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2007.04.27

心の友よ

 鍵を失くしたと慌てているガンモに、
「今、どこにいるの?」
と尋ねてみると、ガンモは自宅近くの顧客の名前を答えた。どうやらガンモは、仕事中に顧客から預かった鍵を失くしてしまったらしい。鍵を失くしてしまったとわかってから、かれこれ一時間半以上も探し回っていたらしく、いつもの冷静なガンモとは様子が違っていた。
「ガンモ、落ち着いてよ。ガンモはいつも冷静に行動してるじゃない? ガンモらしくないよ。とにかく落ち着いて。鍵は絶対出て来るから。冷静になってじっくり探せば、きっと出て来るから」
と私は言った。単に励ますつもりで言ったのではなく、私の中には、鍵は必ず見つかるという確信めいたものがあったのだ。私の一言でガンモは我に返り、
「わかった、ありがとう」
と言って、いったん電話を切った。

 その後、私はガンモが探している鍵が見つかることを心から祈った。そして、ガンモが鍵を探している様子を頭の中でイメージした。すると、突然、緑色の何かが頭に浮かんで来た。その緑に強いインスピレーションを感じた私は、ついさっき切ったばかりの携帯電話を取り出して、もう一度ガンモに電話を掛けた。直感的に、ガンモが失くした鍵は緑色の何かの近くにあることがわかったのだ。
「ねえ、ガンモ、あのね、緑・・・・・・」
と言いかけたところ、ガンモは私の言葉を遮(さえぎ)り、
「そう、緑だから。緑の鍵束を探してるんだよ。何でわかった?」
と言った。予想外の展開に、私は驚いた。私は緑色の何かの近くに失くした鍵があるというインスピレーションを得たというのに、ガンモは緑色の鍵束を探していると言うのだ。私が得た緑のインスピレーションは、ガンモの探している鍵束の色だったのだろうか。私はどこか腑に落ちない感覚を残しながらも、再びガンモを励まし、電話を切った。

 自転車乗って自宅に向かって走っていると、ガンモから電話が掛かって来た。ガンモは息をはずませながら、
「鍵、あったから! まるみ、ありがとう!」
と喜びの声をあげた。ガンモの話を聞いてみると、床を這いずり回りながら、かれこれ一時間半以上も鍵を探し回っていたのに、私が電話を掛けてから、ものの数分のうちに探していた鍵が見つかったのだそうだ。私が「冷静になれ」と言ったことで、ガンモは冷静さを取り戻し、鍵を失くした直後の状態からシミュレーションを始めたのだと言う。そして、ここで失くしたとしか思えない場所を特定し、その周辺を徹底的に探したのだそうだ。何と、失くした鍵は、ガンモの仕事用のカバンの中から見つかったと言う。そして、その近くには確かに緑色のものがあったそうだ。更に驚いたことに、ガンモは失くした鍵束の色は緑色だと言ったが、実際は、紫色の間違いだったと言う。ガンモはとにかく気が動転していて、鍵束の色が緑色だという妙な思い込みがあったらしいのだ。
「確かに緑色のものの近くに鍵はあったけど、まさかカバンの中に入ってるとは思わなかったから、緑色のものの近くにあるとまるみに言われても気付かなかった」
とガンモは言った。何はともあれ、鍵が見つかったのだから、とにかくめでたしめでたしである。

 ガンモは、鍵が見つかったことがうれしくてたまらなかったようだ。というのも、ガンモは翌日、仕事が休みの予定だったのだが、一時間半以上も探して見つからなかったので、休みを返上して部長と一緒に鍵を失くしてしまった顧客を訪問し、謝罪する覚悟でいたらしいのだ。しかし、鍵が見つかって、その緊張感からすっかり解放されたので、ガンモは大いに喜んでいたのである。

 私が自宅に着く頃、ガンモはもう一度電話を掛けて来た。とにかく鍵が見つかって、うれしくてたまらないらしい。私に向かって、
「心の友よ、今、どこなの?」
と聞いて来た。私が、
「もうすぐマンションに着く頃だよ」
と言うと、
「俺ももうすぐ着くから(ガンモは自宅近くの顧客で仕事をしていたので、歩いて帰宅していた)、一緒にエレベータに乗ろうよ、心の友よ」
と言った。

 ガンモが歩いているという方向に目をやると、確かにガンモが仕事用の重いカバンをコロコロ転がしながら歩いているのが見えた。私は心の友のガンモに手を振った。再会したガンモは、私のことを度々「心の友よ」と呼び、私の前で失くした鍵を見つけるまでのプロセスを事細かに説明してくれた。その説明を聞いていると、ガンモが興奮しているのが良くわかった。

 私たちはとても不思議な相性だと思う。私が慌てているときはガンモが落ち着いていて、私が冷静なときはガンモが冷静さを失っている。普段は似たもの同士の二人なのに、いざというときにはカバーし合える、とてもいい関係である。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 「確信めいた予感」は必ず当たる傾向にありますよね。事実のほうが感覚よりも先にやって来るのでしょうか。感覚は曖昧ですが、事実を感じるのは素早く、そして正確であるように思います。反対に、自信のない答えは当たっていないことが多いようにも思います。このような感覚をもう少し研ぎ澄ませて行きたいものです。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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