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2006.11.06

やっぱり家(ウチ)がいい

 いろいろなイベントでてんこ盛りだった先週、実はもう一つ大きな出来事が起こっていた。それは、夜、残業中の私に、ガンモから一通のメールが届いたことから始まった。そのメールには、
できるだけ早く帰って来て欲しい。相談したいことがある
と書かれてあった。メールの文面からも、いつもユーモアたっぷりのガンモとは違う様子だった。ガンモからのメールに気がついて、すぐにガンモに電話を掛けてみると、ガンモは帰宅途中の電車の中だった。
「どうしたの?」
と尋ねる私に、ガンモは、
「早く帰って来てくれ」
とだけ言った。私は、何の話なのか、何となく予想はついていた。おそらく、ガンモに転勤の話が持ち上がったのだろう。先日、ある地方都市の事務所に二、三年という約束で転勤した人を関西地区に呼び戻すために、関西地区の事務所からその地方都市に向けて人を異動させる予定があるとガンモが言っていた。その地方都市に転勤する社員は既に決定しているとのことだったが、今度は転勤することになっている社員がこれまで担当していた仕事を引き継ぐ人員が必要になるらしい。その仕事は、特定の顧客に常駐する仕事だった。もしかすると、ガンモがその仕事を担当することになったのだろうか。しかし、それなら、これほど改まった様子で「相談したいことがある」などとメールを寄越したりはしないはずだ。

 仕事を終えて地下鉄に乗っている間、私は暗い気持ちになっていた。とにかく、早く家に帰ってガンモの話を聞こう。これは、私たちが結婚して以来の一大事かもしれない。しかし、三宮に着く頃になると、どういうわけか、私の中で、不安な気持ちが消え去っていた。ガンモはきっと、転勤することにはならない。そんな気がしたのだ。

 三宮に着いてガンモに再び電話を掛けてみると、ガンモはもう帰宅したようである。ガンモは私に対し、とにかく早く帰って来てくれの一点張りだった。ガンモに、
「ねえ、異動のことなんでしょ?」
と尋ねると、
「うん・・・・・・」
という答えが返って来た。

 私が帰宅すると、ガンモは寝室にこもっていた。見るからに、元気がない様子である。ガンモの話によれば、地方都市に転勤する社員は既に決まっていたのだが、その社員は勤務態度に少し問題があるということを、地方都市の事務所にいる部長が知っていたのだそうだ。その部長はガンモの元上司でもあるため、候補として、長いこと転勤せずにいるガンモの名前があがったらしい。そして、現在の部長に呼ばれ、その地方都市に行ってくれないかと打診されたと言うのだ。

 ガンモは、
「そこに行ったら、今よりも仕事は楽になるかもしれないけど、今までみたいに休みは取れなくなると思う。旅行にも行けない。もちろん、海外にも行けない。俺、嫌だ」
と言った。

 ガンモの年齢で地方都市への転勤を命じられるということは、二、三年の約束で関西に帰って来られるような転勤にはならないらしい。ということは、今の会社に残るなら、定年までその地方都市で働くということである。すなわち、今、住んでいる家も手放さなければならない。家のローンもまだ払い終わっていないというのに。もちろん、私も仕事を辞めなければならない。その地方都市では、私が今働いてるようなソフトウェアの開発の仕事はおそらくないだろう。ガンモの転勤により、私たちの生活は一変してしまうわけである。

 ガンモはかなり落ち込んでいた。今は部長から「行ってもらえないか?」という程度のお願いだったが、これが業務命令になってしまうと、もはや背くことはできなくなると言う。そして、その地方都市に行くのがどうしても嫌なら、会社を辞めることになるのだ。

 確かに、周りを見渡せば、ご主人さんの転勤で海外に移住されている方もいらっしゃる。または、ご主人さんだけが単身赴任されて、奥様は家を守っていらっしゃるケースもある。私はかつて、家を守ってらっしゃる奥様に対し、ご主人さんと一緒に引越しされれば良かったのにと言ったことがあるが、奥様は、ご自宅でお仕事をされていて、既に生活の基盤が現在の家にあったのだ。また、お子さんも二人いらっしゃるので、家族全員の環境を変えてしまうよりは、変化を最小限に食い止める意味で、ご主人さんが単身赴任されることを選択されたのだと思う。仕事を辞め、家を売り、引越しをし、生活の基盤を変えてしまうということは、それだけ大きな出来事なのだ。果たして、私たちにそれができるのだろうか。いや、できない。私たちは、環境が大きく変わることに対し、恐れがあることに加え、家を手放したくないという強い想いが湧き上がって来た。

 ガンモは、
「俺、今の家が一番いい。だから、もしも仕事を辞めることになっても、俺はここに居る」
と言った。私も同じ気持ちだった。自分が望まない転勤など、愛のない結婚と同じではないだろうか。そうは言うものの、ガンモが今の会社で培って来たものも大きい。例え、地方都市への転勤を命じられたとしても、その命令を受けたくないという理由で本当に会社を辞められるのだろうか。

 ガンモは、自分の会社が好きなのだ。もちろん、私もガンモの会社が好きだ。だから、普段、持ち歩いているノートパソコンもガンモの会社で製造されたものを使っている。しかし、だからと言って、いきなりの地方都市への転勤には、なかなか胸を張って「はい」と言えない。それは、私たちが二人とも田舎育ちだからかもしれない。私たちは、都会の生活に憧れて田舎に出て来たのだ。田舎育ちの私たちが、せっかく築き上げた都会暮らしの環境を捨てて、地方都市に移住することへの抵抗も大きいと思う。

 ガンモは翌日、部長と話をして、転勤の話を丁重にお断りしたそうだ。ガンモに期待を寄せていた部長は頭を悩ませていたらしいが、ひとまず、ガンモの気持ちは受け入れてもらえたらしい。ガンモと部長が再び面談した日、私は仕事中に家のことを思い、涙が出て来た。私はあの家が大好きだ。だから、あの家から動きたくない。しかし、これまで家に対し、それだけの愛情を注いで来たと胸を張って言えるだろうか。今回のことは、家が私たちに対し、自分への愛情を確かめてみたくなったために起こった出来事なのではないだろうか。

 ガンモの地方都市への転勤の話は、後日、部長会議に掛けられ、ガンモの直属の部長はガンモが転勤を望んでいないことを他の部長たちに伝え、他の部長たちが再びガンモを指名しないように取り計らってくれたと言う。何というありがたいことだ。ガンモの部長に深く感謝である。

 しかし、まだまだガンモの地方都市への転勤が完全になくなったわけではないと言う。他の人たちにも打診しながら、地方都市に転勤する人を決めて行く方針なのだそうだ。

※皆さん、いつもたくさんの応援クリックをありがとうございます。m(__)m 実際に転勤されて、見知らぬ土地で生活していらっしゃる方もたくさんいらっしゃるかと思います。中には、自ら望んだのではない転勤もあるかもしれませんね。転勤をチャンスだと思うことができれば思い切って動き易いのかもしれませんが、やはり、これまでの生活を大きく変えるようなことは、今はしたくないと思いました。まだまだこれからどうなるかわかりませんが、私たちは、家の中をぐちゃぐちゃにしながらも、この家で生活の基盤を整えていたのだと改めて思いました。失いそうになって初めて、こんなことに気づくなんて、まったくもって、かっこ悪い私たちです。(^^; これを機会に、もっと家に対してはっきりとした愛情を示すことができたら、と思っています。

さて、今回も記事の中にボタンを埋め込ませていただきますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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