流行語大賞
先日、二〇〇六年の流行語大賞が決まったとインターネットのニュースで知った。
実は、ここだけの話だが、私はトップテン大賞に選ばれている「イナバウアー」を知らなかった。ただ、仕事でしばしば参照している技術系の掲示板に「イナバウアー」と名乗っている人がいて、妙なハンドルだなあと思いながら見ていたのである。私はガンモに、
「ねえねえ、今年の流行語大賞の『イナバウアー』って何?」
と尋ねてみた。するとガンモは、
「あのね、『イナバウアー』を知らないのは、多分、うちのマンションの中でまるみくらいだよ」
と答えた。何だそれ。「イナバウアー」? 「いないいないばあ」の仲間か?
私は何だろうと思いながら、インターネットで「イナバウアー」を検索した。困ったときのインターネット頼みである。そして、「イナバウアー」とは、もともとは一九五〇年代に活躍したドイツのスケート選手の名前であり、今年開催されたトリノオリンピックで日本の荒川静香選手が披露した技であることがわかった。実は、荒川静香選手の名前もこのとき初めて知った。普段からテレビを観ないことと、スポーツネタにはとことん疎いせいである。
トップテン大賞に選ばれているもう一つの流行語である「品格」も、日本語の意味は知っているものの、何故、この言葉が選ばれているのかわからなかった。ガンモに聞いてみると、こちらもスポーツネタだとか。
若い頃、流行音楽や流行歌手の名前を知らないおじさんに対し、知らないなんて信じられないと思っていたが、いつの間にか、私もそんなおじさんたちの仲間入りをしてしまったらしい。
不安になった私は、過去の新語・流行語大賞を一九八四年から年度別に追ってみた。その結果、一九八四年から二〇〇三年くらいまでは、受賞した単語を知っていることがわかった。時代が古くなれば古くなるほど、単に言葉だけでなく、受賞した人たちに何が起こっていたかについても思い出すことができた。しかし、二〇〇四年くらいからほとんどわからない。ということは、私がおばさんになったのは、二〇〇四年からということになる。おばさんになって、もう二年も経つというのに、おばさんの自覚がなかったのである。自分自身も立派なおばさんなのに、関西のおばちゃんに、「学生さん?」と言われて喜んでいたなんて。
過去の新語・流行語大賞に、「iモード」という言葉を見つけた。「iモード」なら正々堂々と知っていると言える。しかし、もしも私の周りに「iモード? 何、それ?」と言う人がいたら驚いてしまう。この人は、本当に同じ日本に住んでいたのだろうかと疑ってしまうことだろう。しかし、自分でも気づかないうちに、いつの間にか私もそういう人になってしまっていたのである。
一部の方のご指摘によれば、他の人には簡単に通じることが、私には通じないらしい。しかし、それはお互い様だとも思っている。もしも私に対してそのように感じる人がいるなら、私自身も相手に対して同じように感じているということである。共感の喜びに打ち震えるのもいいかもしれないが、魂として分け合った知識をいつか集結させることができるなら、それで満足なのではないだろうか。
過去に私は、職場でこんなギャグを同僚に聞かせたことがある。輪投げのターゲットのように、何十枚も重ねられたドーナツ型のCD-Rを収納する容器の蓋を取り、頭にかぶるような格好をして、
「チャーリーとチョコレート工場」
と言ったのだ。私はここで笑って欲しかったのだが、相手にはそれが通じなかった。何故なら、そのギャグは、映画『チャーリーとチョコレート工場』を観た人でなければわからないポーズだったからだ。私は、ドーナツ状のCD-Rを収納している容器の蓋を、ジョニー・デップが手にしていた山高帽に見立てたのである。どうも私は、清少納言の「くらげのななり」的な会話を望む傾向があるようだ。

私はさきほど、自分がおばさんになったと書いたが、例えおばさんであっても、「イナバウアー」を知っている人は多い。「イナバウアー」を知らないことがおばさんとイコールにはならない。「イナバウアー」を知らないことで、大多数の人たちには驚かれるかもしれないが、「イナバウアー」を知らない分、他のことを知っていたらいいのではないか。そんなことを思いながら、自分を慰めている私であった。
※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m ゆうべの記事に書いたガンモの風邪は、わずか一晩で治りました。ガンモの治癒力は素晴らしいです。それとも、私の応援が効いたのでしょうか。それにしても、流行語を知らないと、世の中から取り残されたような寂しい気持ちになってしまうことは間違いないようです。いつか、「ガンまる」で流行語大賞をいただきたいものですね。(笑)
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