« この冬のカニプラン | トップページ | 映画『象の背中』 »

2007.11.17

ホットヨガ(七十八回目)

 風邪がなかなか治らない。歳を取ると、風邪の治りが遅くなってしまうようだ。鼻はいつまでもグズグズと音を立てているし、時折出て来る咳は、とても甘い痰を運んで来る。そんな体調であるにもかかわらず、私はホットヨガのレッスンに出掛けた。午前十時からのいつものベーシックコースのレッスンである。

 スタジオに入ってみると、同じレッスンを受ける人の数が多いのに驚いた。それほど広くないスタジオに、ヨガマットが十八枚ほど敷かれていただろうか。確か、神戸店に設置されているシャワーの数は十一個だったはずだ。この状態では、レッスン後にシャワー争奪戦が繰り広げられるのは必至である。実は、私は、スタジオのすぐ隣にある映画館の上映スケジュールも気になっていた。ちょうどレッスンを終えて着替えを済ませた頃に、観たい映画が上映されることになっていたのだ。できれば、その上映時間に間に合うようにスタジオを出たい。それに、夕方には、仕事に出掛けて行ったガンモと待ち合わせて別の映画を観る約束をしていたので、できる限り時間を有効活用したかった。そのためには、お昼ご飯も食べずに映画を観ることも考慮に入れていたのだ。しかし、シャワー争奪戦が繰り広げられるとなると、例えお昼ご飯を見送ったとしても、観たい映画の上映時間には間に合わないかもしれない。それは困った。私は頭の中であれこれと思いを巡らせながら、レッスンに取り組んだ。

 今回のレッスンも、先週、お世話になったインストラクターが担当してくださった。私は、ひしめき合ったスタジオの中に、久しぶりに、憧れのフリーパス会員のあの方を見つけた。九十分のベーシックコースにレッスンを切り替えてからと言うもの、一度もお目にかかったことがなかったので、ものすごく懐かしい気持ちになると同時に、大きな安心感を覚えた。彼女の存在は、放浪癖のある私にとって、やはり「安定」だ。

 前回のレッスンのあと、私は現在取り組んでいる英語の学習と同じように、予習・復習を心掛けようとしていたはずだった。しかし、実際のところ、あまりにも時間が取れないため、ホットヨガの本を読み返すことができなかった。つまり、今回も、どのポーズにどんな効果があるかを意識しないままレッスンに臨んでしまったのである。仕方がないので、帰宅してからホットヨガの本を広げて復習することにしよう。

 レッスンを受けながら、私は自分の身体の様子がおかしいことに気がついていた。おそらく、風邪を引いて、呼吸が楽にできないせいだろう。ポーズを取る度に疲労感を覚え、ヨガマットの上で何度も何度も休みながらポーズを取っていた。ああ、苦しい。そう言えば、かつて私の目の前で、レッスン中にバタンと倒れた人がいた。このままレッスンを続けると、私もその人と同じ道を歩んでしまうかもしれない。ホットヨガのスタジオの中は三十八度と暑いので、体調の良くない人は要注意なのである。

 レッスンを開始して一時間が過ぎたとき、とうとう私は、それ以上のレッスンを放棄して、スタジオを出る決意を固めた。ちょうど座位のポーズから寝ポーズに切り替わる頃だった。例えほんの少しの休憩であろうと、これまで、レッスンの途中にスタジオを出たことはなかったのだが、どうにもこうにも身体が持ち堪えられなかった。かつて私の目の前でバタンと倒れた人のように、私もレッスン中に倒れてしまったとしたら、インストラクターにも迷惑を掛けてしまう。そんな恐ろしさもあり、意を決して予定よりも三十分ばかり早めにスタジオを出て行ったのである。

