National Railway Museumと9と3/4ホーム
BritRal Passを使用し始めて三日目の朝、私たちはハリーポッターで有名なキングズクロス駅からホグワーツ行きの列車に乗った。というのは冗談で、キングズクロス駅から特急列車に乗ってヨークへと向かった。
イギリスの列車は、特急券も指定券も別料金は必要なく、指定席も無料で予約できるのだそうだ。そのためか、私たちが乗車した特急列車は、予約でほぼ満席の状態だった。その席が既に予約済かどうかは、席の上に予約区間が印刷されたチケットが挟まれているのですぐにわかる。席の上にチケットが挟まれていなければ、その席は空いていることになるので、私たちはチケットが挟まれていない席を一生懸命探して座った。例え予約されている席であっても、予約された乗車区間に誰も乗って来なければ、予約はキャンセルされたことになるらしい。そういう席には、座ってもいいことになっている。最初のうち、私たちは隣同士の席を確保できなくてバラバラに座っていたのだが、私の隣の席が予約席だったにもかかわらず、予約された乗車区間に誰も乗って来なかったので、別のところに座っていたガンモを呼び寄せて並んで座った。
私たちが乗車した特急列車はとても豪華な車両で、車内に有料無線LANのサービスがあるほか、座席の横にはご丁寧に、パソコン用のACアダプタを差し込むことのできる電源コンセントまで用意されていた。私は、ホテルを出て来るときにノートパソコンと無線LANカードは持って出たが、ACアダプタは持って来なかったので、ちょっぴり悔しい思いをした。というのも、ホテルを出発するまでに「ガンまる日記」を書き上げることができなかったので、できればキングズクロスとヨーク間の往復四時間の移動時間を利用して書き上げたいと思っていたからだ。しかし、まさか自分の席の横に電源コンセントが用意されているとは夢にも思わず、往復四時間の間、私は古びたノートパソコンの電池をちびちび消費する羽目になった。
イギリスには、有料無線LANのサービスが実に多い。列車などに備え付けられているのは、三十分八百円弱から利用できる有料サービスだ。支払いは、無線LAN接続後の管理画面にアクセスしてクレジットカード情報を入力して済ませる。書き上げた「ガンまる日記」をアップするくらいなら、三十分で十分なので、私はロンドン滞在中、このサービスを合計二回ほど利用した。
ところで、私たちは何故ヨークに向かっているのか、よーく考えてみよう。実は、ガンモの希望で、ヨーク駅前にある国営のNational Railway Museumに足を運ぶためである。National Railway Museumには、イギリスの古い鉄道を中心に、現役を退いたたくさんの車両が展示されている。日本の0系新幹線も展示されているらしい。
物価の高いイギリスだが、大英博物館同様、国営の施設は入場無料となっている。しかも、私たちのように税金を払っていない外国人観光客であっても、入場無料にしてくれるのは大変ありがたい。イギリスにおける外国人観光者は、こうしたところでもイギリス国民の援助を受けていることになる。
館内に入ってみると、平日だというのに家族連れが多かった。やはり、夏休みがあるのはイギリスも同じのようだ。しかし、私たちのような外国人はほとんどいない。確かにそうだ。日本において、私たちが鉄道博物館を訪れるとき、外国人観光客とはほとんど顔を合わさない。他の博物館と違って、鉄道博物館は大々的な宣伝をしているわけではないので、外国人が訪れるには、余程念入りに調査をした人でないと、候補に上がらないのかもしれない。ガンモはロンドン行きを決めてからというもの、かなり念入りにイギリスについて調べていた。何しろ、四ヶ月もの間、毎晩、ベッドに入る前の数十分を、イギリスのガイドブックを読む時間に当てていたのだから、知識も増えるはずである。今回の旅の計画を立ててくれたのもガンモだ。
私たちは、順番に館内を見学して回った。その中に、イギリス王室向けに造られた車両があり、ため息が出るほど豪華だった。王室のためにわざわざ豪華な客室を用意するということは、ある意味、国民に対する差別にもなりかねないのだが、現役を退いたあと、このような鉄道博物館に展示されることで、多くの人たちがため息を吐くほどの体験をさせてくれるのならいいのではないだろうか。
