« 曜日を差別しないカレンダー | トップページ | 映画『アイ・アム・レジェンド』 »

2007.12.28

猫の手にはなれなかった

 今年最後の仕事は、猫の手となって、他のプロジェクトの仕事のお手伝いをするはずだった。しかし、私が担当しているプログラムに障害(バグ)があり、他のプロジェクトのお手伝いをするどころではなくなってしまったのだ。

 仕事納めの前日になってもバグがなかなか収束しなかったため、私の上司はとてもキリキリしていた。そして、上司は私にこう言ったのだ。
「今夜は、バグが収束するまで帰らないで欲しいんですよ」
驚いた私が、
「えっ?」
と言うと、上司は、
「いつまで経ってもバグが収束しないですしね。今夜は、すべてのバグを修正したあと、製品としてCD-ROMに焼き込んだもので動作確認が取れるまで残ってください」
と言うのだ。それは、つまり、終電を気にせずに仕事が終わるまで帰宅しないで欲しいという意味だった。いつも温和な上司からそのような言葉が出たので、上司はかなり焦っている状況にあると思われた。

 私が担当しているのは、来年早々にはリリース予定の製品である。それにも関わらず、次から次へと様々なトラブルが発生し、特に私の担当しているプログラムがうまく動作しなかった。そのプログラムは、上司が作成したプログラムと連携して動作するのだが、実際に連携テストを行ってみると、うまく動かない部分がたくさん出て来てしまったのだ。

 作業がなかなか捗(はかど)らないのは、連日の残業で疲れが出ていたこともあった。それに加え、年齢を重ねるごとに、以前ほどカチカチと頭が回転しなくなって来ているのを感じてもいた。また、筋腫のせいで集中力が失われていることも原因の一つだった。そろそろ私の技術者としての役割も幕を閉じようとしているのかもしれなかった。上司の話を聞きながら、ぼんやりと、そんなことを考えていたのだ。

 上司が、
「今、見付かっているバグの修正は、どれくらいで終わりますか?」
と私に尋ねた。既にその時点で、上司と話を始めてから数十分経っていたので、私は少し息抜きをしてからバグの修正をしたかった。あまりにも長い時間、頭を動かし続けると、疲れも出て来る。それに、このまま上司と話を続けると、食間に服用しているはずの漢方薬を飲むことができないことも気に掛かっていた。あと十数分も経てば、夕方の休憩時間だったが、夕方の休憩時間には残業食を食べるため、いつもならばもっと早い時間に漢方薬を飲んでいたのだ。

 私は常日頃から、誰かのペースに合わせて仕事をするのではなく、自分のペースで仕事をしたいと思っている。誰かにべったり張り付かれて仕事をするのは、とてもやりにくい。特に、相手が男性だと、話が長くなってしまったときに、トイレに立つこともままならない。そういうストレスは、以前の上司と一緒に仕事をしている頃から感じていた。以前の上司はもっとマイペースな人で、休み時間であっても関係なく、仕事の話を持ちかけて来た。仕事が忙しい時期の休み時間に自分自身をリフレッシュさせることは、自分自身のバランスを保つ上でとても重要なことであったはずなのに。以前の上司は、それを理解してくれない上司だったので、その点においてはとても仕事がやりにくかった。休み時間も気にせず延々と仕事を続けられるほど、私はタフではないのだ。

 ストレスを抱えるのも嫌だったので、私は薬を飲む時間が気になっていることを上司に主張した。すると、上司は、
「薬は飲んでください」
とは言ってくれるものの、まだ私の席から離れて行こうとはしなかった。顆粒タイプの漢方薬を飲むには水が必要なのに、席を立てない。何だ、この状況は。ああ、もう、こんな仕事なんて辞めてしまおうか。でも、それは逃げなのではないか。そう思うと、自分に負けてしまうことが悔しかった。

 とうとう私は自分から席を立ち、コップを持ってトイレに駆け込んだ。そこで水を汲み、食間に服用するはずの漢方薬を飲んだ。ああ、いやだいやだ。私は何だかムカムカしていた。さきほど上司に言われた「最後まで残ってください」というのは、どういうことなのだろうと考えていると、また腹が立って来た。上司の住んでいる家は、職場の最寄駅のすぐ隣の駅である。だから、通勤には三十分と掛からないだろう。しかし私は・・・・・・。はあ・・・・・・。

 席に戻り、職場のインターネットで終電の時刻を調べた。地下鉄の終電に合わせるとなると、JRの終電には間に合わない。果たして、JRの終電までに帰宅できるのだろうか。万が一、終電に間に合わないときは、タクシー代を出してもらえるのだろうか。

 しかし、待てよ。いつも温和なはずの上司がこれだけのことを言って来るのは余程のことである。それを考えると、仕事がなかなかうまく行かなくてストレスを抱えているのは上司も同じではないだろうか。そう思うと、決して私だけが苦しいわけではないのだとわかり、自分のことばかり考えてしまったことを恥ずかしく思った。

 そういう気持ちが、その後の仕事に生かされたのかもしれない。夕方の休憩時間が終わり、仕事に戻ると、バグはてきぱきと修正できた。修正したプログラムで再び動作確認を行ってみると、確かにバグが修正され、きちんと動作していることがわかった。ところが、再び上司と確認を取ってみると、さきほどの修正は生かされているものの、結局は修正する前の状態のほうが良かったことに気が付いた。そこで、先ほどの修正を元に戻すことになり、修正後に再び動作確認を行ったあと、製品としてCD-ROMに焼き込んだ。そして、CD-ROMからインストールを行って、更なる動作確認を行ったところ、正常に動いていることが確認された。夜の間もバッチプログラムを流しておくことになり、ようやくその準備も終わった。上司は、
「じゃあ、今日はこれでOKですよ」
と私に言ってくれた。時計を見ると、いつもの時間と変わりがなかった。
「あれ? 今日は徹夜じゃなかったんですかね? 帰っても大丈夫なんですか?」
と私が言うと、上司は苦笑いしていた。こうして、いつも以上に遅くなることもなく、私は無事に帰宅したのである。

 そして、とうとう仕事納めの日がやって来た。前日の夜に動かしておいたバッチプログラムの動作履歴を確認してみると、私の担当のプログラムは問題なく動作していた。ようやくこれで出荷に向けての準備を進められそうである。ただ、連携している他のプログラムに遅れが出ているので、年が明けたあと、再び動作確認を行う必要がありそうだ。しかし、私たちの製品としては、ひとまず、今年の作業はこれでおしまいである。私は、残作業をてきぱきとこなし、無事に今年の仕事を終えたのだった。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 皆さんも、無事に仕事納めされたでしょうか。一年間、お仕事、お疲れ様でした。中には、まだ仕事納めされていない方もいらっしゃるかもしれませんね。年末年始も関係なく仕事をされる方もいらっしゃるかもしれません。私は仕事納めのあと、職場の納会に出席して、一八時半頃に職場を出ました。こんな早い時間に帰宅できることがもったいなくて、ついつい寄り道をしながら帰宅してしまいましたよ。(笑)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

哲学・思想[人気blogランキング]に

上記ボタンをクリックしてくださいますと、一日に一回、ランキングのポイントに加算されます。もしも毎日のように「ガンまる日記」を読んでくださっているならば、記事に共感したとき、あるいは応援してもいいと思ったとき、ポチッと押してくださると、大変うれしく思います。

|

« 曜日を差別しないカレンダー | トップページ | 映画『アイ・アム・レジェンド』 »