うちはツムラなんです
I医師に診察していただいてからホットヨガに行き、レッスンを終えた頃には既に夕方だったため、その日のうちにI医師の処方箋を引き換えることはできなかった。帰宅途中に自宅の最寄駅周辺にある薬局を何軒か当たってみたものの、土曜日ということで、処方箋の受付は既に終了してしまっていたり、また、営業時間内であっても、I医師が処方してくださった漢方薬を置いていない薬局が多かった。
I医師が処方してくださったのは、クラシエの桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)で、一日に二回服用するタイプのものである。クラシエとは、かつてのカネボウだ。私は知らなかったのだが、I医師が処方箋を書いてくださるときに、「カネボウからクラシエに変わります」と印刷された紙を見せてくださった。
しかし、処方箋を扱っていた薬局の中には、
「うちはツムラなんです」
と申し訳なさそうな顔で謝る薬局もあった。
「おそらく、この辺はどこもツムラやと思いますよ。クラシエを探すのは難しいんとちゃいますか」
とまで言われてしまった。つまり、漢方薬を置いてはいるが、クラシエ(旧カネボウ)ではなく、ツムラの漢方薬だということだ。
翌日の日曜日は、ガンモと映画『ミス・ポター』を観るために神戸に出掛けたものの、神戸駅周辺では処方箋を扱っている薬局が見当たらず、とうとう週明けの月曜日まで持ち越すことになってしまった。
何故、これほどまでに処方箋が手に入らないのだろう。実は、I医師が漢方薬を処方してくださったとき、あまりにもうれしくて、この処方箋の用紙を手元にずっと取っておきたい衝動に駆られたのだ。ミーハーな私は、I医師が書いてくださった処方箋を何度も眺めていた。I医師の筆跡は、まるで女の子みたいにかわいらしかった。薬局で処方箋が見つかれば、この処方箋の用紙を手放さなければならない。そんな思いが、私を処方箋から遠ざけていたのかもしれない。
更に私は、これまで処方箋がいとも簡単に手に入っていたのは、平日に病院に行くことが多かったからだということに気が付いた。しかも、病院のすぐ近くに処方箋を扱う薬局があり、患者はまるでベルトコンベアに乗せられたかのように、確実に処方箋に辿り着くことができる。今回は、診察を受けたのが土曜日だったことと、ホットヨガのレッスンを受けているうちに夕方になってしまったことが重なり、処方箋のベルトコンベアから外れてしまったのだ。
ウィークデイが始まり、私は職場近くの薬局に出向くか、それとも、自宅の最寄駅近くの薬局に出向くか、少し迷っていた。職場近くにも婦人科のある大きな病院があるので、おそらく漢方薬も扱っていることだろう。しかし、万が一、
「うちはツムラなんです」
と申し訳なさそうな顔で言われてしまったとしら、仕事が終わる時間を考慮すると、その日のうちに処方箋を受け取るために別の場所に出向くことは難しい。となると、やはり、自宅の最寄駅周辺の薬局を先に当たってみたほうが良さそうだ。私はそう思い、出勤時間を少し遅らせて、ひとまず、自宅の最寄駅近くの薬局を訪ねてみることにした。
自宅近くの薬局は、これまでにも何度かお世話になったことのある薬局である。薬剤師さんが何人もいらっしゃる、本格的な調剤薬局だ。私は受付で、I医師が書いてくださった処方箋の用紙を渡した。これまでの薬局では、そこですぐに申し訳なさそうな顔で謝られてしまっていたのだが、今回はちゃんと受理された。ようやく、ここで念願の漢方薬を手に入れることができるのだろうか。そんな期待を抱きながら、椅子に座ってしばらく待っていた。
ところが、私が処方箋の用紙を渡してからずいぶん時間が経っているのに、なかなか私の名前が呼ばれない。様子をうかがっていると、薬剤師さんたちが何やら奥のほうでゴソゴソとやりとりをしている。I医師が処方してくださった漢方薬は、ここには置いていないのだろうか。やはり、ここもクラシエではなくツムラなのだろうか。まさか、「ツムラの桂枝茯苓丸だけどいいじゃない? だって、うちはツムラなんだもん」などと、薬剤師さんに勝手に判断され、ツムラの漢方薬を処方されてしまうのだろうか。そんなことを思いながら気長に待っていると、ようやく私の名前が呼ばれた。
「クラシエの桂枝茯苓丸、二十八日分ですね。ええ、こちらなんですが、カネボウと書かれていますけれども、クラシエという新しい名前に変わる前のものになります。お薬の有効期限はまだまだ大丈夫ですので、どうぞご安心ください。それとですね、今回、二十八日分ということでいただいてますが、実は、一日二回のタイプのものが十四日分しかご用意できなくてですね、それも、特定の患者さんのためにお取り寄せしておいたものが、たまたまあったんです。もしよろしければ、残りの十四日分は、入荷し次第、ご自宅のほうに郵送させていただきますが、それでもよろしいでしょうか?」
