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2007.09.21

鳩の習性

 硬派だったキッコロも、最近では卵を温めることに関して協力的な姿勢を見せていた。平日休みであるガンモの報告によれば、最初のうち、三時間程度だったキッコロの抱卵時間も、次第に五時間、七時間と延長されたようである。私たちは、TKMYとキッコロが抱卵を交替することを、バッキンガム宮殿にちなんで、「衛兵の交代」と呼んでいた。

 あるとき、いつものように卵を抱いているTKMYを観察していると、TKMYのお腹の下で何かがもぞもぞ動いているのが見えた。それを見たガンモが、
「あれえ? 生まれたんじゃないの?」
と言った。私たちは、寝室の窓から顔をのぞかせて、TKMYのお腹の下のあたりに注目した。これまで、父ちゃん、母ちゃんは、これほど見通しの良い場所に巣を作ることはなかったので、私たちは容易に巣の様子を確認することはできなかった。巣の様子を確認するには、覚悟を決めてわざわざ巣のある物陰まで回り込まなければならなかったのである。しかし、ベランダの排水溝の辺りに作られたTKMYとキッコロのオープンな巣は、私たちの寝室の窓から容易に見渡せる場所にあったので、私たちは好きなときに観察することができた。

 私たちがじっと観察を続けていると、TKMYのお腹の下から孵化したばかりの雛がちょろりと顔を出した。TKMYは、さも大事そうに雛を見守っている。その表情は、完全に母の表情だ。

TKMYと雛。雛に向けるTKMYの顔は、母の表情そのものだ。
ご覧の通り、排水溝の近くに作られたTKMYたちの巣の周辺は、
TKMYが鳩パンチをしながら威嚇するため、なかなか掃除ができない

 TKMYとキッコロにとって、初めての雛なのかどうかはわからないが、卵が孵化しても、TKMYは巣から離れようともせず、雛も一緒にお腹の下に抱き、もう一つの卵を温め続けている。私たちは、TKMYのお腹の下にいる雛が窒息死したりしないだろうかと冷や冷やしながら、TKMYたちの様子を見守っていた。

 しばらくすると、キッコロが登場し、衛兵の交代が行われた。衛兵の交代の瞬間には、TKMYが巣から離れることになるので、キッコロが卵を抱くまでの間は、巣の様子を更に観察することができる。そのとき、巣に残った卵の殻はどうするのだろうと私たちは疑問に思った。すると、キッコロは卵を抱き始める前に、孵化したばかりの雛の卵の殻を嘴(くちばし)でくわえ、父ちゃん、母ちゃんたちの巣の近くまで運んで行ったのだ。まるで、よその家に自分の家のゴミを捨てに行くかのように、卵の殻を捨てに行ったのである。

 実は、これまでにも何度か、父ちゃん、母ちゃんの巣の近くに卵の殻が転がっているのを確認したことがあった。父ちゃん、母ちゃんが卵を温めていた時期ではなかったのに、どうして卵の殻が父ちゃん、母ちゃんの巣の近くに転がっているのか、とても不思議だったのだ。どうやら鳩には、孵化した卵の殻をよその巣の近くに捨てに行くという珍しい習性があるらしい。

ひとまず、卵の殻の半分を捨て終わったキッコロ
(撮影:ガンモ)

 鳩をじっと観察していると、実に面白い。確かに糞の掃除は大変だが、彼らの生態を観察することで、これまで知らなかったことが見えて来る。子供の頃、私の実家では鳩を飼っていたが、彼らがこのような習性を持っていたとはまったく知らなかった。まだまだ観察が足りなかったのだろう。

 鳩の夫婦は本当に仲が良い。TKMYに雛が生まれたことで、父ちゃん、母ちゃんは、おじいちゃんとおばあちゃんになったわけだが、彼らはおじいちゃん、おばあちゃんになったとしても、昼間から堂々と愛を交わす。若い者になんか負けていられないとでも思っているのだろうか。ベランダに目をやると、父ちゃんと母ちゃんが嘴同士を絡め合わせて、身体を震わせているのが見えた。この動きは、親鳩が雛にピジョンミルクを与えるときの動作である。どうやら、父ちゃんが母ちゃんにピジョンミルクを与えているらしい。行為が一通り終わると、母ちゃんは、まるで雛のようにすぐに父ちゃんにピジョンミルクをおねだりしに行く。すると父ちゃんは、母ちゃんのリクエストに応えて、再び自分の嘴と母ちゃんの嘴を絡み合わせ、身体を震わせながら母ちゃんにピジョンミルクを与える。母ちゃんの身体も、父ちゃんに同期して震えている。母ちゃんのおねだりする様子が特にかわいい。ロンドンの街角で抱き合うカップルを何組か見て来たが、孫のいる鳩の老夫婦だって、こんなにも情熱的に愛し合っている。

父ちゃんが母ちゃんにピジョンミルクを与えている

 どうやら、父ちゃんが母ちゃんにピジョンミルクを与えたあとは、お決まりのコースがあるらしい。更にそっと見守っていると、やがて父ちゃんは、母ちゃんの身体の上に乗った。運動会のシーズンなので、二羽でピラミッドでも作るのだろうか。いや、違う。交尾である。

父ちゃんと母ちゃんの交尾

 人間のように長い時間ではないが、彼らは確かに特定の段階を経て交尾に辿り着いていた。彼らの要求はとてもストレートである。言い換えると、とても素直だということだ。父ちゃん、母ちゃんのように、互いに愛を交わすという確かなステップを踏みながら交尾に辿り着いているところからすると、鳩の世界には欲望を対象とした交尾は存在していないのではないかさえと思ってしまう。もしも本当に存在しないのだとしたら、欲望にまみれた人間のほうが、ちっぽけな存在に見えて来る。

満足げな表情で母ちゃんから離れる父ちゃん。この表情は、「ごちそうさまでした」?

 やがて交尾は終わり、父ちゃんは母ちゃんから離れた。胸を膨らませながら、満足げな表情をしている。

 人間は手があるので、愛する人と手を繋ぎ、抱き合うことができる。鳩は手がないので、愛する鳩と手を繋いで歩くこともできなければ、抱き合うこともできない。人間には手があるのに、ちゃんと活用できているのだろうか。その手は、愛しい人を抱き寄せているのだろうか。唇は、愛しい人と重ね合わせているのだろうか。

 もしも愛を忘れかけた人がいるなら、鳩の夫婦をじっと観察してみるといい。きっと、彼らから教わることがたくさんあるはずだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 鳩を観察していると、毎回、新たな発見があります。だんだんパパらしくなって行く硬派なキッコロ。そして、いつまで経っても情熱的な父ちゃん、母ちゃん。彼らは、自分たちの持っているものを最大限に生かして、人間よりも豊かで情熱的な愛情表現を繰り返しているように思います。ところで、今回の交尾で、母ちゃんは妊娠したのでしょうか。それはまたのお楽しみということにしましょう。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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