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2007.02.23

バグズ・ライフ

 いつもより早く起きて支度を整えていると、ガンモも一緒に起きて来た。
「何、ガンモも今日は早いの?」
と尋ねると、
「大バグがあるから、早く仕事に行かなきゃ。バグズ・ライフ」
などと言う。ご存知の通り、バグというのはプログラムの不具合のことである。ガンモはそのバグにわざわざ大を付けて、今回のバグの重大性を強調した。バグズ・ライフというのは、十年近く前にMacのゲームにも登場した映画のキャラクターだ。バグズ・ライフ、すなわち虫の生活が表現されている。特に私のようなソフトウェア技術者にとって、バグズ・ライフという響きは、それほど楽しいものではないはずだ。

 大バグ、バグズ・ライフなどと言われても、大バグを抱えているのはガンモではなく、この私だ。おそらく、ガンモがいつもよりも早起きしたのは、自分の仕事の都合だろう。それでもガンモは自分の仕事の都合だとは言わず、
「大バグを出した人の夫としても、早起きしないといけないからね」
などと言いながら、支度を始めていた。

 結局ガンモは、比較的遠方の顧客のところで仕事が入っていたらしく、私よりも早く家を出て行った。私は、ガンモが出掛けたあとに、いつもよりも三十分早く家を出た。三十分も早いと、通勤電車の混み具合がまったく違う。同じ通勤ルートを通っているはずなのに、まるで別世界にいるかのようだった。

 地下鉄三宮駅に降りて行く階段で、前日のお食事会で一緒だった派遣仲間とばったり会った。彼女は今、三宮の企業で働いているのだ。いつも、この時間に出勤しているらしい。三十分早く家を出ただけで、同じ通勤ルートでも出会う人たちが違って来る。もしも自分の環境を変えたいと思うなら、生活時間を変えてみるのもいいかもしれないと私は思った。

 出勤してみると、今回の欠陥がグループ内で既に大問題になっていた。いろいろな人たちを巻き込みながら、みんなで知恵を出し合って、原因を究明して行く。そして、ようやく怪しい箇所を割り出した。詳しくは書けないが、どうやらこの欠陥は、様々な要因が重なって発生しているらしい。単刀直入に言ってしまえば、私が他の人から引き継いだ私の担当部分に障害が発生している。そして、そのプログラムを修正できる一番の候補は私だった。

 深刻な状況に陥り、グループ全体の取りまとめをしているリーダーが私のところにやって来て、
「最悪の場合だけど、明日、休日出勤できる?」
と聞いて来た。
「ああ・・・・・・」
と私は困った顔をした。週末は、ガンモと二人で旅行に出掛ける予定が入っているのだ。私は正直に、
「申し訳ありませんが、旅行の予定が入っていて、神戸を離れてしまいますので、休日出勤はできません」
と答えた。例え深刻な状況に陥っていたとしても、旅行をキャンセルしてまで休日出勤するほどの状況までには至っていないだろうと判断したからだ。

 そうこうしているうちに、ようやく回避策に辿り着き、私はプログラムを修正することができた。そのプログラムを使って、再び様々なOSで動作確認テストを行う。何はともあれ、皆目検討が付かないという状況からは回避できて、何とか目処が立った。帰り際に、一緒に仕事をしている男性に休日出勤をするのかと尋ねてみると、何とか目処も立ったので、今の状況ならば休日出勤しなくても大丈夫だろうということだった。ただ、これからおよそ一週間掛けて本格的にプログラムを修正して再テストを行い、再納品することになるので、それまでは気を引き締めて頑張りましょうということになった。

 実は、今回の欠陥は、納品直前に発生していた現象でもあった。しかし、別の手段でその現象の正当性を確認し、この結果ならば問題ないだろうと判断し、そのまま納品へと進んだのである。あのとき立ち止まって原因を追求してしていれば、納品の期日には確実に間に合わなかっただろう。現在は、いったん納品したものが世の中に出回る前にCD-ROMに焼き付けられ、そのCD-ROMの内容に問題がある場合はプログラムを修正して再納品できるチャンスの期間でもある。だから、欠陥が見つかったとは言え、修正の猶予が与えられていると言っても過言ではないのである。むしろ、あのドタバタ劇の中で、この欠陥が確定してしまったときのほうが恐ろしい。

 それにしても今回のことで、新しいことにチャレンジしたり、これまで使っていたものとは違うものを新たに導入したときは、より多角的な方面からテストを行う必要があることを思い知らされた。一つ一つの要因は大きな力を持っていなくても、別の要因と重なったときに大きな力を持ち、重大な欠陥として現れることがある。様々な出来事が互いに作用し合っていることを再認識させられるような現象だった。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 今回の出来事は、日常生活にもそのまま応用できるように思います。何か気がかりな現象が発生しているときは、やがて別の何かと連鎖して、大きな出来事を生み出そうとしているというメッセージを送ってくれているのかもしれません。でも、その大きな出来事は、しかるべきときに起こるように、万全の準備を整えていると思います。今、こうしてみんなで知恵を出し合うことができるのも、一旦納品を終えた今の時期だからこそ実現できることだと思っています。そう考えると、メッセージが送られているときに食い止めることが、常に最善の策ではないような気がします。その先に起こるであろう、激しくて感動的なドラマを体験することができないからです。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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