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2007.12.22

ホットヨガ(八十三回目)

 関西圏にあるホットヨガのスタジオには、京都駅前店と本町店以外はすべて足を運んでいる。まだ足を運んでいないどちらの支店も新しく、オープンしてからまだ一年しか経っていない。そのため、ビギナー向けのレッスン中心に行われているのが特徴である。そうした背景も手伝って、これらの支店に足を運ぶ機会に恵まれなかったのだが、ホットヨガのホームページを見ていると、今月二十八日をもって本町店が閉店するということがわかった。そこで私は、「次回のレッスンは本町店で受けてみよう」と心に決めたのである。できれば、脂肪燃焼コース2のレッスンを受けたかったのだが、本町店には脂肪燃焼コース2のレッスンが開設されていなかったため、九十分のベーシックコースを受けることにした。

 自宅を出たのはレッスン開始のおよそ一時間前だった。最寄駅に着いて時計を見ると、これから初めてのスタジオに出掛けて行くには少し遅い時間だったかもしれないと後悔した。おまけに、外はあいにくの雨だった。私が休日に大阪に出掛けて行くときは、いつも雨が降っているような気がする。

 大阪に向かう電車の中で、私の隣に座った男性が、ずっと携帯電話で話をしていた。どうやらこれから人と会うらしい。そのため、いろいろな人から彼の携帯電話に電話が掛かって来たり、彼自身も、いろいろな人たちに電話を掛けていた。しかも、その話し声が大きい。私は、彼の大きな話し声にストレスを感じていたが、時々ギロっと彼のほうに顔を向けるくらいで、実際は何も言うことができなかった。

 電車が大阪駅に着いたとき、彼はまだ携帯電話で話をしていた。大阪駅で降りるのだろう。私が立ち上がると、彼も立ち上がった。すると、向かいのシートに座っていた三十代前半とおぼしき男性が、相変わらず携帯電話で話をしていた彼の腕をつかみ、怒りをぶつけた。
「お前、うるさいねん」
うわあ! 言ってくれた。携帯電話で話をしていた男性は、怒りをぶつけて来た男性に謝りながら、慌てて電話を切った。やれやれ。

 向かいのシートに座っていた男性は、あれだけのことを口にながら、どっしりと構えていた。私は、心の中で「うるさいなあ」と感じながらも、彼に対して何も言葉を発することができなかったというのに。万が一、「電車の中なので、静かにしてくれません?」などと言うにしても、言葉を発すると決意するまでにかなり気持ちが揺らいでしまうことだろう。それなのに、向かいのシートに座っていた男性は、正々堂々としていたのだ。私は、向かいのシートに座っていた男性に何か一言お礼を言いたいと思ったのだが、それさえも口にすることができなかった。私が言いたかったその一言を言ってくれてありがとうと。

 大阪駅の改札を出たとき、時刻は既にレッスン開始二十分前だった。ああ、これでは間違いなく遅刻だ。私はそう思った。これから地下鉄御堂筋線に乗り換えて本町まで移動するわけだが、乗り換え時間も考慮すると、少なくともあと十数分は掛かってしまうだろう。そこから徒歩四分と言われている本町店に無事にたどり着くことができるのだろうか。

 本町に着いて地上に上がってみると、家を出たときよりも更にたくさんの雨が降っていた。それにしても、本町店は一体どこにあるのだ? 地下鉄を降りて地上に上がると、方向がわからなくなる。私は、直前にノートパソコンを広げて確認した情報を思い出しながら、勘を頼りに歩き始めた。誰かに道を尋ねようにも、道を歩いている人がいない。そう、このあたりはオフィス街なのだ。ええい、導かれるままよ。私はそう思いながら、遅刻を覚悟して本町店を探し歩いた。

 すると、運良く、地図に書かれていた通りまで出ることができた。本町店の正確な情報は、ノートパソコンを広げなければわからないが、この雨の中、ノートパソコンを広げるわけにもいかなかった。しかも、雨が降っているというのに、私は傘をリュックの中にしまいこんだままだった。もはや、いったんリュックを下ろして傘を取り出す時間はない。私は傘もささずに、その通りを自分が思う方向に歩いて行った。すると、ありがたいことに、目印の建物が見えて来たのだ。ああ、何とか迷わずにたどり着くことができた。

 私は、エレベータに乗り込み、ビルの三階まで上がった。受付に居たスタッフが私をあたたかく迎え入れてくれて、ロッカールームの鍵を渡してくれた。迷いながらロッカールームに入ると、レッスンはもう始まっているようである。私は大急ぎで着替えを済ませてスタジオに滑り込んだ。

 スタジオの中では既に、ウォーミングアップのストレッチが行われていた。私は空いているヨガマットに腰を下ろし、準備を整えた。一度でも遅刻を経験すると、肝が据わって来るのだろうか。それとも、本町店のインストラクターのことを良く知らないからだろうか。私は、遅刻してしまったことを悪びれる様子もなく、マイペースでレッスンを受けた。私が淡々としているのと同じように、レッスンもまた、実に淡々と行われていた。

