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2007.01.04

スタンドアローン

 特急列車が私の実家の最寄駅に着くと、私の父母が駅まで車で迎えに来てくれていた。今回は、急な帰省になってしまったにもかかわらず、父母は私たちをあたたかく迎えてくれた。父は、少し痩せたようである。聞いてみると、時間を見つけては一生懸命歩いているのだそうだ。仕事の休憩時間だけでな、寝室にもルームランナーを置いて、身体を動かすことに喜びを見出しているようだった。歩き続けることで、既に五キロも痩せたとかで、もっともっと歩いてもっともっと痩せるのだと意気込んでいた。

 私たちはその足で、祖母の入院している病院へと向かった。祖母が入院してからもう八年にもなろうとしている。その間、母は献身的に祖母の世話をして来た。このあたりの事情に関しては、以前、祖母の涙に書いた通りだ。

 祖母は、私がお見舞いに行く度に病室が変わっている。母は、他の患者さんのお見舞いにやって来る人たちや、看護師さんたちと親しそうにコミュニケーションを取っていた。出会う人をすぐに友達に変えてしまうのは、母の特技でもある。

 かつては自転車に乗って元気に私の実家まで遊びに来ていた祖母は、私がベッドを覗き込んでも、もはや声を掛けてはくれない。それでも、母は一生懸命、祖母に語り掛ける。母が語りかけると、意志を持った祖母の瞳が遠慮がちに動く。祖母の瞳は、既に視力を失っているようだが、私を認識してくれているようにも見える。何故なら、声にはならないが、口を動かして何か語ろうとするからだ。

 同室の患者さんは、祖母と同じくらい高齢のおばあさんたちばかりだ。病室の奥のほうのベッドで寝ているおばあさんが、ぶつぶつと独り言を言っているのが聞こえて来る。また、祖母の隣のベッドで寝ているおばあさんは、手を差し出して何かを求めようとしている。母に尋ねてみると、手を差し出すのがそのおばあさんの癖なのだそうだ。

 手を差し出すおばあさんは、入院したての頃、特別室に運ばれたのだと言う。そのとき、
「警察が来る!」
と言って、自ら病室に鍵を掛け、誰も寄せ付けないように引き篭もってしまったのだそうだ。どうやらおばあさんは、自分が病院に運ばれたことに気づかず、逮捕でもされてしまったのかと思い込み、自らの身を守るために病室に鍵を掛けたらしいのだ。あろうことか、病院は、特別室の合鍵を紛失してしまっていたらしく、鍵を壊して、やっとのことで特別室を開けたのだそうだ。

 母はたまたま、そのおばあさんが住んでいる地域の近くで生まれ育っていたらしく、小さい頃からそのおばあさんの存在を知っていたそうだ。そして、特別室に出向き、そのおばあさんに向かって語りかけたのだと言う。最初に、自分は○○(亡き祖父の名前)の娘だがわかるかと語りかけ、おばあさんは病気になって病院に連れて来られたこと、決して警察に逮捕されているわけではないことなどを話して聞かせたそうだ。母の語りかける言葉を理解したのか、それ以来、そのおばあさんは落ち着いたそうだ。そのおばあさんが、今は祖母の隣でおだやかに過ごしている。このように、病院では様々なドラマが生まれているようだ。

 それから実家に帰り、母の手料理を食べた。母は、私たちが帰って来るとわかると、腕によりをかけてたくさんの手料理を作ってくれていた。以前も書いたが、母は私と違って、とても家庭的なのだ。母は、自分のことよりも、他の人の幸せをいつも一心に願っている。

 ずっと以前に、ガンモの自作パソコンを父にプレゼントしたことを書いたが、先日、私の弟が新しいパソコンを購入し、古いパソコンを処分するにもお金がかかるので、弟の古いパソコンを父が引き取ったらしい。現在、父がメインで使用しているガンモの自作パソコンよりも、弟から引き取ったパソコンのほうが性能が良いため、できれば弟のパソコンにシステム移行したいと父は考えていたようだ。しかし、弟から引き取ったパソコンのマウスが使えなくなってしまっていたので、まずは私たちにそれを見て欲しいとのことだった。

