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2006.12.12

『ハンカチの上の花畑』

 何を隠そう、私は小学生の頃から本を読むのが大好きだった。小学校の教室には学級文庫と言って、図書館の本とは別枠で貸し出しが行われている本があった。私は毎日のように学級文庫から一冊、図書館から一冊と、合計二冊の本を借りては、家に帰って読みふけっていた。オリジナルのお話(今で言うショートショートのようなもの)を書き始めたのもこの頃だった。原稿用紙に鉛筆で書いたお話が、今でも私の手元に残っている。

 小学校の頃、一番熱心に読んでいたのは、モーリス・ルブラン原作のアルセーヌ・ルパンシリーズだった。確か、南洋一郎氏が翻訳された子供向けのハードカバーで、小学校の図書館にあったこのシリーズはすべて読み尽くしたはずだ。堀口大學氏もモーリス・ルブラン原作のアルセーヌ・ルパンシリーズを翻訳されていたのだが、私には、南洋一郎氏訳の子供向けの訳本が一番読み易かったのである。実は、大人になってから、古本屋さんでこのシリーズをせっせと集めたおかげで、我が家にはこのシリーズのほとんどの本が揃っている。

 ガンモもまた、小学生の頃に、学校の図書館にあったこのシリーズの本を読みふけっていたようだ。しかし、読んでもあとに残らないことがわかり、これ以降は読書をするのをやめてしまったそうだ。一方、本の面白さに取りつかれていた私は、小学校六年生のときに図書委員会の部長をつとめた。中学生になっても本好きは変わらないだろうと思っていたのだが、この頃になると、読むことよりも書くことに夢中になっている。課外活動として新聞部に入部したり、友人と演劇に夢中になり、自分で脚本を書いて、自作自演のテープを作成したりしていた。とにかく書くことが大好きで、文化祭でも自分の書いた小説やエッセイなどを展示していた。

 高校に入学してからは、一気に生活が変わった。一年生の頃から受験のことを考慮したクラス分けがなされ、受験ムードが漂う中で、大学受験には関係のない読書や創作からは次第に遠ざかってしまった。ただ、中学のときに目覚めた演劇をやりたくて、課外活動は演劇部に入った。更に、授業の中で行われる部活動として、文芸部に所属していた。しかし、それらの活動を行う時間も、二年、三年になると、次第に受験勉強の時間に塗り替えられて行った。

 高校生のとき、私は汽車通学をしていた。電車通学ではなく、汽車通学というのがミソである。今は合併して一つの市になっているが、当時は別々の市である隣の市に高校があったのだ。私は、汽車で片道二十五分ほどかけて通学していたのである。田舎なので、汽車は一時間に一回しか運行されていない。できる限り、その時間の汽車に間に合うように学校を出るのだが(汽車通学の生徒たちからは、四時の汽車とか五時の汽車とか呼ばれていた)、時には間に合わないこともあり、次の汽車の時間までおよそ一時間、街の中や学校近くの図書館で時間を潰すことが多かった。そうした場所で、どうしても手にとってしまうのが、受験勉強にふさわしい本ではなく、子供の頃に読んで面白かった本だったのである。前置きが長くなったが、今回から、「子供の頃に夢中になった本」という新しいカテゴリを追加してお送りしたい。

 一番最初にご紹介するのは、安房直子さんの『ハンカチの上の花畑』という作品である。安房直子さんと言えば、『ハンカチの上の花畑』よりも『きつねの窓』のほうが有名かもしれない。夢のある、とてもいい作品を書かれている作家さんである。『きつねの窓』は、教科書にも採用されているようなので、ご存知の方も多いのではないだろうか。

 『ハンカチの上の花畑』は、子供心をくすぐってくれるとても夢のある作品である。郵便屋の良夫さんが、酒屋のおばあさんからつぼを預かる。このつぼに向かって、「出ておいで 出ておいで 菊酒つくりの小人さん」と呼びかけると、つぼの中からおろされた小さなはしごをつたって小人の家族が降りて来て、ハンカチの上に菊の苗を植える。そして、ハンカチの上の花畑で育った菊をつぼの中に収穫し、収穫を終えた小人の家族が一人ずつつぼの中に帰ってしまうとおいしい菊酒が出来上がっているというとても不思議な物語だ。おばあさんからつぼを預かるとき、良夫さんは二つの約束をする。一つは、小人が菊酒を作っているところを誰にも見られていはいけないということ。もう一つは、出来上がった菊酒を人に売ってはいけないということ。果たして、良夫さんはおばあさんとの約束を守ることができるのだろうか。

 つぼの中から小人の家族が出て来てハンカチの上に菊の苗を植えて菊酒を作るという発想は、とても夢があって楽しい。これからの未来を背負って行く小さなお子さんたちに是非とも読んで欲しい作品の一つである。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 子供の頃に夢中になった本の中で最も心に残っているのが、この『ハンカチの上の花畑』です。子供の頃に読んで以来、ずっと心の中に残っています。もちろん、大人になってからも何度も読み返しました。アルセーヌ・ルパンシリーズも一生懸命読んでいたのですが、本を読んでいる最中は思い切り楽しむことができても、心の中に感動が残らず、すぐにストーリーを忘れてしまったのです。しかし、『ハンカチの上の花畑』は、子供の心の中に何かを残してくれる作品です。そして、何かが残ると、私のような空想好きな人間に育って行くのかもしれません。(笑)

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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