いやいや、いろいろあるものだ。どうやらこちらの薬局も、漢方薬はツムラが主流のようである。しかし、特定の患者さんのためにわざわざ取り寄せているものが、十四日分だけ見つかり、それを私に回してくださると言う。その患者さんも、私と同じ漢方薬を服用していらっしゃるのか。それを思うと、少し不思議な気がした。もちろん、クラシエになる前のカネボウブランドの漢方薬でもまったく問題はない。単にパッケージが変わっただけのことだろうから。それよりも、足りない分の漢方薬を郵送してくださるというのは、いつも帰宅時間の遅い私にとって、とてもありがたいことだったので、喜んでお願いした。
こうして、ようやくI医師が処方してくださった漢方薬が十四日分だけ手に入った。後日、この薬局からは、残りの十四日分の漢方薬がきちんと郵送されて来た。新しく届いた漢方薬には、カネボウではなく、クラシエのブランド名が入っていた。
保険が適用された漢方薬は、二十八日分でわずか千百五十円だった。私がインターネットで比較的安く購入していた漢方薬の、およそ三分の一以下の価格である。実は、桂枝茯苓丸のエキス剤は、煎じ薬を服用する前に少しだけ服用していたことがある。そのエキス剤は錠剤だったので、味はほんの少ししかわからなかった。しかし、今回、処方していただいたのは、顆粒タイプのものであるため、服用するときに口の中いっぱいに広がり、味が良くわかる。しかし、顆粒タイプのエキス剤を服用するときは、煎じ薬よりもほんの少し気合が必要かもしれない。大人が飲む漢方薬には、子供の頃に飲んでいたようなチョコレート味の付いた薬ではないのだ。良薬口に苦し。しかし、それほど苦いわけではない。顆粒タイプの薬としては、比較的飲み易いほうだと思う。朝、晩、食前に服用するので、私はこれを毒出しホットジュースを口の中に含んで飲んでいる。これが、正しい漢方薬の飲み方かどうかはわからないが。
ちなみに、効能だが、薬局でいただいた薬の説明書きによれば、「血管を広げて血行を良くし、うっ血や血腫を分解、吸収して月経不順などの婦人病を改善する漢方薬です」と書かれてある。普段、筋腫があるお腹のあたりがひどく冷たいところからすると、血行不良と関係がありそうなことは容易に想像できる。
I医師は、
「通常は二週間分の処方です」
とおっしゃっていたので、二週間程度で何か変化が現れると思って良いのだろうか。確かに、私もかつて桂枝茯苓丸の煎じ薬を飲んでいた頃は、血流が良くなる効果を実感していた。今回、服用し始めてから数日経ったが、確かに少しずつ血流が良くなって来たと感じる。特に、お風呂から上がったあとに、下半身がポカポカと温かく感じるのには驚いた。そのせいだろうか、身体の中で筋腫が少し騒いでいるようにも感じられる。お腹の辺りが急に温かくなり、驚いているのかもしれない。筋腫たちで、今後の対策会議でも開いているのだろうか。ナメクジに塩を掛けたときみたいに、筋腫が小さく凝縮してくれるとありがたいのだが、桂枝茯苓丸にそのような効果があるとはどこにも書かれていない。
漢方薬が切れる頃を計算して、次回の診察を予約した。I医師が処方してくださった桂枝茯苓丸がどのように私を変えてくれるのか。そして、私自身がどのような答えを導き出すのか。それは、あと三週間後のお楽しみである。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m クラシエの桂枝茯苓丸を手に入れるまでの道のりは、少々長かったです。同じ薬を処方されて服用していらっしゃる方に、妙な親近感が沸いてしまいました。それにしても、薬剤師さんは美しい女性が多いですね。今回、自宅の最寄駅近くの薬局で担当してくださった薬剤師さんも、女優さんのように美しい女性でした。私が仕事をしているコンピュータ業界もそうですが、医療関係の業界も、医師や看護婦さん、検査技師さん、薬剤師さんなど、様々な人たちで支え合いながら成り立っているのですね。
さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
上記ボタンをクリックしてくださいますと、一日に一回、ランキングのポイントに加算されます。もしも毎日のように「ガンまる日記」を読んでくださっているならば、記事に共感したとき、あるいは応援してもいいと思ったとき、ポチッと押してくださると、大変うれしく思います。
| 固定リンク









