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2007.12.18

水漏れ事件(7)

ホットヨガ(八十二回目)の記事にたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m せっかくペースを取り戻したのに、またまた更新が遅れて申し訳ありません。週末には、何とかこれまでのペースを取り戻したいと思っています。さて、今回は、水漏れ事件(6)の続編をお届けしますね。

 水漏れ事件(6)から数日経ったある夜のことである。私は仕事帰りにはたとひらめいて、先に帰宅しているガンモに電話を掛けた。
「あのね、○さんの子供さんたちにクリスマスプレゼントを贈ろうと思うの」
○さんとは、先日、私たちが水漏れ事件を引き起こしてしまった、マンションの下の階の住人さんのことである。私の提案に対し、ガンモは、
「実は、俺もそう思ってたから」
と答えた。

 そうと決まればすぐにでも実行に移したかったが、平日は相変わらず帰宅時間が遅かったため、どうにもこうにも身動きが取れなかった。かつて夕方の休み時間に商品券を買いに出掛けたときのように、職場のビルで所有している自転車を借りて、再び職場近くの百貨店に足を運ぶことも一度は考えた。しかし、商品券のように目的が定まっているならともかく、クリスマスプレゼントを選ぶとなると、三十分の休憩時間ではとても足りない。そこで私は、ホットヨガのレッスンのあと、神戸駅近くにある百貨店で子供さんたちへのクリスマスプレゼントを選ぼうと思っていた。

 百貨店に入り、おもちゃにするか、それともお菓子にするかで、少し悩んだ。普段、テレビを見ていない私は、現代の子供さんたちがどのような対象に興味を示しているのか、良くわからない。おまけに、子供さんたちの正確な年齢もわからない。それならば、無難なお菓子にしよう。そう思い、地下の食料品売り場へと足を向けた。

 百貨店の食料品売り場には、実に品のいいお菓子が並んでいる。見ているだけでも楽しくなるのだが、やはり見ていると、誰かにプレゼントしたくなる。私は、もうすぐ退職が決まっている派遣仲間のことを思い出し、彼女の最終勤務の日に、彼女の好きなチョコレートをプレゼントしようと思い立ち、かわいらしいクリスマスツリー型のボックスに入ったチョコレートを購入した。思えば、残業時間中に彼女からチョコレートをしばしば差し入れしてもらったものだった。

 この時期、誰かとちょっとした接点を持つのに、クリスマスというイベントの存在はありがたい。百貨店の食料品売り場に足を運べば、かわいらしい入れ物に入った品のいいお菓子がたくさん並んでいる。それらを手に取って見たり、誰にプレゼントしようかと思いを巡らせるだけでも楽しくなって来るものだ。しかも、夕方の三十分の休み時間などという限られた時間ではなく、一日の予定をほぼ終えたゆったりとした時間は、プレゼント選びに最適な時間だった。

 それから私は、特設コーナーに、クリスマスプレゼント用にラッピングされたお菓子が山積みされているのを見付けた。下の階の二人の子供さんは、それぞれ男の子と女の子である。となれば、同じものをプレゼントするよりも、一つ一つ違ったものを贈ったほうがいいのではないか。そう思い、かなり試行錯誤を繰り返しながらも、私はラッピングされたお菓子の中から、お菓子のセットを二つ選んだ。どちらも、お菓子がメインではなく、おまけがメインのお菓子。

 帰宅する前に、私はガンモに電話を掛けた。ガンモはこのあと、またしても客先で徹夜の仕事が入っていたため、私が出掛けている間はずっと自宅で充電していた。さすがに夕方になると充電も終わっているだろうと思い、電話を掛けてみたのだ。
「おまけがメインのクリスマスのお菓子を買ったよ。帰ったらすぐに○さんのところに行くから、準備しといて」

 帰宅してすぐに、ガンモと連れ立って下の階の部屋の呼び鈴を鳴らした。水漏れ発生直後は、毎日のように深夜の訪問を繰り返していたが、奥様と最後にお話をさせていただいてから、既に五日ほど経過していた。そのため、今回はまだ二十時過ぎだというのに、ちょっぴり緊張してしまう。

 インターホンで名前を告げると、いつものように、奥様が出て来てくださった。私は、
「夜分にすません。その後、いかがですか?」
と、洗面所の壁紙に変化のないことを願いながら尋ねてみた。もしかすると、乾いた壁紙に何か変化が起こっているかもしれないと思ったのだ。すると、奥様は、
「いえ、うちはもう落ち着いてますよ。臭いもなくなりましたしね」
と答えてくださった。

 玄関まで出て来てくださった奥様は、ちょうどお掃除中だったらしい。何となく、「今頃どうしたのだろう? この件はもう片付いたはずなのに」といった感情が伝わって来た。私は、
「そうですか。今回は本当に申し訳ありませんでした。実は、これを子供さんたちにと思いまして・・・・・・」
と言って、百貨店で購入したおまけがメインのお菓子を差し出した。すると、奥様は、
「いえ、この間、お菓子をいただいていますし」
とおっしゃったのだが、私は、
「あれだけではどうしても私たちの気が済みませんので」
と言って、もう一度、袋を差し出した。奥様は、少しの間、躊躇されていたが、間もなく受け取ってくださった。それから私たちは、揃って深々とおじぎをしながらもう一度謝罪し、失礼した。

 これでようやくこの件も落ち着いたと思えたのだが、私には、今回、玄関に出て来てくださった奥様が、水漏れ事件(6)のときに電話でお話しをさせていただいたときのハイテンションだった奥様とは別人のように思えた。あの頃、確かに、奥様と私の間には、ある種の親しさのようなものが形成されつつあった。しかし、五日間というブランクを経て、形成されつつあったものが少し後退してしまったように思えた。私には、そのことが少し残念に思えたのである。

 通常の人間関係も、時を経て行くうちに、前進したり後退したりする。良好な人間関係とは、いったん後退しても、後退した分をただちに取り戻せるということではないだろうか。下の階の住人の方たちと私たちが、これからどのような関係を築いて行くのかわからない。しかし、既に形成されつつあったものが、後退していると実感するような状況は寂しい。そのために、新たな事件は必要ないとは思うのだが、今回の出来事を何とかして次に生かすことができればいいのにと願うのだった。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 最近は、ゲームでも、いったん電源を切ると、前回の状態を覚えてくれていますよね。ゲームの場合、一度記憶されたものは、機械が壊れでもしない限り、保存され続けます。でも、アナログである人間関係は、なかなかそうは行かないものですよね。これは、まだまだ始まりの段階なのかもしれませんが、むしろ始まりだからこそ、寂しく感じてしまうのでしょうか。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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