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2007.08.07

ストーンヘンジ

 私たちは、日本でBritRail Passを購入していた。BritRail Passとは、外国人向けに発売されている、イギリスの旧国有鉄道であるBR(日本のJRのような鉄道)を四日間、乗り放題できる便利な切符である。

 ロンドン滞在五日目の今日は、いつものように地下鉄を使ってユーロスターの発着駅であるウォータールー駅に出た。ユーロスターは国際線の鉄道であるだけに、イギリス国内を走る列車とは違い、一般の人たちの目には届かないところに隔離されていた。すなわち、ホームが分けられているのである。

 今回、私たちが利用するのは、ユーロスターではなく、イギリス国内を走る特急列車だ。イギリスのBRはちょっと変わっていて、発車間際になってようやく出発ホームが決まる。利用客は、駅の出発案内板に目を凝らして、自分がこれから利用する列車が何番ホームから出発するかを確認しなければならない。しかも、出発時間のおよそ十数分前にようやく決まるので、ちょっとドキドキものだ。

 私たちが乗り込んだのは、ソールズベリー行きの特急列車である。ソールズベリーから直行バスに乗り換え、世界遺産のストーンヘンジを観光するのだ。特急列車の四人掛けのクロスシートには、ご丁寧にテーブルまで付いていて、読書をしたり、ノートパソコンを広げたりするのにとても便利だ。車内にはトイレの設備もあり、快適な列車の旅を楽しむことができる。ただ、車内は恐ろしく冷房が効いていた。

 私たちが乗車してしばらくすると、車掌さんが、
「切符を拝見します」
と言いながらやって来た。私たちはBritRail Passを提示して乗車券チェックにパスした。

 イギリスの鉄道は、自動改札が採用されている地下鉄は別として、基本的には乗車時も降車時もノーチェックだ。しかし、車掌さんに「切符を拝見します」と言われたときに切符を提示できなければ、およそ五〇ポンド(一ポンド二百四十円として、日本円でおよそ一万二千円)のペナルティが課せられることになっている。

 一時間余りで終点のソールズベリーに着いた。ソールズベリーは、ロンドンからおよそ二百キロ離れたところにある。そこから更にストーンヘンジ行きの直行バスに乗り換えて、私たちは目指すストーンヘンジへと向かった。直行バスは、ロンドン市内でも良く見掛ける二階建てバスだった。

 直行バスから見える景色は、まるでミステリーサークルでも出没しそうなくらいのどかな風景だった。そう言えば、私は昔、ミステリーサークルにどっぷりはまったことがある。結局のところ、ミステリーサークルは人為的なものだったという結論に達したようだが、実際はどうなのだろう。人為的なものだと発覚してから、ミステリーサークルは発見されていないのだろうか。日本からの飛行機がヒースロー空港に到着する前に、飛行機の窓からイギリスの田園風景が見えて来たとき、私は窓際に座っていたガンモに、
「ミステリーサークルは見える?」
としきりに尋ねた。ミステリーサークル好きの私は、イギリスで畑を見ると、すぐにミステリーサークルと結び付けたがるのだった。ストーンヘンジまでの二十分、私は目を皿のようにしてミステリーサークルを探したが、見えて来たのは馬や羊の放牧と、北海道で見たような干草の丸い塊だけだった。

 イギリスの美しい田園風景を眺めながら、私たちの乗った直行バスはようやくストーンヘンジに到着した。すぐ近くの駐車場には、自家用車やツアーバスが何台も停車していた。ストーンヘンジは世界的に有名な世界遺産なので、世界各地から訪れる人が多いのだろう。私たちは入場料を支払って、中に入った。

