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2008.01.10

えべっさんと焼きとうもろこし

 ようやく仕事が一段落ついた。とは言うものの、これは嵐の前の静けさであり、今月末になると、再び昨年末に体験したような忙しさがやって来る。束の間の骨休みとして、私は十八時半に仕事を上がり、ガンモと待ち合わせをして、西宮ゑびす神社で開催されているゑびす祭に出掛けることにした。全国のゑびす神社では、毎年一月十日の前後三日間に、十日ゑびすと呼ばれる、商売繁盛の神様であるゑびす様(通称:えべっさん)をお祭りするためのゑびす祭が開催されている。私たちが足を運んだ西宮ゑびす神社は、全国のゑびす神社の総本社となっている日本一のゑびす神社で、十日ゑびすが開催される三日間でおよそ百万人の人たちが訪れている。ちなみに、九日は宵ゑびす、十日は本ゑびす、十一日は残り福と呼ばれている。

 いつもはJRを利用している私たちだが、西宮ゑびす神社に参拝するには、西宮ゑびす神社の最寄駅がある阪神電車を利用するのが望ましい。そこで私たちは、三宮から阪神電車に乗り、西宮で降りた。阪神電車の中では、手に笹を持っている人たちと出会った。私たちの乗っていた阪神電車が西宮ゑびす神社のある西宮に向かっているのだとすれば、手に笹を持っている人たちはおそらく参拝帰りではなく、去年までの笹を返却するために持参していたのだろう。私たちも、返却したい笹が既に二本も溜まっていたのだが、仕事帰りに西宮ゑびす神社に寄ることができるとはよもや予想もしていなかったので、笹を持参しなかった。いや、例え予想していたとしても、職場に笹を持参する勇気があったかどうかは定かではない。それにしても、今年も笹を買うとなると、来年には返却すべき笹が三本になってしまいそうだ。

 西宮ゑびす神社には、これまで何度か足を運んで来た私たちだが、毎回、楽しみにしているのが屋台である。阪神西宮駅から西宮ゑびす神社まで、そして、西宮ゑびす神社の中に入ってからも、たこ焼き、いか焼き、焼きとうもろこし、広島風お好み焼き、から揚げ、はし巻き、いかの姿焼き、バナナチョコ、りんごあめなど、実にたくさんの屋台が並んでいる。こうした屋台での食べ歩きもいいが、仕事帰りの私たちはお腹がとても空いていたので、阪神西宮駅前の飲食店に入り、軽く腹ごしらえをしてから屋台を回ることにした。

 しかし、いったん腹ごしらえをしてみると、意外にも、本当に食べたいものは屋台にはないということに気がついてしまった。屋台は、お腹が空いているからこそ、あれもこれも食べたくなるのであって、空腹が満たされている状態にあると、思っていたほど身体が欲しなくなるのだとわかった。

 やがて私たちは、屋台の雰囲気をたっぷりと味わいながら、西宮ゑびす神社の手前まで歩いて来た。参拝客が多いので、
「お手回り品には十分お気をつけください」
と繰り返しアナウンスが流れている。

 西宮ゑびす神社の手前までやって来たものの、入り口付近に人が停滞していてなかなか動いてくれない。どうやら、入場制限が行われているようである。これは困った。時計を見ると、既に二十一時半を回っている。実は私たちは、翌日の仕事を終えたあと、旅行に出掛ける計画を立てていた。そのため、帰宅後に旅行の準備をしなければならないし、「ガンまる日記」も更新しておきたい。例えこの行列に並んで参拝できたとしても、中もきっと混雑しているに違いない。そうなると、参拝に時間が掛かってしまい、帰宅時間はどんどんずれ込んでしまうことだろう。参拝を終えたあと、阪神西宮駅まで歩いて行くのも、混雑していなければわずか数分程度の距離なのに、これだけ多くの参拝客で賑わっているとなると、三十分ほど掛かってしまうのではないだろうか。


さすが、総本社の西宮ゑびす神社の本ゑびすは混雑している

消防も救急車を使って出動。入場規制をアナウンスしている

 私たちは、しばらく考えた。総本社である西宮ゑびす神社の本ゑびすだから、人が多いのも無理はない。しかし、せっかく来たのだから、できれば参拝しておきたい。とは言うもののし、帰宅してからすべきことが山積みだ。それを考えると、このまま参拝せずに帰宅すべきか。それとも、帰宅してからのことは一切考えずに、入場規制が緩和されるのを根気強く待ち続け、今を楽しむべきか。

 私たちは考えた末に、やはり参拝は見送ることにした。私は、西宮ゑびす神社の鳥居に向かって手を合わせた。
「中に入らず、外から失礼します。でも、今年はこうしてお参りに来ました。いつもありがとうございます。では、もう帰ります」
ゑびす様が神様なら、西宮ゑびす神社の中に入って参拝しようと、外から手を合わせて拝もうと、想いは届くのではないだろうか。それに、商売繁盛のために自分自身の大切な時間を失ってしまうなら、商売繁盛しなくてもいい。すなわち、仕事がそれほど忙しくなくてもいい。そんなことを考えてもいた。

入り口の前で断念

 こうして私たちは、熊手を買うこともなく、商売繁盛の笹を買うこともなく、帰宅してから実践すべきことを優先して、参拝を諦めたのである。

 ただ、それだけでは少し寂しいので、屋台で焼きとうもろこしを一本買って二人で食べることにした。焼きとうもろこしと言えば、父ちゃんやキッコロを思い出す。とうもろこしは、父ちゃんやキッコロの大好物なのだ。そこで私は、キッコロが餌をねだるときの「クウ」という低い声を真似して、ガンモに焼きとうもろこしをねだった。
「クウ」
ガンモは、私のおねだりの声を聞くと、私にとうもろこしをかじらせてくれた。私は、ガンモの差し出してくれた焼きとうもろこしを一口かじって、もぐもぐ食べた。そして、再び食べたくなると、
「クウ」
と言った。するとガンモは再び私に焼きとうもろこしをかじらせてくれた。そんなことを繰り返すうちに、私には父ちゃんやキッコロの気持ちが少しわかったような気がした。

 この連携プレイに感動した私は、もしかするとガンモが私の言った「クウ」を「食う」という意味に捉えていたのではないかと、少し不安になった。焼きとうもろこしを食べ終わってから、ガンモに、
「私が『クウ』って言ってたのは、『食う』だと思った?」
と尋ねてみると、ガンモは、
「いや、キッコロの真似だろ?」
と言った。ちゃんとわかってくれていたのだ。

 帰宅してから、とうもろこしをたくさん食べたことは、父ちゃんとキッコロには黙っておいた。鳩は鼻がきくのだろうか。仮に鼻がきいたとしても、普段、硬いとうもろこしばかり食べている彼らは、きっと調理された焼きとうもろこしの味を知らないだろう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 突然、ぽっかりと開いた時間にえべっさんに出掛けられることになったため、カメラも持参していなかったのです。私の携帯電話はひどく古いため、掲載させていただいた写真の画像が悪くて申し訳ありません。西宮ゑびす神社に参拝できていれば、えべっさんのお酒の試飲もあったはずですし、おそらく、お化け屋敷の出店もあったことでしょう。実は、何年か前にガンモと二人でお化け屋敷に入り、あまりもの怖さに出口から飛び出しました。だって、生身の人間がお化けを演じるお化け屋敷だったんです。人形ならば怖くないのですが、生身の人間は恐ろしいですよ。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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