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2008.01.11

さらば、寝台特急なは・あかつき

 寝台特急あかつきに乗車して、長崎に出掛けたのは、昨年の十月のことである。実はこの度、寝台特急あかつきと、途中の鳥栖(とす)まで一緒に走っている寝台特急なはが、今年三月のダイア改正をもって引退することになった。そこで私たちは、まだ乗車していなかった熊本行きの寝台特急なはに乗車して、お別れを言うことにしたのである。

 前日に引き続き、いつもよりも早めに仕事を上がって三宮に向かった。昨年十月と同様に、三宮から歩いておよそ七分のところにある二宮温泉に入って身体を清め、年末年始に休日出勤したときの代休を取っていたガンモと三宮で待ち合わせをして、晩御飯を一緒に食べた。

 実は、ガンモが今回の旅の切符を手配したとき、開放B寝台の喫煙車両しか空いていなかったそうだ。仕方なく、開放B寝台の喫煙車両を押さえたのだが、私たちは二人とも喫煙者ではないため、喫煙車両で一夜を過ごすのは、実のところ、あまり気乗りがしなかった。しかし、ガンモがいちかばちかの賭けをして、出発直前に三ノ宮駅のみどりの窓口で寝台の空き状況を再度確認してみると、運良くキャンセルが出たのか、B寝台デュエット(二人用の個室)が空いていたという。そこでガンモは、すぐさま寝台券を変更してもらったというわけだ。しかも、開放B寝台から個室B寝台に昇格したにもかかわらず、開放B寝台との差額は発生しなかったそうだ。

 個室で過ごせることになった私たちは、とてもうきうきしていた。これまでにも、寝台特急サンライズ瀬戸寝台特急あけぼのに乗車したときに、寝台特急の個室を利用したことはあった。個室の利用で有難いのは、周りの人たちのことを気遣って、声を潜めて会話をしなくても良いばかりでなく、コンセントにも恵まれるということだ。パソコン使いの私たちにとって、長旅となる列車の中でコンセントが使えることは、とても心強いことなのである。

 私たちはいよいよ三ノ宮駅の改札をくぐり、特急列車なは・あかつきが入線するホームへと向かった。三ノ宮駅は、いつも通勤で利用しているものの、住んでいる場所が、これから向かおうとしている熊本とは逆方向なので、夜に下り方面のホームに立つのは何だか変な気持ちである。

 そうこうしているうちに、寝台特急なは・あかつきが入線して来て、一部の車両が私たちの目の前を通過して行った。そうそう、この感じだ。ブルートレインが目の前を通り過ぎようとするこの瞬間。自分自身で大きな荷物を抱え、これからそのブルトレに乗車しようとするこの瞬間に、私のわくわく度は頂点に達する。

 中に入り、寝台券で指定された部屋の扉を開けた途端、私たちは喜びの声を上げた。そこには、こぢんまりしたカプセルホテルのような部屋が広がっていたからだ。まず、階段を挟んで両側にシングルベッドが並んでいる。屋根裏部屋の窓のように、ほんの少しカーブの入った高窓からは、三ノ宮駅を利用する人たちの様子を見下ろすことができる。既に引退が決まっているだけあって、さすがに車両は古びているが、必要な設備は揃っている。窓の前には使い勝手の良さそうなテーブルが付いているし、ベッドの奥には広い荷物棚も用意されている。もちろん、一夜を過ごすための枕や浴衣も用意されている。しかも、ゴミ箱まで用意されているのは有難い。そして、パソコン使いの私たちにとって、重要なコンセントもちゃんとあった。天井が低く、多少狭いことを除けば、とても快適な車内である。まるで、移動するカプセルホテルのようだ。ああ、それにしても楽しい。寝台特急は何て楽しいのだろう。

 こうして寝台特急なは・あかつきは三ノ宮駅を定刻通りに発車し、熊本に向かって走り始めた。ただ、電車仕様の寝台特急と違って、機関車が引っ張って走っているブルトレは、揺れがひどく激しい。だから、安眠したい人は、乗車しないほうがいいだろう。それでも、移動するカプセルホテルを体験したいと思う人は、親しい友達と一緒に個室を利用してみるといいかもしれない。もちろん、一人旅が好きな人には、一人用の個室もある。

 ガンモは、B寝台デュエットがひどく気に入ったらしく、
「引退したら、この部屋を俺らにくれないかなあ。ルーフバルコニーに取っておくから。だって、うちより広いもんね」
と言った。
「確かに広いね」
天井が低く、狭く感じられるB寝台デュエットであっても、物が溢れ返っている我が家よりはずっと広いということだ。本当に、引退したら、これらの車両はどこに行ってしまうのだろう。今後は活躍の場がないとすれば、どこかの鉄道博物館に寄贈されるのだろうか。それとも、解体されてしまうのだろうか。解体されるくらいなら、せめてこの部屋だけでも分けてもらえたなら、私たちは楽しくて仕方がないだろう。毎日のようにその部屋にこもり、寝台列車気分を味わえるのに。とは言うものの、もしかするとそれは、パチンコ好きな人が、自宅にパチンコ台を持って一人で遊んでいるような空しさも同時に抱えてしまうことになってしまうのかもしれない。

※撮影した写真のスライドショーを貼り付けておきます。なお、スライドショーが表示されない場合や、写真へのコメントをご覧になる場合は、さらば、寝台特急なは・あかつきをご覧ください。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 高速夜行バスの利用者が多くなってしまったからでしょうか。寂しいことに、昔ながらのブルトレは、次々に引退して行きます。確かに寝台特急は、高速夜行バスよりは、ずっと割高かもしれません。でも、どんなに高速夜行バスの人気が高くても、浴衣があって、ベッドがあって、布団をかぶってちゃんと横になって寝られる寝台付きの高速夜行バスは、まだまだ存在していないのではないでしょうか。贅沢と言われている飛行機のファーストクラスやビジネスクラスでさえ、限りなく寝台に近いシートが用意されているだけで、個室はおろか、寝台そのものも存在しませんよね。ということは、人が寝られるだけの設備を提供するということは、とても贅沢なことなんだと思います。そうした贅沢を、もはや利用客が求めなくなったということは、時代の加速とコミュニケーションの簡素化と関係があるのかもしれませんね。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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