と接しようとしたウォルター・ローリーとは、良好な関係を築いて行く。

 忘れられないのは、女王がローリーと侍女のベスを踊らせるシーンだ。女王は、自分よりも自由に動き回ることのできるベスに自分自身を重ねようとする。自分は自由に動き回ることができないものだから、彼女の経験を自分自身の経験に重ねることで、自由の喜びを間接的に感じようとするのである。女王がローリーとベスを踊らせたということは、すなわち、自分自身がローリーと踊りたかったということに他ならない。女王であるがゆえに、ローリーと踊りたくても、踊って欲しいと口にすることができなかった。一国の頂点に立つ者としてのプライドが邪魔をして、自分自身の気持ちに素直に振舞うことのできなかった女としての悲しさと、ベスに託したローリーへの強い想いが伝わって来る印象的なシーンだった。

 ただ、良くわからなかったのは、ローリー自身の気持ちだ。実際のところ、彼は女王に対し、どのような感情を抱いていたのだろうか。最初のうちは、何としてでも女王に謁見したがっていたローリー。最終的に、彼が親密な関係を結んだのが女王ではなかったのだとすると、果たして、彼が女王に謁見したがっていた目的は何だったのだろうか。また、女王の暗殺計画など、登場人物が多過ぎて、なかなか追い切れないシーンも多かった。特に、スコットランド女王メアリーとの確執の部分は、理解し切れなかった部分も多い。ただ、私は気づかなかったが、至るところに細かい史実が取り入れられ、歴史ファンにはたまらない作品に仕上がっているらしい。

 女王のファッションの豪華さや、これから黄金時代を築いて行くにふさわしい物質的な豊かさとは裏腹に、本当の気持ちで誰とも繋がることのできなかったエリザベス一世。権力を持つということは、同時に何かを失うことでもあったのだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m イギリス英語に興味のある私は、映画の中で語られているイギリス英語にじっと耳を傾けていたのですが、王室の人たちが話す英語なので、ロンドンで聞き取った英語とは抑揚が違っていました。今ではクィーンズイングリッシュという言葉は広い意味で使われているようですが、この映画で王室の英語が忠実に再現されているのだとすれば、確かに美しい英語だと感じました。エリザベス一世役のケイト・ブランシェットは、映画『バベル』にも出演されていましたが、やはり主役を演じるとなると、女優さんとして大いに映えますね。本当に苦悩する女王のようでした。パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズでキャプテン・バルボッサを演じていたジェフリー・ラッシュも海賊とはうって変わって、正統派の役で登場しています。キャストと言い、ファッションと言い、とても贅沢な映画だと思います。

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黄金色 時を色塗る 玉虫の   あのう、ケイト・ブランシェットのエリザベス女王1世役に対し、多くの賛辞が送られている中、こんなこと言うと爪弾きにされるかもしれませんが、私は彼女のエリザベスは、どうも・・・。どちらかというと、マーティン・スコセッシ監督レオナ... [続きを読む]

受信: 2008.02.25 12:48

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