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2007.09.13

足し算の恋愛と引き算の恋愛

 月に一度の定時退社日の出来事をまだ書いていなかったので、書いておきたい。定時退社日というと、いつもならば、ホットヨガのレッスンの予約を入れておくところなのだが、今月はどういうわけか、定時退社日の日程を一週間間違えてしまい、翌週の水曜日にレッスンの予約を入れてしまっていた。そのことに気が付いたのは、同じ職場で働いている派遣仲間から、職場のメールアドレスに、定時退社日にみんなでご飯を食べに行かないかとメールが届いたことがきっかけだった。

 彼女の言う「みんな」とは、現在の派遣先で知り合って、数ヶ月に一度のペースで一緒にご飯を食べに出掛けている派遣仲間のことである。メンバーは、私を入れて四人だ。その中には、直径十二センチの彼女もいる。そのうち、直径十二センチの彼女も含めた二人は、既に別の職場で働いている。少し前から、メールをくれた同じ職場の派遣仲間が、
「そろそろまた四人で集まりたいね」
と言ってくれていたのだが、それぞれの都合でなかなか実現できないでいたところ、今月の定時退社日に、集まれる人だけで集まろうという話になったのである。直径十二センチの彼女は都合で参加できなかったのだが、三人のメンバーが三宮に集結した。

 集まったのは、別の会社で契約社員としてバリバリ働いているかつての派遣仲間と、今年いっぱいで私と同じ職場を退職することが決まっている派遣仲間だ。契約社員として働いている派遣仲間の職場には、現在、休職中の女性が二人もいらっしゃるのだそうだ。仕事があまりにも忙し過ぎて、精神的にプレッシャーを感じ過ぎてしまったことが休職に至った原因だそうである。彼女もそうなってしまわないように、彼女の部長が気遣って、彼女が趣味に費やす時間を尊重してくれているそうだ。

 今年いっぱいで現在の職場を退職しようとしている派遣仲間も、退職を考えた理由として、仕事が忙し過ぎることを挙げていた。確かに、プログラムの開発業務に携わっている人たちは、いつも忙しく働いている。
「万年、残業みたいなもんだからね」
と彼女は言った。

 例えば、ソフトウェア業界の実情を語るのに、こんな漫画がある。(SEが死ぬほど忙しいのは彼女もわかってくれるよね?)この漫画、私にはわかり過ぎてしまう。私がかつて、彼女のプロジェクトのお手伝いをしたとき、彼女のプロジェクトは実際にこの漫画と同じような状況だった。彼女のプロジェクトのメンバーは、納期に間に合わせるために、年末年始も返上して出勤していたはずだ。その頃、私は、仕事でキリキリしていた彼女と職場で大喧嘩した。しかし、どういうわけか、私にとってはそんな彼女が、同じ職場内では最もプライベートでも関わる派遣仲間となった。

 現在の職場を去りつつある彼女は、現在の職場で何が一番良かったかと言うと、私とさらっとした付き合いが実現できたことだと言ってくれた。職場によっては、例え休み時間であっても、女性の派遣社員同士がべったりと密な交流を持ちたがるところもある。しかし、彼女も私も互いに一人で行動できるタイプの人間だったので、密に交流したい部分と、自由意思を尊重し合う部分が合致していてとても心地良いと感じてくれていたという。私もまったくの同感だった。

 やがて彼女たちと、恋愛話になった。契約社員で働いている彼女は独身で、現在の職場を去りつつある彼女は既婚者である。彼女たち二人とも、恋愛に対してはいつも受身なのだそうだ。つまり、自分から好きになって、想いを打ち明けるタイプではないということだ。彼女たちの恋愛はいつも、「ちょっといいな」と思っている男性からの告白から始まるのだそうだ。そして、彼のことをもっと好きになれるかもしれないという可能性を秘めながら、
「まずはお友達からね」
と言って、彼との交際を受け入れるのだそうだ。いわば、友達から恋人への「お試し期間」みたいなものを設けるわけである。
「ちょっと待って。その『お試し期間』が過ぎたら、『はい、さよなら』ってお別れするの?」
と尋ねると、二人ともたいして悪びれた様子もなく、こっくりとうなずいた。「お試し期間」を過ぎて、自分の感情が高まって来ない場合は、
「私たち、やっぱりお友達ね」
と言って、元のお友達に戻るのだそうだ。