屋外に出てみると、大人や子供を乗せたミニレールが運行されていた。ミニレールの利用は一回五十ペンスである。五十ペンスは一ポンドの半分なので、日本円にしておよそ百二十円くらいだろうか。日本でも、鉄道関係の催し物に足を運ぶと、ミニレールのサービスが大人気である。通常よりも小さなサイズのものに憧れるのは、人間の心理かもしれない。私たちはミニレールの利用券を購入し、長い待ち行列に三十分ほど並んだ。
ようやくミニレールに乗車できる順番が回って来た。ミニレールは、電気自動車のような仕掛けだったが、ちゃんとレールの上を走り、すぐに折り返して帰って来る。私たちは童心に返って、わずか数分の旅を楽しんだ。
ミニレールに乗車したあとは、いよいよ日本の新幹線の登場である。別棟に移動してみると、いきなり見慣れた懐かしい車両が視界に飛び込んで来た。古い古い0系新幹線である。中に入ってシートに腰を下ろすことができるからだろうか。イギリスの人たちも新幹線には興味津々のご様子で、室内のモニタから鑑賞できる新幹線の映像を熱心にご覧になっていた。私は、
「日本では、もっと新しい新幹線が走っているんですよ」
と言いたいのに、なかなか言えないもどかしさを感じていた。そのとき、はっと我に返ったのは、私が日本の鉄道博物館で外国の車両を見掛けたとしても、その車両が既に引退した古い車両ではなく、最新の車両だと思い込んでしまうだろうということだった。だから、わざわざ外国から車両が運ばれて来て、鉄道博物館に展示されるという時点で、それはその国の最新の車両だと思われても仕方がないのだ。
私たちは、National Railway Museumで有意義な数時間を過ごし、再び同じ特急列車に乗って、キングズクロス駅に戻って来た。キングズクロス駅と言えば、是非とも見ておかなければならないものがある。そう、ハリーポッターに出て来る9と3/4ホームだ。私たちは、ひとまず9番ホームを目指した。きっとそのあたりに9と3/4ホームがあるはずである。あった、あった! 9と3/4ホームはわざわざ探す必要もなく、9番ホームを目指すだけですぐにわかるところにあった。そこでは、既に誰かが記念撮影をしていたが、間もなく撮影が終わり、私たちが撮影できる順番が回って来た。
キングズクロス駅の9と3/4ホームには、ホームのプレートが貼られ、半分だけ壁に食い込んだカートが置かれていた。ハリーポッターの中では、カートに荷物を積んで、勢い良く壁に飛び込むと9と3/4ホームが開くことになっている。そこで私たちも、力任せにカートを押して、いかにも壁の中に入り込もうとしているようなポーズを取って、それぞれが記念写真を撮った。
私たちが壁の中に入り込むことができなかったのは、ダイアゴン横丁で教科書を揃えることができなかったからかもしれない。もともと私たちはマグルのお金しか持っていなかったし、9と3/4ホームの案内は見つけられても、ダイアゴン横丁への案内図は出ていなかったので、仕方がない。ハリーのように、ダイアゴン横丁までハグリットが案内してくれるわけでもないのだから。
ハリーポッターに忠実に9と3/4ホームがあり、壁に半分だけ食い込んだカートが置かれているところ。それがイギリス人のユーモアなのだと思う。日本人なら、9と3/4ホームまでは作っても、壁に半分だけ食い込んだカートは置かないのではないだろうか。イギリス人のユーモアに感心した私たちである。
※撮影した写真のスライドショーを貼り付けておきます。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今日も鉄分の多い記事となってしまいました。(^^; でも、ハリーポッターで締めくくったので、許してやってくださいな。皆さんは、夏休みをご満喫中でしょうか。故郷などでのんびりと過ごされている方も多いかもしれませんね。私は、一足早く夏休みをいただいたので、この一週間は仕事に出ています。でも、出勤している社員の人たちも少ない上に、定時で上がることができるので、身体はとても楽ちんです。何しろ暑い日が続いていますので、夏バテと冷房の当たり過ぎには十分ご注意くださいませ。
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