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2007.12.06

水漏れ事件(2)

 帰宅直後に取るものも取りあえず、手ぶらで謝罪に向かった私たちだったが、後日、訪問するときは手ぶらというわけにも行かないだろう。翌日、私は職場近くの百貨店で、お詫びのために商品券を購入するつもりで家を出た。百貨店の開店時間は午前十時である。しかも、商品券売り場に足を運んでみると、お歳暮シーズンと重なっているためか、ひどく混雑していた。私はしばらく待っていたが、なかなか処理が流れないので、諦めて出勤することにした。待っているうちに、普段の重役出勤から更に社長出勤と言われても仕方のない時間になってしまった。

 今回の出来事について、仕事中もあれこれ思いを巡らせていた。考えることが多過ぎると、仕事もなかなかはかどらない。私はいろいろ考えた末に、夕方の休み時間にビルで所有している自転車を借りて、再び百貨店に出向くことにした。私の職場では、受付の警備員さんにお願いすれば、ビルで所有している自転車を借りられるのだ。三十分しかない夕方の休息時間を有効活用するためには、自転車はきっと強い味方になってくれることだろう。

 夕方の休憩時間を知らせるチャイムが鳴ると、私は一目散にオフィスを飛び出した。受付の警備員さんにお願いして、自転車を借りた。警備員さんは、快く自転車を貸してくださった。いつもはてくてく歩いている通勤路を、私はびゅんびゅん自転車を走らせた。歩いて十分ほど掛かる駅前まで、自転車を使えばわずか五分足らずで着いてしまった。

 私は、百貨店のすぐ側に自転車を停め、ひとまずガンモに電話を掛けた。しかし、ガンモは電波の届かない地域に居るらしく、電話が繫がらない。商品券を購入するに当たり、どれくらいの金額分の商品券が妥当なのか、相談しておきたかったのだ。ガンモと電話が繫がらないとなると、私自身で決めるしかない。時間もなかったので、私は意を決して商品券売り場へと急いだ。ありがたいことに、商品券売り場は、朝のような混雑は見られなかった。

 銀行などに良くある「番号カード」を引いて待っていると、お店の方がすぐに気付いて対処してくださった。商品券の種類と金額を告げると、
「『おのし』はどうされますか?」
と尋ねられた。「お主はどうするか?」ではない。私は、パソコンなどには詳しくても、「のし」の種類となるとひどく弱い。良くわからなかったので、
「実は、マンションで水漏れを起こしてしまいまして、下の階の方へのお詫びなんです」
と正直に言ってみた。すると、お店の方は、
「わかりました。では、無地の『おのし』に『お詫び』と書かせていただきますね」
と言ってくださったので、
「はい、それでお願いします」
と答えた。こういうときは、専門家にお任せしてしまうのが一番だ。

 実は、この百貨店で商品券を購入するのは、今回で二回目になる。一回目は、派遣仲間が退職することになったので、同じプロジェクト内のメンバーでお金を出し合って、商品券を購入したときだ。いつもはお花を贈呈するのだが、退職する派遣仲間は、退職後、すぐに引越しが決まっていたので、荷物にならないようにと思い、商品券にしたのである。そのとき、私が仕事帰りにこの百貨店に立ち寄って購入したのだ。確かそのときも、
「『おのし』はどうされますか?」
と尋ねられ、「お餞別」を指定したはずだった。

 お店の方は、実に手馴れた様子でてきぱきと商品券を包んでくださった。
「箱にしますか? 封筒にしますか? 包み紙はいかがなさいますか?」
それらの質問に答えて待つこと数分、私は無事に商品券を手にすることができた。そして再び自転車に乗ってオフィスに戻り、残業をこなした。

 ガンモに電話を掛けてみると、
「お子さんがいらっしゃるから、お菓子もあったほうがいいんじゃないかな」
と言う。しかし、私が帰宅する時間に開いているお店などあるのだろうか。そう思いながら、何とか仕事を上がり、職場の最寄駅に向かって歩いていると、喫茶店の灯りが見えて来た。喫茶店には、手作りのクッキーなどを扱っているお店もある。見ると、お菓子を並べているショーケースがあるではないか。よし、それにしよう。私は、灯りの点いた喫茶店の入り口をくぐった。喫茶店は、もう閉店し掛かっていたのだが、飲食ではなく、ご贈答ものということで、快く対処してくださった。こうして何とかお菓子も手に入れ、いよいよ我が家へと急いだのである。

 前日の夜、奥様に就寝時刻を尋ねてみると、午前十二時半頃まで起きていらっしゃるとのことだった。そこで、私たちの遅い訪問もひとまずご了承いただいたのだ。私は、前日の夜とほぼ同じ時間に再び呼び鈴を鳴らした。

 前日の夜同様、奥様が対応してくださり、昼間、マンションの管理人さんや管理組合の会長さんたちと話し合われた内容をうかがった。マンションを建設したときにお世話になった配管業者の電話番号を管理人さんが教えてくださったそうなので、私の了解が得られれば、そこに電話を掛けて、一度診ていただこうと思っているとおっしゃった。奥様は、そのために私の訪問を待ってくださっていたようだ。加害者の私たちに気を遣ってくださり、大変ありがたいお話である。ただ、そこは配管だけの業者なので、配管以外のことはどの業者に連絡を取ればいいのか、まだわからないとのことだった。今回の水漏れの原因は、水道の配管の破損ではなく、我が家の洗濯機の排水ホースが外れていたことによるものなので、おそらく配管業者の領域ではないだろう。ひとまず、私もその配管業者の電話番号をおうかがいした上で、私の携帯電話の電話番号もお伝えし、また、奥様のご自宅の電話番号をおうかがいしておいた。

 奥様と保険の話になったのだが、私たちは水漏れ事故に対処できるような保険には加入していなかった。加入していればしていたで、金銭的には助かるのかもしれないが、第三者が介入する分、何となく処理が事務的になってしまったり、また、連絡を取り合う人も増えてしまうので、私たちとしては加入していなくても良かったと思っている。

 帰り際に、商品券とお菓子を奥様にお渡しした。奥様は、
「費用を出していただくので気を遣わなくていいですよ」
と最初は受け取りを渋っていたが、最後には私の押しのほうが勝ってしまった。世の中、お金ではないと普段から思っている私が、このような行動に出たことは滑稽だった。

 こうして、少しずつ前に進み始めたかのように思えていたのだが、実はこのあと、私たちのマンションが、建設会社の子会社である管理会社の管理から離れ、自主管理をしていることが原因で、別の問題にぶち当たることになる。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m このような感じで流れ始めました。いろいろ調べてみると、マンションの水漏れの場合、水漏れした箇所や原因により、保険の対象が異なるのだそうです。共有部分の水漏れならば、管理組合で加入している保険が適用されますが、まったくの個人の過失によるものならば、個人の加入している保険が適用されるとのことです。今回の場合は後者に相当しますが、私たちは保険に加入していません。さてさて、これからどうなりますことやら。(苦笑)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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