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2007.11.15

従量制の床屋さん

 髪の毛がすっかり伸びてしまったガンモは、そろそろ私にサービス満点の床屋さんを営業して欲しいらしかった。しかし、ここのところ、私の帰宅時間が遅いため、なかなか床屋さんを営業することができなかった。

 お風呂に入る前に、ガンモは自分の髪の毛を鏡に映し出して、
「ああ、髪の毛、切って欲しいなあ」
とつぶやいた。私は、
「私も、ガンモに髪の毛を切って欲しいくらいなんだよね」
と言いながら、お風呂に入るために、長くなった髪の毛を束ねているゴムを外した。

 お風呂の中では、どういうわけか、都会の駅の構内で良く見掛ける十分間のカットサービスのお店の話になった。そう、一回わずか千円程度の料金で、髪の毛をカットしてくれるお店のことである。神戸市内でも大阪市内でもしばしば見掛ける。
「確か、あの手のお店は、髪の毛が長い人は別料金になるんでしょ?」
と私が言うと、ガンモは、
「ええ、そんなことないだろ?」
と反論して来た。それに対し、私は、
「でも、どこかでそんな注意書きを読んだことがあるよ。確か、『髪の毛の長い人は、別料金になることもあります』って書いてあったと思うけど。要するに、髪の毛の長い人は、十分ではカットが終わらないからじゃないの?」
と更に反論した。すると、ガンモはこんなことを言った。
「でもさ、髪の毛が長くて、少しずつ切るなら、十分でカットが終わらないのもわかるけど、最初からいっぺんに切ってしまえば、長くても短くても変わらないんじゃないの? カットした髪を集める手間はかかるけどさ」
「それもそうだねえ」
確かに、最初からばっさり切ってしまうなら、単に髪の毛が長いという理由で、割り増し料金が発生するのはおかしい。私もそれには納得してしまった。

 やがて、ガンモがぼそっとつぶやいた。
「それなら、髪の毛の少ない人は、もっと安くしてくれよなあ」
「えっ?」
ガンモの頭の中では、髪の毛が長い人=髪の毛が多い人という等式が成り立ち、髪の毛の多い人に対して割り増し料金が発生するなら、髪の毛の少ない人には割引料金が発生してもいいのではないかということだった。そのつぶやきには、髪の毛がそれほど多くないガンモの主張が入っているようにも思えた。その状況を想像していたガンモは、寂しそうにつぶやいた。
「でもさ、あるときまでは千円だったのに、ある時期から七百五十円になってしまうのは、ちょっと寂しいものがあるよね」
ガンモに言われて、私もその状況を想像してみた。髪の毛の量によってカット料金が変わるのだとしたら、お店の誰かが客のカット料金を判断するわけである。そのとき、カット料金が高い人は何となく優越感を持ち、カット料金が安い人は何となく気後れしてしまうかもしれない。髪の毛が少ないおかげで、カット料金が安くて助かってしまうなどと割り切ることのできる人は少ないだろう。

 「じゃあ、もっと歳を重ねて、髪の毛が一本もなくなったら?」
と私が言うと、ガンモは、
「そしたらタダだから」
と言った。
「そうか。髪の毛が一本もなくなってしまったら、もう床屋さんに行く必要もないしね。でも、それはかなり寂しいね」
そう言いながら、私たちはお風呂の中で笑った。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 均一料金は、時にアンバランスを生み出すこともありますが、髪の毛の多い人に対してだけバランスを取ろうとするのではなく、髪の毛の少ない人に対してもバランスを取って欲しいと願うのが、ガンモなりの考えのようです。でも、こうしたアンバランスは、世の中には多いですよね。例えば、百円玉を入れて掛ける公衆電話。実際の料金よりも少なく話したとしても、おつりは出ませんが、料金が足りないと切れてしまいます。電車の切符もそうですよね。下車駅よりも先の目的地の切符では下車することができますが、超過分の料金を払い戻してくれるわけではありません。それなのに、手前の駅までの切符で下車すると、しっかり乗り越し料金を請求されます。ところで、もしも実際に「従量制の床屋さん」があったとしたら、繁盛するでしょうか。その人の髪の毛が多いか少ないかではなく、髪の毛をどのくらいカットしたかで料金が決まる床屋さんならば、繁盛するかもしれませんね。料金が、カットした髪の毛をかき集めて、計量したあとに決まるなら、面白いかもしれません。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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