ホットヨガ(七十六回目)
先週に引き続き、今週も、神戸店で九十分のベーシックコースのレッスンを受けた。ガンモは仕事の待機当番に当たっていたため、自宅で過ごすことになっていた。そこで私は、レッスンが終わったあと、お昼過ぎには帰宅するつもりで家を出た。先週は二分ばかり遅刻してしまい、悔しい思いをしてしまったので、同じ失敗を繰り返さないためにも、前回よりも早い時間に家を出た。その甲斐あって、今回は遅刻することなく無事にスタジオ入りすることができた。
レッスン開始時間までにレッスンの準備が整っているのと、ほんの二分程度であってもレッスンに遅刻してしまうのとでは、レッスンを受けているときの気持ちがまったく異なって来る。前者は、最初から自分のペースでレッスンを受けることができるが、後者は、まるで吐く息と吸う息を間違えたときのように自分のペースを取り戻すのに時間が掛かってしまう。きっと、初めから自分のペースで動かなければ、何ごともうまく行かない仕組みになっているのだ。
受付で、前回、顔を合わさなかったスタッフの方が、
「午前中に来られるのは珍しいですね」
と声を掛けてくださったので、私は、
「ベーシックコースに戻って、もう一度やり直そうと思いまして」
と答えた。私が受けるコースを変える度に、スタッフの方が気に掛けてくださるのはうれしい。
今回も、前回と同様、吉本興業のインストラクターがレッスンを担当してくださり、明るく楽しいレッスンとなった。一緒にレッスンを受けていた人たちの様子を鏡越しに観察していると、レッスンに参加されているのは、前回とほぼ同じ顔ぶれのようだった。やはり、年齢層が低い。前回のレッスンでは、ベーシックコースのポーズを思い出すことができずに、多少の戸惑いを感じてしまった私だったが、ようやく調子を取り戻したのか、私らしいポーズを取ることができた。
ただ、これまで参加して来たレッスンに比べると、汗のかき具合がまったく違っているのを感じる。脂肪燃焼コース2では、ウォーミングアップの太陽礼拝のポーズの段階から既に汗だくになってしまうが、ベーシックコースのウォーミングアップで行うおだやかなストレッチでは、じんわりと汗ばむ程度なのである。また、ストレッチのあと、本編に入っても、脂肪燃焼コース2のように汗が吹き出して来るようなこともない。ベーシックコースでは、じわじわとやって来るような、とても大人しい汗のかき方なのである。
レッスンの途中、私はあることに気が付いた。それは、一緒にレッスンを受けている人たちの中には、ヨガとして、とても美しいポーズを取っている方たちがいるということだ。ベーシックコースは、ビギナーコースを卒業した人たちが進むコースだと思い込んでいたが、彼女たちのポーズの取り方の美しさからすると、もっと激しいコースに進むことなく、ベーシックコースにどっしりと腰を落ち着けている人も多いようである。ベーシックコースは、アクティヴコースや脂肪燃焼コースほど激しいポーズがないので、ポーズ美の追求に専念できるのかもしれない。
シャワーを浴びたあと、着替えをしていると、またしても何かが足りないことに気が付いた。どうやら今回は、着替えのシャツを忘れて来てしまったようだ。ああ、またやってしまった。しかし、いつも致命的ではなく、ギリギリのところで助かっている。私は仕方なく、シャツを着ることなく、肌の上から直接フリースを着ることにした。ちょっぴりセクシーだった。
ところで、前回のレッスンのあと、私はホットヨガからアンケート用紙を受け取っていた。そのアンケートとは、ホットヨガに一年以上通った会員に向けたものである。シャワーを浴びて着替えを済ませたあと、私はホットヨガのロビーに設置されたソファの周辺に荷物を置いて、ペンを持ってアンケートに答え始めた。私が回答したのは、およそ以下のような内容である。
Q.現在の目標は何ですか?
A.身体の歪を矯正することと、ホルモンバランスを整えること。
Q.ホットヨガを始めてから、改善されたことがありましたら教えてください。
A.肩こりが一気に解消された。
Q.ホットヨガの良いところは?
A.スタッフの方たちの気さくな雰囲気がいい。また、いろいろな支店でレッスンを受けられるのも楽しい。
Q.これから取り入れて欲しいレッスンは?
A.特別レッスンにあったようなバレエヨガ。
Q.今後のホットヨガに望むことは?
A.梅田店のように男性会員を受け入れるスタジオを増やして欲しい。レッスン後に、参加者がインストラクターにレッスンの感想を述べる機会を持って欲しい。
「名前を覚えてくださっているのがうれしいので、私もインストラクターの皆さんの名前を覚えています」とは書かなかった。ひょっとすると私は、表裏のある人間かもしれない。
アンケート用紙に回答を記入している間に、私と同じベーシックコースでレッスンを受けていた人たちが次々に帰宅され、スタッフの方たちの会話が、お仕事モードから次第に素に切り替わって行くのを感じた。そうした会話の中で、あるスタッフの方がニックネームで呼ばれているのが聞こえて来て、私はそれをとても微笑ましく思った。何故なら、お仕事モードでは決して聞くことのできない会話だったからだ。私は、生まれてからこのかた、学生時代もずっと共学だった。おまけに、加入していたサークルや職場ではむしろ男性のほうが多い環境にいるので、女性ばかりの職場の雰囲気を想像することができない。そのため、女性だけの職場に対する偏見があるのかもしれないが、女性だけの職場は競争心が生まれ易く、なかなかうまく行かないのではないかと想像していたのだ。しかし、ホットヨガの雰囲気は違うのだとわかった。例え女性の多い職場であっても、第三者から見ても心地良い雰囲気が伝わって来るのは、どこかに属することで安心するのではなく、自立した人たちの集まりだからなのだろう。
しばらくして、ニックネームで呼ばれていたスタッフの方が私の近くまで来られたときに、
「さっき、ニックネームで呼ばれていましたよね?」
と尋ねてみた。すると、そのスタッフは、そのニックネームは自分の苗字から来ていると教えてくれた。「はいはい、知っていますとも。私のシステム手帳には、ちゃんとあなたの名前が書かれていますからね」という心の中の気持ちは言葉に出さなかった。
それからニックネームの話になり、さきほどの吉本興業のインストラクターが意外なニックネームで呼ばれていることがわかった。そのニックネームは、彼女の携帯電話のアドレスにも使われているそうだ。こうした情報も、しっかりと私のシステム手帳に書き込んでおかなければ。
ホットヨガのスタジオを出る頃、ガンモから私の携帯電話に連絡が入った。自宅で待機していたガンモだったが、コールセンタから呼び出しが掛かり、これから客先に向かうことになったと言う。なるほど、そういうことならば、私は映画を観て帰ろうか。そう思いつつ、先に「ガンまる日記」を書き上げたあと、ガンモの仕事が終わるのを映画を観ながら待機し、仕事を終えたガンモと待ち合わせて帰宅したのだった。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 実はこの日、スタッフの方たちといろいろな話をしていたためか、ロッカーの鍵を返却するのを忘れてしまいました。ホットヨガのあるビルの中で昼食を食べているときにそのことに気付き、昼食を食べたあと、返却しに行こうと思っていました。ところが、たまたま飲食店街のエレベータのところでスタッフの方に会い、エレベータに乗り込もうとしているところを捕まえて、大急ぎで鍵を手渡しました。ちょうどお昼どきだったので、スタッフの方もお弁当を買いに降りて来られていたようです。着替えのシャツを忘れてしまったり、鍵を返却するのを忘れてしまっていたりと、何だか盛りだくさんなレッスンでありました。
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