 どういうわけか、ちょうど同じタイミングにスタジオを出て行く人たちが三、四人ほど居た。私は、レッスンの途中で出て行くことが、インストラクターに申し訳ない気がしていた。せっかくレッスンを担当してくださっているのに、最後までレッスンを受けられなくてごめんなさい。スタジオを出て行くときに、インストラクターと目が合ったので、私は軽く手を合わせて「ごめんなさい」のポーズを取ってから、会釈をして出て行った。

 私はよろよろとロッカールームに辿り着き、ガラガラのシャワールームにこもり、ゆっくりとシャワーを浴びた。シャワーを浴びる間も、大きな息を繰り返して。九十分のレッスンだったのに、六十分余りで出て来てしまった。それでも、六十分はレッスンを受けたのだから、良しとするか。受付で、担当してくださったインストラクターに「ごめんなさい」の伝言を頼んでおくことにしよう。レッスンの途中で退出してしまった私は、少し気が滅入っていたが、すぐに頭を、観たい映画のことに切り替えた。この時間ならば、ゆっくり支度を整えても、上映時間には十分間に合うだろう。私は気持ちを切り替えて、スタジオを出て行く準備を整えた。

 着替えを済ませてロッカールームを出ると、レッスンを終えたばかりの、さきほどのインストラクターとばったり会った。私は彼女に、
「途中で退出してしまってすみませんでした。実は、風邪を引いてしまいまして、調子が悪かったんです。次回はちゃんと最後まで受けさせていただきます」
と言いながら謝った。インストラクターは、
「いえいえ、確かに調子悪そうでしたもんね」
と、かえって恐縮した様子で受け答えしてくださった。そのとき、インストラクターが取っていたのは、ちょうどサイババの信者の方たちが「サイラム」を言うときのような、両手を合わせた神聖なポーズだった。とっさのタイミングで、そのような神聖なポーズを取ることができるインストラクターは、確かにヨガの道を歩んでいる人なのだと実感した。そして、インストラクターを担当してくださった彼女に一言謝っておきたいという願望が直ちに叶ったことをうれしく思った。

 ホットヨガのスタジオをあとにした私は、観たいと思っていた映画を観るために、その足で、すぐ隣にある映画館へと足を運んだ。ところが、改めて上映スケジュールを見てみると、観たいと思っていたもう一つの映画が、これから上映されようとしていることがわかった。私は少し悩んだが、もう一つの候補である『サイボーグでも大丈夫』を観ることにした。今回、見送った映画は、『母を訪ねて三千里』のような、実の母親探しの実話を元にした『この道は母へと続く』である。こちらは公開初日だったので、例え見送ったとしても、まだまだ観るチャンスはあると思ったのである。時計を見ると、『サイボーグでも大丈夫』の上映までにまだ少し時間があったので、私は軽く昼食を取ってから再び映画館へと足を運んだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 実は、『サイボーグでも大丈夫』は、予告編を観たときからとても気になる映画だったのです。自分自身をサイボーグだと信じている女の子と、彼女が入院することになった精神クリニックで出会った男の子との恋愛物語であります。監督の思想がそのまま映像になった、奇想天外なストーリーでした。私の中には、二人のキスシーンがとても印象に残っています。東洋人は、西洋人に比べてキスシーンの描写が貧弱だなあと常々思っていたのですが、この映画のキスシーンはとても好感が持てました。ただ、あまりにも奇想天外なストーリーでしたので、この映画のレビューを書くことは見送りますね。(^^)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

哲学・思想[人気blogランキング]に

上記ボタンをクリックしてくださいますと、一日に一回、ランキングのポイントに加算されます。もしも毎日のように「ガンまる日記」を読んでくださっているならば、記事に共感したとき、あるいは応援してもいいと思ったとき、ポチッと押してくださると、大変うれしく思います。

|

« この冬のカニプラン | トップページ | 映画『象の背中』 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18521/17119049

この記事へのトラックバック一覧です: ホットヨガ(七十八回目):

« この冬のカニプラン | トップページ | 映画『象の背中』 »