 私には、
「まずはお友達から始めましょう」
と言った経験も、逆に言われた経験もないので良くわからない。このような台詞を私から言うことは百パーセント有り得ないことなので、この台詞を口にする人の気持ちはわからないが、仮に自分が告白した相手にそのようなことを言われたとしら、私はショックを受けるだろうと思う。何故なら、私の中で、
「恋愛は、想いがパンパンに膨らんでから始めるもの」
という既成概念があるからだと思う。自分の想いがパンパンに膨らんでいるのに、相手の想いがパンパンに膨らんでいないのだとすると、その時点で既に片思いなわけである。だからショックを受けるのだ。私は、片思いの状況からはお付き合いを始められない。

 「お友達から始めることなんてできないよ」
と主張する私に、
「でも、付き合ってみたら、もっと好きになれるかもしれないんだよ。実際に付き合ってみないとわかんない部分ってあるじゃん」
と彼女たちは口を揃えて言う。
「いやあ、私の場合、最初から直感を頼りに行動するから、『ちょっと好き』程度では付き合わないなあ。最初から寝ても覚めても好きじゃないと付き合えないよ」
と言った。すると彼女たちは目を丸くして、
「寝ても覚めても好きな人になんか出会ったことがないよ」
と言った。私はむしろ、彼女たちが寝ても覚めても好きな人に出会っていないと断言したことに驚いた。私の場合、最初からビンビンにボルテージが上がっていて、その状態が持続する。仕事中にガンモのことを想って泣いたり、早く家に帰りたいと思って居ても立ってもいられなくなっていたという話を彼女たちに聞かせると、彼女たちは更に目を丸くして驚いていた。

 私には良くわからない感覚だが、世の中には、相手から告白されて、好きという感情がじわじわと湧き上がって来る人もいるようだ。それにしても、人を少しずつ好きになるというのは、どういうことなのだろう。ひょっとすると、彼女たちが体験しているのは足し算の恋愛で、私が体験して来たのは引き算の恋愛なのだろうか。

 足し算の恋愛も引き算の恋愛も、百を最高だとすると、足し算の恋愛は、最初は六十くらいから始まり、相手をもっと知る度に点数を加算したり減算したりする。引き算の恋愛は、最初は八十くらいから始まり、相手をもっと知る度に点数を加算したり減算したりする。どちらの恋愛も、相手をこれ以上受け入れないと決めるタイミングがずれているだけだ。

 足し算の恋愛を実践している人たちには、可能性への期待を秘めてはいるが、最初から直感で行動する引き算の恋愛を実践している人にはそれがない。つまり、相手の可能性を最初から却下してしまうということだ。一方、足し算の恋愛は、相手の可能性に期待する反面、交際がある程度深まって来ると、中途半端な状態で相手を放り出してしまうことにもなりかねない。その点、引き算の恋愛は、最初から門前払いなので、感情的な関わりが少ない分、断られた人の立ち直りも早い。総合的に見てみると、どちらも一長一短であるように思える。

 ただ、私は、彼女たちが「寝ても覚めても好きな人になんか出会ったことがないよ」と言ったことが気になっていた。彼女たちと私の持っているエネルギーが同じだとすると、彼女たちの場合、人を好きになるという能動的なエネルギーの代わりに、相手の可能性に期待するという受動的なエネルギーに変換されているのかもしれない。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 他にも、時代が加速しているという話を彼女たちとしました。現代のコミュニケーションは、携帯電話のメールのやりとりが主流になって来ていますが、私が友人の携帯電話にメールを送信してからわずか数時間後に、その友人から、「返事が遅くなってごめんね」とメールに書いて来たことを話しました。わずか数時間後に返信するメールに「返事が遅くなってごめんね」と書くということは、「メールを読んでいるのにすぐに返信できなくてごめんね」という意味なのだろうと思ったと言いました。そして、そんな時代は恐ろしいとも言いました。携帯電話のメールは、返信は速くても、お互いが言いたいことだけを提示し合っているだけで、内容のほとんどがイエスで構成されています。相手にイエスを返すのは素早くできるのですよ。でも、そんな交流をしていると、ノーの壁にぶち当たったときに乗り越えられなくなるのが目に見えています。そろそろこんな無意味な加速はやめなければならないと思うと私は言いました。彼女たちも同じようなことを感じていたようですが、なかなかそういうことを口にする機会はないようです。IT社会は確かに便利になったことも多いですが、お互いに言葉を交わす機会は多くても、中身が薄っぺらになってしまったような気がしてなりません。IT業界で働く私たちがこんな時代を作ってしまったのだとしたら、こうした加速について危機感を感じていることを主張して行かなければ、時代はどんどん加速してしまうと思いました。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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