 接続を確認してみると、キーボードとマウスの端子が入れ替わって接続されていた。ガンモがそれに気づき、双方の端子を入れ替えてみると、マウスは正常に動作し始めた。立ち上がりの直後に動かすのはマウスなので、マウスが動かなくなってしまったと父は判断したらしい。父は、いつの間にかそのような設定になっていたことを驚いていた。

 弟が使っていたパソコンがめでたく立ち上がったので、ガンモはそのパソコンにMS Officeをインストールした。弟が使っていたパソコンにインターネットの接続環境を整えても良かったのだが、弟はインターネットにも他のネットワークにも接続しないスタンドアローン機としてそのパソコンを使用していたため、当然のことながら、OSの最新のアップデート等は適用されていなかった。インターネットに接続する環境を整えるなら、外部からの攻撃から守るために、膨大な量のOSの最新アップデートやセキュリティ関連のソフトウェアをダウンロードしなければならない。しかし、実家のダイアルアップ環境もしくは私たちのモバイル環境でダウンロードするのは困難を極めることから、断念するに至ったのだった。実家はまだまだブロードバンド環境ではないし、私たちのモバイル環境もまた、128Kと32Kという超ナローバンドだったからである。以前、ガンモが自作パソコンをプレゼントしたときは、自宅のブロードバンド環境から、OSの最新アップデートを適用させて、セキュリティ関連のソフトウェアもインストールしておいたのだ。ブロードバンド環境でさえ、OSの最新アップデートをダウンロードして適用するには何時間もかかってしまうので、ナローバンドでそれを実践するのは、とにかく気の遠くなる作業だったのである。

 おまけに、パソコンが二台あるというのに、弟が持って来たパソコンにはモデムが生かされていなかった上に、イーサネット(LAN)の口もなかった。しかも、フロッピーディスクドライブも壊れてしまっていたのである。そう言えば、父が使っているパソコンのフロッピーディスクドライブもずっと壊れたままだ。また、実家にはCD-Rを焼く環境もなかった。そのため、二台のパソコンのデータ移行は非常に困難だった。

 今、これを書きながら思い浮かべているのは、父に弟から引き取ったパソコンの本体を送付してもらうことである。そうすれば、我が家のブロードバンド環境でOSの最新アップデートを適用した上に、セキュリティソフトもインストールし、メモリも増設し、フロッピーディスクドライブも正常に動作するものにガンモが取り替えてくれるだろう。

 パソコンというものは非常に便利なツールではあるが、それ自体の中身がどんなに充実していたとしても、単にスタンドアローンで存在しているだけでは役に立たない。スタンドアローンのパソコンは、媒体やインターネットなどを通じて他と繋がることができてこそ、本当の価値が見出せるような気がしてならない。例えば、スタンドアローンのパソコンで仕事を仕上げるにしても、成果物をフロッピーなどの媒体に収め、パソコンの外に持ち出さなければ意味がないのだ。会社に行って、「自宅のパソコンの中に文書がある」と主張しても、宿題を忘れた子供のような立場になってしまうだけである。

 そういう意味では、きっと人間もパソコンと同じなのではないだろうか。そう考えると、急な来客を受け付けることができない私たちはまだまだスタンドアローンだ。それに対し、今回の帰省のように急な来客を受け付けてくれる実家や親戚は、スタンドアローンではないと言える。

 ここまでが、きのう、実家に帰宅してからの出来事である。このまま書き続けるとひどく長くなってしまうので、この続きは後日書かせていただくことにしよう。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 年末年始のお忙しい中、お越しくださいまして感謝致します。年が明けてからというもの、私はこのように、人間模様を綴るのが好きだったことを思い出しました。人と会って感じたことを綴って行くのが好きなのです。ところで、母によれば、父は、パソコン周りであちこち不具合が出ていたために、私たちの帰省をずっと心待ちにしていたそうです。私たちが帰って来たら、あれも見てもらうんだ、これも見てもらうんだと言っていたそうです。父自身からは、私たちに対して申し訳なさそうにそれらの言葉が出て来たので、父は私たちに対して遠慮していたのではないかと思え、何だかじーんと来てしまいました。父は昔から壊れたものを自分で直して使う人ですが、電気関係には強くても、パソコン関係はなかなか思うようにならないようです。そういう気持ちも察することができず、二年もご無沙汰してしまったのは、やはり親不幸だったかもしれません。それにしても、プレゼントしたものをいつまでも大事に使ってもらえるのは、とてもうれしいことです。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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