 今回、ストーンヘンジを観光することになったのは、私が勤務先のパソコンの壁紙に、ストーンヘンジを使用していることをガンモに話したことがきっかけだった。誰かが撮影した写真を壁紙にしているならば、自分で撮影した写真を壁紙にしようじゃないかということになったのだ。私が勤務先のパソコンで使用している壁紙には、観光客はただの一人も写ってはいなかった。しかし、実際にストーンヘンジに足を運んでみて思ったのは、ストーンヘンジを一目見ようと世界各国からたくさんの人たちが集まって来ているというのに、私が職場のパソコンで使用している壁紙に観光客の姿が写っていないのは不自然だということだった。私が職場で使用している壁紙のような写真を撮影するには、他の観光客が写真に写らないように、
「みなさん、すみません。本格的な写真を撮りたいので、しばらくストーンヘンジから離れてくださいませんか?」
とお願いしたのだろうか。もしそうなら、写真を撮りたいという誰かの欲望のために、観光客が一時的にストーンヘンジから離れたわけで、そのような写真を撮るということが、傲慢な行為であるかのように思えてしまったのだ。観光客が写っていない写真だけが素晴らしい写真ではない。観光客が写っていてもいいじゃないか。それが、本物のストーンヘンジの姿だ。私は、観光客の写らないストーンヘンジの写真は、どこか人為的に作られた写真であるかのように思えた。

 ストーンヘンジの周りには、放牧の羊がいる。私は、彼らにもっと近付きたいと思ったのだが、人間と彼らの間には十数メートルほどの距離があった。まず、彼らの周りは電気の通る柵が巡らされていた。彼らがその柵を乗り越えようとすると、電気が流れるらしい。おそらく、電気の柵の犠牲になった羊たちがいて、ここから逃げようとすれば自分も同じ目に遭うという恐怖を植えつけられているのだろう。そうした方法で、羊たちが逃げ出さないような秩序が保たれているのだった。こうした電気の柵は、放し飼いの動物園などでときどき見掛けるが、目にする度に心が痛む。電気の柵から十数メートル先に、人間たちの境界を示す柵がある。その柵には電気は流れていない。人間の足で簡単に乗り越えられる簡単な柵である。どうやら、人間たちは放し飼いされているわけではないらしい。ロンドンのスーパーには、羊のミルクが売られているが、こうした放牧により採取されたミルクなのだろうか。私は、ストーンヘンジの遺跡の写真を撮るのと同じくらい、羊の写真を撮った。動物は、存在してくれるだけで癒される。とてもありがたい存在だ。

 ストーンヘンジの周辺を回り、場所を変え、角度を変えながらストーンヘンジを撮影しているうちに、気付いたことがあった。もしかしたら、私にも観光客の写らない写真が取れるのではないだろうか。根気強くカメラを構え続ければ、それは可能かもしれない。私が職場で使用しているストーンヘンジの壁紙は、人為的な写真ではなかったかもしれない。私はそう思い、観光客の写らないストーンヘンジの撮影に挑戦してみた。その結果、私にも観光客の写らないストーンヘンジの写真を撮影することができたのである。あははは、私が職場で使用している壁紙の写真を撮影されたカメラマンの方、ごめんなさい。

 ストーンヘンジは、呼び掛けると返事をする石ではなく、紀元前から存在している環状列石である。これらの石がどのような意味を持っているかについては、諸説が飛び交っているらしい。私には、男女が両手を挙げて喜んでいるように見えた。ストーンヘンジの一部の遺跡は心ない人によって破壊されてしまったようだが、それでも、紀元前に造られた遺跡が今でも残っているというのは素晴らしいことだ。その遺跡を守ろうとする人たちの想いがずっと受け継がれているということである。

 私は、ストーンヘンジの周辺の芝生の上に寝転がり、大空を仰いだ。上限のない、突き抜けて行くような大空が私を包み込み、私の心は言い様のない喜びで満たされた。

※撮影した写真のスライドショーを貼り付けておきます。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 更新が遅れて申し訳rありません。朝、更新する前にホテルを離れてしまい、インターネットに接続できない状況が続いていました。ストーンヘンジは、もっと辺鄙な場所にあるのかと思っていたのですが、ソールズベリーからバスで二十分というのはとても意外でした。芝生があって、羊や鳥もいる、とてものどかで癒される場所でした。イギリスは、芝生が多く、お天気の良い日は芝生の上に寝転がっている人たちがたくさん居ます。日本は日差しが強過ぎるのか、公園や観光地の芝生の上に寝転んでいる人を見掛けることは少ないように思います。または、芝生に寝転がってリラックスできる季節が限られているのかもしれません。イギリスの田舎に来ると、北海道を思い出します。広大な土地があり、干草(?)が丸く束ねられているからです。干草(?)を丸く束ねる技術は、一体どこが開発したのでしょう。飛行機で十二時間も掛かる場所に、日本と同じ文化があるのは大変興味深いことであります。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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