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2007.03.19

運命のネジ(後編)

 運命のネジを手にして帰路についた私は、時間も遅かったので、自宅近くの飲食店でガンモと落ち合った。ガンモにそのネジを見せると、ガンモはポケットの中から、私の自転車の前輪に残っていたネジを取り出した。ガンモがそのネジを持っていたのは、自転車屋さんに出向き、このネジと同じものがあるかどうか尋ねたかったらしい。ガンモは二つのネジを飲食店のテーブルの上で重ね合わせた。それらはピタリと重なった。しかも、私が十年間乗り続けた自転車に残っていたネジと、自転車屋さんからいただいた錆びたネジは、使い込まれた金属の材質も雰囲気も、まるで双子のようにそっくりだった。ガンモは二つのネジを眺めながら、
「こいつら、今から再婚するから」
と言った。そのとき、私の頭には、鳩の父ちゃんと母ちゃんの姿が浮かんだ。

 夜も遅かったが、ガンモは翌日から鳥取に一週間の出張に出掛けることになっていたので、帰宅してすぐにタイヤの交換作業に取り掛かった。ガンモはまず、古い前輪のタイヤのゴムとチューブをすっかり取り外した。そして、新しいタイヤとチューブを前輪にセットし始めた。通常のパンク処理ならば、チューブを水に浸して、穴が空いているところを探し出すのだが、今回は消耗が激しいことから、チューブごと取り替えることになったのである。

 外はとても寒かったので、私は熱心に作業をしているガンモの首にマフラーを巻きつけた。それでもまだ寒かったので、今度はガンモの頭に毛糸の帽子をかぶせた。私は、ガンモの首にマフラーを巻いたり、毛糸の帽子をかぶせたりするのがとても好きだ。見るからに寒そうなので、マフラーや帽子によってガンモが暖かくなると、私まで幸せな気持ちになって来るのである。

 タイヤの交換作業は、タイヤの中に空気の入っていないチューブをしまい込み、少しずつ前輪に取り付けて行くのだが、ガンモが一人で作業をしていると、タイヤが前輪からはみ出してしまうこともしばしばだった。そのため、ガンモはじっと見守っている私に向かって、
「チューブをタイヤに差し込んだままの状態で、ここを押さえてて」
と声を掛けて来た。ガンモに言われた通りに手で押さえていたところ、
「二人でやると早い!」
とガンモが喜んでいた。

 みるみるうちに新しいタイヤとチューブが前輪に取り付けられた。今度はそれに空気を入れる。ポンプから空気を送り込むと、タイヤは伸びをするように起き上がった。続いて、そのタイヤを自転車に固定させる。ここでいよいよ運命のネジの出番である。私は、ガンモの指図通り、ガンモが前輪を取り付け易いように、自転車のハンドルを持ち上げた。するとガンモは、みるみるうちに自転車に前輪を取り付けた。その間、
「やっぱり二人でやると早い」
と喜んでいた。

 私はいつも、ガンモにパンク修理を任せっきりで、まったく手伝っていなかった。しかし、自転車のメンテナンス作業には、手で固定させることで作業が捗(はかど)ることが多かった。そうした作業から、女性は遠ざかってしまいがちなのだが、例え機械に疎くても、機械に強い人をサポートすることはできるのだ。

 こうして私の自転車は元通りになった。ついでに、ベルやミラーもメンテナンスしてもらった。ベルは、ずっと壊れたままだったので、この機会に新しいものに取り替えた。ミラーは、ある時期から邪魔になって倒していたのだが、再び起こしてもらった。

 取り替えてもらった前輪のタイヤは、ゴムの突起が新しいためか、回転するときゅっきゅっと音を立てた。実は、このタイヤは、骨董市に出掛けたときに安く購入しておいたものである。骨董市には、自転車のパーツを安く売っているお店があり、私たちはタイヤをはじめ、自転車の籠やライトなどを格安で購入しているのである。

 今回のメンテナンス作業で、タイヤのストックがなくなってしまった。そこでガンモは、
「俺が鳥取に行ってる間、骨董市に行って、タイヤを買って来てくれ」
と言った。私は、
「うん、わかった」
と答えた。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 少々大げさですが、運命のネジは、めでたく運命の出会いを果たし、見事に私の自転車を復活させてくれました。ネジが一つ足りないだけで自転車を乗り換えるのは、実にもったいない話ですよね。今回、特にありがたいと思ったのは、ネジを分けてくださった自転車屋のおじさんと私が運命的に出会えたことです。そして、自転車を自分で修理するのが好きなガンモが運命的に私の夫であったことです。これらの要因が重なり合わなければ、私の自転車は蘇らなかったのです。そうしたことからも、私のところにやって来たネジは、来るべきところにやって来た、運命のネジであったと言えましょう。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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