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2007.03.17

ホットヨガ(三十七回目)

 私が、ホットヨガの予約を入れると言うと、ガンモは、
「土曜日は、久しぶりに家でゆっくりしようよ。日曜日なら俺は事だから、まるみはホットヨガに行けばいい」
と提案して来た。確かに先週も旅に出掛けていたので、土曜日くらい家でのんびり過ごすことにしようか。そう思って、私はホットヨガの予約を入れなかった。

 ああ、久しぶりに自宅でのんびりできる土曜日だ。旅に出掛けて行くこともわくわくして楽しいのだが、自宅でのんびり過ごす休日も大好きだ。本を読んだり、デジタルカメラで撮影した写真を整理したりと、旅に出掛けていてはできない作業ができる。そんな思いが膨らんでいたのに、午前中、ガンモに仕事の電話が入ってしまい、ガンモは仕事に出掛けて行くことになった。休日といえども、ガンモは待機要員(客先にトラブルがあればすぐに出動する当番)だったのだ。

 ガンモの仕事は夕方まで掛かりそうだと言うので、私はホットヨガに出掛けようと思っていた。そして、出掛けて行くガンモに、
「行ってらっしゃい。じゃあ、私もホットヨガに行くからね」
と言って送り出した。ガンモも、
「うん、わかった」
と言って出掛けて行った。

 それから私は、ホットヨガの神戸店に電話を掛けてレッスンの予約を入れた。支度を整えて、駅まで向かう途中でガンモに電話を掛けた。
「これからホットヨガに行って来るよ」
するとガンモは、
「ええっ? 俺はそろそろ上がろうとしてるのに」
などと言うのだ。私はその一言にムカッと来た。もともと、土曜日は家でゆっくりしようと言ったのはガンモのほうだった。それなのに、ガンモは夕方まで仕事が入ってしまい、私は急遽、ホットヨガの予約を入れた。すると今度は、自分の仕事がそろそろ終わりそうなのに、などと言う。
「こらこら、私を振り回すな。私はホットヨガに行くよ」
と言って電話を切った。このあと、仕事が片付き始めていたはずのガンモは、何故か仕事にはまってしまい、結局、私がレッスンを終える頃まで仕事に専念していたらしい。

 神戸店での休日の昼間のレッスンは久しぶりのことである。着替えを済ませてスタジオに入ると、フリーパス会員の女性がいた。彼女のすぐ近くのヨガマットが空いていたので、私はそこに座った。ここで、
「いつもお会いしますが、フリーパスの会員さんですか?」
などと話し掛ければドラマになったのだろうが、小心者の私にはそれができなかった。憧れの女性がすぐ近くにいるというのに、あまりジロジロ見てしまっては失礼だと思い、わざと無関心な態度を装っていた。

 インストラクターは、顔なじみのインストラクターだった。コースによって、担当が決まっているのかもしれない。今回、珍しいと思ったのは、ビギナーコースで何度もインストラクターを担当してくださっていた方が、一緒にレッスンに参加していたことだ。しかし、このことは、奇跡というか、のちにあらかじめ用意された出来事として繋がって行くのだ。

 レッスンが始まってからしばらく経って、遅れて入って来た女性がいた。彼女は私の斜め前の空いているヨガマットにやって来た。レッスンの途中、彼女は一度、スタジオから出て行った。トイレに行ったのか、スタジオの外の涼しい空気に触れたかったのか、それはわからない。彼女がスタジオに帰って来てからしばらく経って、バランスのポーズに入ったとき、私の目の前でポーズを取っていた彼女がぱたんと倒れた。一瞬、スタジオ内に緊張が走った。インストラクターもすぐに彼女が倒れたことに気づき、
「すみません、ちょっと休憩を入れます」
と宣言して、倒れた彼女のところに駆け寄り、彼女を起こしてスタジオの外に連れて行こうとした。しかし、実際にその作業を請け負ったのは、一緒にレッスンを受けていた別のインストラクターだった。

 緊張の中で、私は、インストラクター同士の言葉にしない連携プレイをじっと観察していた。多くの言葉を必要とせず、自分たちにとって何が一番大切かということを的確に判断しながら行動されていた。レッスンを担当してくださっていたインストラクターにしてみれば、別のインストラクターに彼女の付き添いを任せてしまうことで、レッスンを中断せずにいられた。そのことが、一緒にレッスンを受けていたインストラクターにもわかっていた。

 もう一つ、思ったことがある。それは、ヨガマットの役割の大切さである。彼女は私の目の前でばたんと倒れた。倒れるときは、自分自身の身体をかばう余裕などない。打ち所が悪ければ、危険である。幸い、彼女の立っていた場所にはヨガマットが敷かれていた。ヨガマットがクッションになり、彼女の身体の一部を守っていた。

 途中、レッスンを担当してくれていたインストラクターがスタジオの外に出て行き、その後の彼女の様子を確認したところ、スタジオの外に出てからの彼女は、すっかり元気を取り戻していたと言う。しばらくすると、彼女に付き添っていたインストラクターが入って来て、彼女の持っていた水を運び出して行った。おそらく彼女は、元気になって歩けるようになり、帰宅することになったのだろう。やがて、彼女に付き添っていたインストラクターもスタジオに戻り、再び一緒にレッスンを受けていた。

 レッスンが終わり、ロッカーの鍵を返すために受付に行くと、さきほどのレッスンを担当してくださったインストラクターがいた。インストラクターは、私たちがレッスンに集中できなかったのではないかと気遣ってくださった。私が、
「そんなことありませんよ。確かにびっくりしましたけど。でも、別のスタッフの方がいらっしゃって良かったですね」
と言うと、
「そうなんです。本当にたまたま居合わせてくれたんですよ」
とおっしゃっていた。私としても、これまで神戸店で何度もレッスンを受けているが、別のインストラクターが一緒にレッスンを受けている光景には出くわしたことはなかった。たまたまそのときに倒れた人がいるということは、いろいろな意味で不幸中の幸いだったのではないかと思えた。

 今、この記事を書きながら、何故か感動が込み上げて来る。自分の取るべき行動に迷うことなく対処されたインストラクター同士の連携プレイと、それが起こったタイミング、それからヨガマットの存在、スタジオの外に出ると元気になったという彼女。それらの出来事は、私の胸にいろいろなことを焼き付けて行った。

 スタジオを出て、ガンモに電話を掛けてみると、あれから仕事にはまってしまい、ようやく仕事を上がれそうだと言う。何だろう、この絶妙なタイミングは。ガンモは車で仕事に出掛けていたので、私がガンモの仕事先の最寄駅まで電車で移動し、車に乗ったガンモに拾ってもらって一緒に帰宅したのである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ホットヨガは三十八度の室温、六十五パーセントの湿度に保たれたスタジオで行うので、体調によっては身体に負担がかかりやすいのかもしれません。彼女がいったんスタジオの外に出て行ったのも、自分の身体と対話してのことだったのだと思います。それにしても、見事な連携プレイを拝見させていただきました。私たちが互いに連鎖し合いながら生きていることを実感させられるような、とても感動的な出来事でした。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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