 実は、今回のレッスンは、生理が始まって二日目のレッスンとなってしまったのだ。そのため、ポーズを取っている間も、布ナプキンの接触具合が微妙に気になってしまっていた。漢方薬の効き目が表れているとは言え、やはり二日目は不安である。ただ、いつになく、たくさんの汗が出て来たことがうれしかった。やはり、生理中は、排泄力がアップしているようである。また、本町店は、スタジオはそれほど広くはないが、レッスンを受けている人の数も少なく、広々としていい感じだった。

 レッスン終了まであと二十分という段階になったとき、私はとうとうスタジオを出る決意を固めた。やはり、布ナプキンの接触具合が気になってしまったのだ。タイミング的にも、このあと確か、血液を逆流させるポーズを取ることになるため、生理中の人はお控えくださいとインストラクターから案内があるはずだった。それならば、一足先に失礼させていただこう。私はそう思い、インストラクターと目も合わさずにスタジオを出てしまった。神戸店においても、インストラクターに気兼ねなく、レッスンの途中で出て行く人たちがいらっしゃるが、今回は私がそのような人になってしまったのだ。遅刻して来た上に、途中から出て行ってしまうとは、何と無礼な参加者だろう。

 ロッカールームに戻り、私は一足早めにシャワーを浴びることにした。ロッカールームにほとんど人がいらっしゃらなかったのをいいことに、私は携帯電話を取り出して、本町店の様子を携帯電話のカメラにこっそり収めた。もうすぐ閉店してしまう本町店の様子をカメラに収めておきたかったのである。(※携帯電話が古いため、画像が悪くてごめんなさい)

ロッカールーム(左)と洗面台(右)

シャワールーム(左)と温度調節のできるシャワー(右)

化粧台

 着替えを済ませてロッカールームの鍵を受付に返却しに行くと、さきほどのインストラクターが対応してくださった。遅刻して来た上に、途中で退出してしまった私は、インストラクターに詫びを言うべきなのに、なかなか言葉が出て来なかった。何故だろう? 最後まで悪者に徹してしまいたかったのかもしれない。そのせいか、さきほどのインストラクターもどことなく無機質な感じだった。

 しかし、どういうわけか、インストラクターの隣にいらっしゃった別のスタッフが、
「いつもは神戸店でレッスンを受けてらっしゃるのですね」
と私に声を掛けてくださった。きっと、私の受講履歴を参照されたのだろう。私が、
「はい、そうなんです」
と答えると、
「私もイベントレッスンで神戸店に入ることもありますので、よろしくお願いします」
とごあいさつしてくださった。私は思い切って、
「もしかすると、Kさんですか?」
と、声を掛けてくださったスタッフに尋ねてみた。確か、情報誌か何かでKさんのお名前を拝見したことがある。それに加え、さきほどロッカールームで着替えをしていたときに、Kさんの書かれた手書きのチラシに目を通したばかりだった。それは、本町店の閉店にともない、イベントレッスンを行うというものだった。私の知る限り、Kさんは、ホットヨガでは有名なインストラクターのはずで、カリスマインストラクターというイメージがあったのだ。すると、声を掛けてくださったスタッフは、
「そうです」
と答えたが、ご自分がカリスマインストラクターであることは謙遜された。

 どうやらKさんは、本町店が閉店してしまうことを私が知らずに、本町店にやって来たのではないかと心配してくださったようだ。私は、
「はい。閉店されることを知って、こちらでレッスンを受けておこうと思いました」
と答えた。今後、本町店のスタッフは、梅田店や南森町店に移ることになるそうだ。

 Kさんは、私が靴を履いて出て行くまで、わざわざ受付から出て来て見送ってくださった。さすが、ご本人は謙遜されていたとしても、私の中ではカリスマインストラクターである。そのとき、レッスンを担当してくださったインストラクターは、別の会員の方と親しくお話をされていた。

 私にとって、今年のホットヨガ収めになった本町店。新しい支店だけあって、設備も新しく、シャワーの数も多かった。温度調節のできるシャワーが付いているのは、他の支店にはない特徴である。そんな本町店が閉店してしまうのは、オフィス街にあるからだろうか。閉店してしまう明確な理由はわからないが、支店が一つ減ってしまうのは、会員として、やはり寂しいものだ。それでも、本町店の終わりの時期に出会うことができたカリスマインストラクターのKさん。彼女との再会が、今後、梅田店や南森町店でレッスンを受けるときの楽しみになって行くことだろう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m インストラクターとお話をさせていただくと、社交術というものを強く意識します。特に、カリスマインストラクターと言われている人たちは、社交術を身につけていらっしゃいます。ホットヨガのインストラクターも技術を身に付ける仕事だと思います。私たちの職業もそうですが、何らかの技術を身に付けるということは、黙々と自分だけの世界に浸りがちなのです。でも、それを外に向けて行くことも大切なんですよね。自分だけの世界に浸らずに、他の人と接点を持って行くこと。それが社交術だと思います。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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