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2007.07.01

映画『ボルベール<帰郷>』

 週末は、二日間続けてホットヨガのレッスンに出掛けた。しかし、ホットヨガの記事が連続してしまうので、レッスンの帰りに観た映画『ボルベール<帰郷>』のレビューを書かせていただこうと思う。

 この映画は、大きな劇場で観るにはあまり馴染みのないスペイン映画である。しかし、映画館で予告編を観たときから、とても気になる映画だった。流れている音楽と、映像から伝わって来るスペイン人の熱い気質が私の観たい情熱を掻き立てたのだ。公開されたら是非とも観に行こうと思っていたところ、ホットヨガのレッスンが千円で映画を観られる「映画サービスデー」と重なった。ガンモは仕事で遅くなると聞いていたし、この映画の上映スケジュールも、ホットヨガのレッスンを終えて観るのにちょうどいい時間帯だった。しかも、私が映画館に着いたのは上映時間ギリギリの時間だったのだが、受付で発券してもらった指定席は、まるで私のために空けておいてくれたかのような良く鑑賞できる席だった。

 他の映画の予告編が終わり、いよいよ本編が始まった途端、私はこの映画の世界に引き込まれた。いきなり、心地良い風が吹く中で、何人もの女性たちが一生懸命お墓を磨いているシーンが映し出されているのである。お墓を磨いているのがほとんど女性たちばかりであることから、日本のお彼岸などに見られる光景とは異なっていることが想像される。そのような光景を目にすれば、一体何事かと思うだろう。この映画の舞台となっているスペインのラ・マンチャでは、生きている間に自分のお墓を購入し、そのお墓をせっせと磨く習慣があるのだそうだ。しかし、そうした習慣を映像で見るのは、何とも不思議な気がするものである。

 冒頭に登場する何人もの女性たちが象徴するかのように、この映画には、全体を通して男性がほとんど登場しない。それはまるで、Dというコードで始まる曲がやはりDのコードで完結するのが音楽の世界の暗黙の了解であるように、冒頭の映像が映画のすべてを象徴しているのである。男性が登場したとしても、死んでしまったり、街を出て行ったりする。つまり、この映画の登場人物の多くは女性だということだ。その中でも、主演女優のペネロペ・クルスがとりわけ美しい。これまでに、彼女の主演作は『赤いアモーレ』を観たが、今回の役柄のほうが彼女の美しさを一層際立たせている。

 スペイン映画を見慣れない私にとっては、映画の中で交わされるアクションの大きい抱擁とキスがとても新鮮だった。日本では、あいさつ代わりにキスをするような習慣はないが、スペイン人のキスは、アメリカ映画などに見られる簡単なキスよりも濃厚で愛情深く見えた。抱擁しながら、相手の耳元で「チュッチュッチュッチュ」と大きな音を立ててキスを交わすのである。

 映画のジャンルとしては、ヒューマンドラマに相当するのだろうか。少なくともラブストーリーではない。殺人事件が絡むが、サスペンスものでもない。死んだはずの母が戻って来るが、ホラーでもない。映画の内容を一言で表現すると、血縁の絆を取り戻すプロセスを描いた作品と言っていいのかもしれない。血縁が失ってしまった絆を取り戻すプロセスとして、殺人事件が絡んで来るのである。殺人事件の背景には、旺盛な性欲という因果がある。殺人事件が明るみになってしまうかどうかで、私たち観客は手に汗を握りながらストーリーが展開して行く様子を見守ることになる。殺人事件が明るみにならないようについつい祈ってしまうのは、いつの間にか登場人物の生き方に共感しているからなのだろう。

 男性がほとんど登場しないこの映画を通して監督が表現したかったものは一体何だろう。血縁の絆の素晴らしさを描くなら、殺人事件を絡めなくても表現できるはずだ。では、女性性だろうか。それとも、母性だろうか。実際は、夫婦関係がうまく行っていなかったという死んだはずの母。離婚したあと自宅で美容院を営みながら独り暮らしをしている姉。娘に異常な性欲を示した夫と結婚していた妹。生涯結婚することもなく、末期癌に侵され、静かに死を待つ女性。女性だけの世界に偏っていると言えば偏っている。監督は、男性たちに失望した女性たちも、強く生きて行けることを描きたかったのだろうか。それとも、女性が快適に生きて行くには、むしろ男性の存在など邪魔だということなのだろうか。

 描かれているのは特異な世界なのだが、どういうわけか、この映画には赤いイメージがつきまとう。それは、血の赤なのか。それとも、火事で燃え盛る炎が示す赤なのか、はたまた、映画の中には出て来ないがスペインの闘牛士が使う赤いムレタの色なのか。あるいは、情熱の赤なのか。とにかく二時間、スクリーンからずっと目が離せない映画だった。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ヨーロッパ映画は、人間の感情が細やかに表現されているという点で、アメリカ映画とは明らかに違っていますね。その分、暗いイメージを伴う作品も多いかもしれませんが、エンターテイメント系の映画のようにその場限りではなく、しばらく余韻が残るのが特徴です。この映画は、情緒的なものを感じたい人にはお勧めの映画です。公開されたばかりですので、情緒的なものを感じたい方は是非。(^^)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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